凄いバグを見つけた
山小屋エリアに戻って俺は自分の小屋の風呂に浸かった。この時が一番の極楽だ。今日は誰にも邪魔させないぞ。風呂は屋根が無いので空からリムが襲来する恐れがあるが、今日は来ないな。リムもさすがに疲れたんだろう、それに下痢だしな。45階層は攻略したが、また色々なスキルや特技を得て、それを使いこなさないと先は難しい。なので次の遠征までは時間がかかりそうだ。その間にこの荘園の充実を図らないといけない。人手と輸送力は増強できた。次はなんだろうか。確かシュレンジュが放牧がなんとか言ってたな。これだけ土地があったら放牧も良いかもな。それと向こう側での生活もどうするかちゃんと考えないといけないな。俺はこっち中心にしたいが、両方でバランス良く時間を過ごすならむこうもある程度はなんとかせんとな。そんなことを考えているうちに俺は風呂の中で寝落ちしていた。
3時間ほどして俺は風呂の中で気づいた。幸い溺れることはなかったようだ。湯は冷めていたが、気温が高いので問題ない。まだ真夜中だな。少し清里に戻って色々することにした。ペルカに金塊を一キロに切ってもらったのを三つ持って戻った。清里は早朝だ。こっちは寒い。すぐにストーブを二つ点けるが、なかなか温まらない。おれは台所の保管庫に隠してあった、金塊と宝石の原石を取り出して、眺めた。なにせ貯金が尽きた。むこうに懐中電灯を持っていくにも、もうネットで買えない。俺はペルカに切ってもらった1キロの金塊を売りに行くことにした。ちょっと怖いけど。朝ごはんに野菜を切っているときに違和感を感じた。視界の端に白い点がある。最初は目にゴミでもついてるのかと思い何度か瞬いたが、白い点はとれない。白内障かな。早すぎるやろ。その点に指を置くと、とんでもないことが起こった。
{魅了対象を指定してください}
見慣れたガイダンスが現れた。なんじゃこれは!
俺は少しの間呆然としていたが、冷静になろうと息を整えた。よく見るとガイダンスの横には魅了、魅了2、魅了3、のタブもある。むこうでは当たり前のことだが、こっちでこんなことがあって良いはずがない。そもそもこの世界では魔法なんて使えるはずないだろ!しかし俺の体の再生でやらかした、あのいい加減な宇宙人のことだから、いろいろすることに抜けがありそうでもある。ソシャゲでも運営のチョンボで一部のユーザーだけが得して大騒ぎになることは恒例だしな。まあ、その時はだいたい得した物は回収されるんだが。
清里では多くの人は夏だけ別荘を利用するが、一部の金持ち老人はレンガつくりの立派な別荘で冬も過ごす。窓の外ではそんな品の良い老婆が朝の犬の散歩をしている。何事も確認だ。俺はその老婆に魅了3を使った。一見なにも起こらない。俺はマフラーを投げろと念じた。そうすると老婆は首に巻いている高級そうなマフラーを取って、道に投げた。犬が異常に気付いて吠えている。マフラーを犬に巻け、と念じると老婆はその通りの行動をとった。これはやばい。俺は魅了3を終了した。そうすると老婆は首をかしげて、犬からマフラーを取って再び身に着けて、何事もなかったかのように散歩を続けた。
だいたいソシャゲのバグは他のユーザーが騒ぐから1日で対策されるが、この場合は他のユーザーというのがいない。もしかしたらずっと放置されるかもしれない。見つかった時のペナルティも怖いので、使うのは限定的だ、命で返せとか言われても困るしな。もともと向こうの世界で夜は大変なので、こっちで彼女を作ったりするつもりはないしな。こっちは平穏であればそれでいいのだ。そのあと韮崎の買い取り店にいって、1キロの金塊を売った。本人確認だけで、900万ほどになった。これで一息つける。900万を握りしめて別荘に戻った。その後、インドのオフショアで付き合いのあるインド人に連絡してどこに行けば宝石の売買ができるかと聞いたところジャープールらしい。ネットでジャープール行きの飛行機と宿を予約する。気が大きくなってビジネスクラスで予約する。手が震えるな。4日後ジャイプールでも超一流のホテルにチェックインした。インドの超一流ホテルはほんとに建物や部屋が凄い。ミネラルウォータのボトルが何本もあるのも嬉しい。庶民の感覚だが。そこで落ち着いた後、ゲートを使って清里から宝石をいくつか持ってきた。その後ネットでこちらの宝石卸で女性がトップの店を探す。あった、シバ商会。翌日シバ商会を訪れ、女性店員に社長に会いたいと言った。魅了3を使ったのだが。すこしすったもんだしたが、俺は奥の応接に通された。インド人の抑揚のない英語は聞き取りにくいがオフショアで少しは慣れているので何とかなるだろう。少しして白髪の女性が現れた。50歳くらいか。
俺は挨拶したのちに宝石の原石を売りたいと切り出し、机にルビーをひとつ置いた。10グラム、50カラットだ。女社長はそれを手に取って見つめた。
「失礼ですが、これはどうやって手にいれたのですか?」
「それはちょっと言えない。俺のところにはこんな原石がたくさんある。継続して取引をしたい。」
「継続してですか?」
「このような石がたくさんある。とりあえず月5個くらいで。」
俺は残りの石もテーブルに出した。女社長はその石も確認した。
「どれも素晴らしい石ですね。残念ながら出所のわからない石を高値で買うことはできません。」
「高値で買ってくれなくとも良い。原石の価値の30%はそっちに渡す。」
「30%ですか?それなら色々手の打ちようがあります。」
「俺の条件はいくかある。まずこの町の安全なところに俺用の高級マンションを用意して欲しい。それと毎月現金で五百万円を日本円で用意して欲しい。残りの取り分は日本に会社を作るのでそこに安値で鑑定書付きの宝石を卸して欲しい。」
女社長は少し考えこんだ。
「わかりました。その条件で結構です。」
そこで俺は魅了3を使った。
「この石の価格はどれくらいだ?」
「5個で2億から3億です。」
「お前は誠実にこの取引をしようと思っているのか?」
「こんな条件なら、否定する人はいないでしょう。」
俺は魅了3を終了した。
「それでは今回の現金をお願いしたい。」
「日本円は準備に時間がかかるので今回だけは米ドルでも良いですか?」
「それで結構。」
「それでは明日お越しください。マンションもすぐに用意します。」
敢えて契約書は残さなかった。なんかあったら魅了があるしな。
翌日俺は3万ドルを受け取って、それを清里に運んだ後、準備された高級マンションのトイレにマーカーをセットして、飛行機で日本に帰った。次回からは飛行機使わないけどな。




