ドワーフに殺されかけた
夜中になるのを待って俺はコリコラスに下北沢経由で飛んだ。ペルカの実家は狭いので集落に近い林の中にマーカーをセットしていた。無事着いたが、何しろ真っ暗だ。灯りを使わず月明りだけで道を探すのはつらいが、なんとか街道まででた。
「おい、そこにいるのは誰だ。」
暗い中を誰何される。ドワーフは暗闇でも見えるんだった。そこには3人のドワーフがいた。
「怪しい者ではありません。」
「お、人間ではないか?なぜ人間がこんな夜中にうろついてる?」
「ちょっと、知り合いに会いに行こうと思いまして。」
「知り合い?何という名前だ。」
「えーと、ビジェイと言います。」
ドワーフ達は顔を見合わせて笑い出した。
「大方どこかでその名前を聞いて口から出まかせを言ってるのだろ。やはり密偵だな。ここで成敗してやる。」
一人が斧を振り上げた。こりゃやばい。ふと見ると後ろの一人は雌だ。良かった!
魅了3だ。
「ちょっと待って、本当なら、ビジェイ様の知り合いを殺したことになるよ。この
まま連れて行って確認してから殺してもいいんじゃない。すぐそこだし。」
「そ、そうだな、一応そうするか。俺たちもビジェイ様に会いに行くんだからな。」
なんとか雌のドワーフの魅了に成功して命拾いだ。昔同じようなことがあったような。
後手で縛られて10分ほどで、ペルカ達の洞窟についた。その周りをどう見ても200人ほどが取り巻いている。
「おい、一番前まで連れってくれ。」
俺がいうと雌のドワーフが家の前まで連れて行ってくれた。廻りのドワーフたちはざわついている。
「ビジェイいるか?ショウだ。」
そうすると、扉が開き、ビジェイが顔を出した。
「ご主人様、どうしてここにいらっしゃるのですか?」
その言葉を聞いて、廻りのドワーフたちは凍り付いた。俺は雌のドワーフの魅了を解いて家に通された。
「ペルカが急いで帰ってきて、この状況を報告してくれた。そこで対策を決めたのでここに飛んできたんだ。」
「飛んできた、と言われましたか?確かに早すぎますが。」
俺はビジェイの質問を無視して、荘園の決定を伝えた。
「30人もの弟子をとっても良いということですか?」
「そうだ、迷宮の監視も担ってもらうからな。」
「それはありがたいお話ですが、荘園は大丈夫なのですか。」
「安心しろ、シュレンジュの提案だ。抜かりはない。」
「シュレンジュさんがそのような策を、ありがたいことです。」
「それにこんなに希望者が居たらそれくらい連れて行かないと収まらんだろう。明日と明後日で希望者全員の面接をする。」
夜中だったが、面接をすることを告げると家の周りを取り巻くドワーフたちは散って行った。それからの二日は地獄だった。面接時間は一人5分、鑑定4は一度にMP30消費するので、1時間に一本はMP回復薬が必要だ。まるでリムみたいに下痢になった。二日で200人以上面接して30人を選んだ。鍛冶2が一人、鍛冶が15人、鍛冶無しが14人だ。
「それじゃ、みんなの準備ができたら連れてきてくれ。受け入れ準備もひと月あれば住むとこはできるだろう。」
「色々とありがとうございました。お帰りはどのように?」
「そうだな、頼みがある。この洞窟のなかに二メートル四方のクロゼットを置いてくれないか。それを俺の飛ぶ場所にする。」
「はあ、早速手配いたします。」
ビジェイは訳が分からないが対応してくれる。弟子に合格した連中に伝えると、直ぐに持ってきてくれた。
「それじゃ、向こうで待ってるよ。」
呆然と見送るペルカファミリーを後に俺はクローゼットの中に消えた。ゲートの使える回数が減ったので、下北沢で二日ほど過ごしてカウントを回復して、荘園に戻った。
荘園に戻ると深夜だった。風呂に入ろうかと鍵付き部屋を出るとリムが隣の部屋で寝落ちしている。
「おーい、風邪ひくぞ。」
「おお、戻ったか?無事で何よりじゃ。」
「ありがとう。心配してくれて。」
「わらわだけではない、みんな心配しておるぞ。」
「リムに心配してもらえるのが一番うれしい。一緒に風呂入ろ。人型で。」
「人型か、ならば背中を洗ってやろう。」
こんな時間を大切にしたい。




