鍛冶3の波紋
もう一日町で過ごしたあと、俺もフォイヘスに乗って荘園に向かった。ちょうど荘園手前でケンタウロスたちの運搬車に追いついた。そこからは並走して村に入る。俺たちを見つけた村のオーク達が出てきて歓声をあげる。運搬車のオーク達も答えて歓声をあげる。うん、いい風景だ。
「皆の者、長旅ごくろうであった。わらわはレンドル公爵第一皇女である。これからは荘園の一員として、みな家族じゃ。皆で助け合って荘園を作っていこう。期待しておるぞ。
詳しい話は農業管理のミドリからじゃ。」
リムの演説にオーク達は歓声を上げた。まあ合格だな。後で頭を撫でてやろう。
「みなさん、長旅おつかれさまでした。私はショウ様の元で農業を担当するミドリと申します。これから歓迎の宴席を設けます。そのあとは、みなさんお疲れでしょうから、二日ほど小屋でゆっくり過ごしてください。その後具体的な仕事の割り振りをします。」
「ミドリ様、私どもは働くために参りました。二日の休みは長すぎます。」
年かさの雄オークが声を上げた。やるき満々だな。
「それはありがとうございます。しかしさきほどお姫様がおっしゃったように、皆さんは家族です。家族が疲れて働く姿をみたいですか?」
このミドリの言葉に多くの雌オークが涙を流した。ファインプレーだな。
80人ほどが一緒に食事を楽しんだ。リムはすこし遠くからこれを見ている。
「どんどん家族が増えてくるな。」
「そうじゃな、これもショウのおかげだ。」
リムは俺の肩に止まる。
「いや、リムの家族愛じゃないか。みんなをまとめてるのは。」
「そ、そうか、それなら良いのじゃが。」
俺は後ろからリムを抱きしめる。そんなよい雰囲気がぶち壊された。
「お姫様!ご主人様!」
泣きながらペルカが疾走するケンタウロスに乗って近づいてくる。
ペルカはケンタウロスの背中から転がり落ちるように降り、得意技の土下座攻撃を始めた。俺とリムは顔を見合わせた。またかよ!
騒ぎを聞きつけてエリーンとシュレンジュも駆け寄ってきた。
「おい、落ち着け。一体どうしたんだ。」
まさか、三兄弟が里で無礼を働いて、ドワーフたちが攻め込んでくるとか。
「すいません。すいません。」
「いや、それはもう良いから。何があった?」
「里で鍛冶3の特技について、三人で情報を集めていたんですが。」
そこまでは問題ないな。
「どこかで、ビジェイが伝説の鍛冶3であることがみんなにバレました。そのことが広まってしまい、次から次へと弟子入り希望者が殺到しています。家の周りを人が取り巻いてビジェイとスリニーは閉じ込められています。私は隙を見て逃げ出すのに成功したので戻って来ました。」
どうも、情報漏洩はお前が怪しいな。後で折檻だな。
「鍛冶3はそれほど珍しいのか?」
「今回調べて分かったんですが、70年ぶりらしいです。」
人間国宝クラス以上だな。
「それで弟子志願者はどれくらいいるんだ?」
「百人はいると思います。それ以上は勘定できません。」
「このままでは、ビジェイとスリニーはいつまでも帰ってこれそうにありませんね。数人弟子を選んで、他の人を納得させますか。」
エリーンがまっとうなことを言う。
「あの、ちょっと良いでしょうか。」
あ、これはシュレンジュが良いこと言うパターンや。
「今回エリーンさん一家が来て、物流が大幅に改善しました。迷宮に関するふたつの使命のうち、いままでは監視機能は十分ではありませんでした。」
なるほど、たしかにそうだな。
「これは輸送力がなくて、監視拠点の資材が送れなかったこともあります。今はこの問題は解消されています。しかしたとえ拠点ができても、遠征の時はほとんど戦闘力のある人は地上に残りません。これでは満足な監視はできません。」
おー、そういうことか話がやっと見えてきた。シュレンジュ凄いぞ。
「山の民で鍛冶を目指す人は最低レベル30だと思います。そんな人がたくさん監視所で生活していたら、監視機能も万全ではないでしょうか。」
「おお、そういうことか!監視所の場所に鍛冶場も設けるということだな。」
リムも気づいて興奮している。
「監視所のそばは鉄も採掘できますからそれは良いですね。」
ペルカお前は反省しとけ。
「シュレンジュ凄いぞ。それで何人くらいいける?」
俺は数字を見てないのでここは頼りっきりだ。だめな夫の典型や。
「そうですね。防具や武具の販路をみつければ30人くらいは大丈夫じゃないでしょうか?弟子なら食事と寝るところだけで大丈夫でしょうから。」
こんなブラックなところも俺好みや。
「それじゃ、大きな鍛冶村を監視所のところに設けるということで、良いかな。武具の販路は来週、俺がロンドビーと話をしてくるよ。」
「そ、そうじゃな、ショウの言う通りじゃ。それで計画を見直そう。」
「俺はちょっとコリコラスに飛ぶから、ペルカは鍛冶村の段取りをこっちで進めてくれ。」
「ご主人様、飛ぶとは?」
一同俺の発言に首をかしげる。
「ああ、俺は一度いったところには瞬間に移動できる。これは誰かに見られたら二度と使えないし、場合によって俺は死ぬ。なので緊急の時しか使えないが、今がその時だ」
「そ、そんなスキルがあるのか!」
リムが叫んでいる。
「いや、スキルじゃないんだ。毒無効と一緒で俺だけの技だな。」
みんなが引くが、これを言っとけば俺のゲート移動をのぞき見しようという輩はいなくなるだろ。
「そ、そうなんじゃな、しかしわざわざショウが行く必要があるのか?」
「俺の鑑定では、その人の伸びる方向も見極めることができるんだ。どうせ弟子にするなら、鍛冶に伸びしろがあるほうが良いだろ。」
みんな呆れてみんな無言だ。言い過ぎたかな。




