エリーン家族を呼ぶ
43階層、44階層を半日かけて進んだ。何度かファイアーリザードとサソリに囲まれたが、危機に陥ることなく撃破できた。
「それではここ野営をして、そのあと45階層に降りましょう。エリーンさん、45階層はお願いします。」
サイクスは最後のリーダーをエリーンに託した。
「ありがとうございます。おかげでかなり復活しました。」
エリーンの顔色は良くなっている。サイクスのおかげだ。
「わらわとエリーンが中衛にいるのは良いかもしれんのう。回復も前後に使えるし、闇魔法は射程が長いからな。」
さっき、俺に当たって死にかけたけどな。
45階層ではいつものとおり、坂を降りたところで陣を敷く。ファイアーリザード対策で4列隊形だ。3時間ほど襲来する魔物を倒し続けて、全員がレベル45に達した。
エリーン スキル 回復2
ペルカ スキル ハイスラッシュ
ビジェイ 特技 鍛冶3
ファロメイリン スキル 加速
サフィアス スキル 感知2
ショウ スキル 魅了3
今回も半分ほどがあらたな力を手に入れた。
「エリーン、おめでとう。回復2はどんなスキルなの?」
「全体回復魔法のようです。」
「それは凄いですね。中層以下ではみんながダメを受けますから、一気に回復できますね。」
サイクスが祝福する。
「これもサイクスさんのおかげです。」
エリーンは礼を言い、頭を下げる。物理的には、かなり上からだけどな。
「あ、あ、あ。」
サフィアスが目を剥いている。
「どうした?」
「感知2、迷路も見える。」
「えっ!」
みんなが同時に叫んだ。
「それは、前にある迷路が見えるということ?」
サフィアスが頷くと、サイクスが涙ぐみながら俺の手を取った。
「ショウ様、私は父の言うことを100%信じることができるようになりました。ありがとうございます。」
俺がなんかやったわけじゃないけどね。
「ビジェイの鍛冶3も凄そうだな。」
「説明では更に高度の鍛冶ができる、としかないので、一度里に帰って古老に聞いてみます。」
ビジェイは戦闘向きではないので、今回の遠征でも苦労して、何度か死にかけたがその甲斐があったな。
「ポポゼウルさんの図書館でも鍛冶3の話があった。あまり具体的じゃなかったけど、偉業に必要だと書いてあった。」
モウルもちゃんと覚えてるんだな。見直したわ。
俺はいつものように戦闘には関係ないスキルだ。
{魅了3 ユニークスキル 異性の知的生物を意のままに操る。スキル終了はその間の記憶が失われる。}
なんか凄くやばい感じだ。コンプライアンス的にどうなんだろう。
その後、丸一日かかって30階層まで戻った。今回も多くの魔石が手に入った。緑の魔石もいくつかあった。使い方が良くわからないが。それをサイクスに折半で渡した。
「ショウ様、すばらしい遠征でした。娘たちもあなた様の元で戦えることを誇りに思っています。私も及ばずながら、またお手伝いさせてください。」
「今回は本当にお世話になりました。戦い方だけでなく、心の持ち方も勉強させていただきました。ぜひ、また遠征に参加して下さい。」
サイクスたちはゲートを通って帰途についた。我々もゲートの小屋で宿泊して翌日には地上に戻った。
地上ではシュレンジュたちが遠征隊の戻りを待っていた。全員が無事に戻り、新たな力を
手に入れたことをみんなで喜んだ。
「ご主人様、今回も無事で何よりです。お疲れのところすいませんが、来週にはロンドビー様の船が着くかもしれません。」
「おう、そうだな。今回ファロメイリンが加速を手に入れたので、MP回復薬持たせて、町に送ってくれ。まずメイガリアンに言って、食料を港の廃屋に運ばせるんだ。昼はメイガリアンのところで寝て、夜は港で小舟が来ないか見張らせてくれ。小舟が来たら一度盆地南端の倉庫まで加速で戻って花火を上げるんだ。俺たちはそれを見たら草原の民たちを出発させる。花火を上げ終わったらファロメイリンは港に戻って畑の民を連れて盆地南端に向けて出発してほしい。途中で草原の民がみんなを拾うから。」
「わかりました。草原の民が足りますでしょうか?エリーンさんを入れても4人ですが。」
「たしかにそうだな、60人だからなんとか詰め込んで欲しい。」
「はい、運搬車は事前に南端倉庫まで運んでおきます。」
「おう、よろしく頼む。」
シュレンジュは先を読んでくれるので、助かる。横で話を聞いていたエリーンが口を開いた。
「ショウさん、これから農地が分散すると運搬力がもっと必要になります。いまは青い渓谷から3、4人来てもらっていますが、これでは賄えないかもしれません。」
「そうなんだよな。草原の民も増やさないといけないよな。」
「それについて相談があるのですが。」
「おう、聞こう。」
「前にお話ししたように両親は公爵家で働いているのですが、5人の兄弟のうち4人は職がなくて、日雇いのような仕事をしています。両親と共にいるのでなんとか食べていますが、将来に不安があります。もしこちらの荘園で雇ってもらえれば、と思います。」
「そうは良い話ですね。エリーン様のご家族だと安心ですし、いっそ全員で来ていただいたらどうでしょうか?」
財布を握っている、シュレンジュが即座に反応する。俺には付け加える言葉もない。
「お、おう、シュレンジュの言うとおりだな。一つ聞きたいんだが、兄弟は全員腹違いなのか?」
「いえ、一人だけは実の兄です。どうしてですか。」
男なんだな、それは良かった。
「いや、それじゃ、直ぐにでも話をしに行ってくれ。」
「ありがとうございます。」
エリーンもリムに言わずに俺たちに相談するところは良く考えてる。グッジョブだ。
「シュレンジュ、ところでひとつ聞きたいんだが。」
「はい、何でしょう?」
「畑の民は字が読めないのか?」
「そうですね、ほとんどの者が一生畑で働くので、必要ありませんから。私とメイガリアンは特技と共に字が読めるようになりました。」
そんな便利な特技なのか!
「どの文字が読めるんだ。」
「空の民の文字ですね。世界にはいくつかの文字がありますが、この島ではほぼそれです。」
「提案なんだが、移住者を含めて、畑の民の子供に文字を教えてはどうかな。」
「それは、大変ありがたいお話ですが、我々は子供も働きます。文字を教えると労働力が減りますが。」
「子供は働かない前提で作業の計画をすれば良いんじゃないか。」
「それはそうですが、穀物生産が更に遅れます。」
「穀物は当面ロンドビーから買えばよい。まだまだ金塊はある。」
「まあ、ご主人様、それほど私たちのことを考えていただき、言葉もありません。」
シュレンジュが泣きはじめた。そこにとおりかかったリムに、俺がシュレンジュを泣かした、と責められたが、俺は悪くないぞ。




