オークの移住者
地上に戻った後、俺はフォイヘスの背中に乗せてもらい、迷宮から荘園まで加速で戻った。まるでスポーツカーにでも乗ってる感じだ。20分で着いた。これは使える。
「フォイヘス、結構疲れるのか?」
「いえ、早いので足元には気を使いますが、体は普通に速足の感じなので問題ありません。」
翌日フォイヘスに乗ってロンドビーを迎えるために町に向かった。半日で着いた。
「ご主人様、ようこそお越しになりました。」
メイガリアン改めハルカが町の屋敷で俺たちを迎えてくれた。
「ハルカ、これがエリーンの兄のフォイヘスだ。ハルカは町で商売を差配している。これから一緒に仕事をすることも多いと思うので、なかよくやってくれ。」
「エリーンさんのご家族も荘園に行かれたのですね。それは何よりです。」
「まだ、新参者なので色々教えて下さい。」
「何かあったら、フォイヘスに飛び乗って逃げてこい。誰も追いつけないぞ。」
「それはすごいですね。」
「あ、ご主人様。」
話声を聞きつけて、ファロメイリンが起きてきた。
「おう、ファロメイリン。寝てるところ起こしてしまったな。毎日夜中の仕事すまんな。」
「いえ、昼間は町を歩いたりして、楽しませてもらっています。」
「それは何よりだ。俺もロンドビー殿が来るまでここで待つから宜しく頼む。」
フォイヘスは袋に入れてきた懐中電灯や電池をハルカに渡している。もう金欠は心配しなくて良い。
「今回は数日こちらに滞在されるのですね?」
ハルカの目がハートになってる。町にいて一人で頑張ってるからな、しっかり話を聞いてやろう。それだけでは済まないが。
「荘園の疫病はどんな状況だ?」
「まだ完全に収束したわけではないようです。同族の雄がかかりやすいので、なかなか対応もスピードが出ないようです。」
「同族?」
横で話を聞いていたフォイヘスが思わず声を上げる。
「ああ、ハルカは実は畑の民なんだが、今は人間の姿になっている。内密にな。」
「わ、わかりました。決して漏らしません。」
フォイヘスは目をぱちくりしてる。そうなるわな。
「それと、少し気になる噂もあります。」
ハルカが続ける。
「どんな話だ。」
「他の公爵領でも疫病が発生しているようなのです。穀物を扱う商人が他の公爵領に買い付けにいったところ、こっちでも穀物が不足しており、売れないと言われたそうです。」
「それも不思議な話だな。この疫病は接触感染なんだろう。」
「そうなんです。もし本当なら自然に発生したとは考えにくいです。」
「そうだな。引き続き気をつけといてくれ。」
夕方にはフォイヘスの顔見世をかねて、ハルカの息子たちも参加して夕食をとった。
「畑の民の皆さんは色んな特技を見に付けてるんですね。凄いです。」
ハルカ、メイガヘリス、ファロメイリンたちの話を聞いてフォイヘスが目を輝かせている。
「フォイヘスさんも私たち以上に凄いスキルや特技をまだまだ授かりますよ。」
ハルカがうまいことフォローする。実際そうなるんだが。
翌日の深夜、フォイヘスが町の屋敷に戻ってきた。俺とハルカはフォイヘスの背中に乗って港に向かった。
「ロンドビー船長、ようこそ。いつもお世話になります。」
「ショウ様、わざわざお出迎えいただき恐縮です。港の安全が確認できたので、いま小舟に分乗してこっちに向かっております。」
「そちらの小屋で野菜スープや干し肉をたくさん用意していますので、船員にも交代でどうでしょう。」
「それは助かります。今回は人が多いので、穀物ばかりの食事でしたから。」
2隻の小舟が2往復して、60人のオークが上陸した。
「みんな、ようこそジェローリア島へ。ここには未開の土地がたくさんある。皆の手で切り開いていこう。まずはそこに野菜スープと干し肉があるので思う存分食べてくれ。」
オーク達はあまり騒ぐなと言われているので、小声で歓声をあげ、料理に群がった。みんなが笑顔で食べているので少し安心した。最初が大事だからな。
エリーンの家族が来てケンタウロスの数が増えたので、移送の手順を変えていた。すでに昨日から南端倉庫に5人のケンタウロスが待機している。オークや船員が食事をしているうちにフォイヘスは倉庫南端まで加速して、5人のケンタウロスを率いて戻る段取りだ。食事が終わって片付けたころにはケンタウロスたちが港に到着した。ケンタウロスたちは港の廃屋に隠してあった運搬車を繋いで60人のオークを乗せて荘園へと向かった。
「今回も素晴らしい手際ですな。感服しました。」
「おかげですこしずつ荘園の力も大きくなっております。」
「この前、シェイトン島に来られると言われてましたが、7日後に船にお越しいただければご案内できます。」
「それはありがたいです。その際に今回のお支払いを致します。金塊でよろしいでしょうか?」
「はい、それでお願いします。できましたら少し小さめに切っていただけるとありがたいです。」
「そういたします。島に上陸するにはなにか必要でしょうか?」
「いえ、商売の島ですから、誰でも上陸できます。」
「それはうらやましいですな。」
「商売は情報がすべてですから、いろんなものを受け入れるのでしょう。まあ情報もピンキリですが。」
船長だけでなく船員たちも食事に感謝して、カティーサ号に戻って行った。




