45階層攻略3
リム組が4時間、サイクス組が2時間休息して、42階層に降りた。危機は直ぐ来た。
「前から2組、後ろから1組、ファイアーリザードがきます。」
「全員、バックしてその先の横道に入って!」
サフィアスの警報を受けてエリーンが指示を出す。
「後ろのファイアーリザードに接触するけど大丈夫?」
サイクスが聞いてくる。
「一撃受けるのは覚悟で横道に入って下さい。そこだとT字なので、向こうの射線が通りません。HP高い人はT字の真ん中に残って。」
なるほど、T字の中心にHPが高いケンタウロスやドワーフを集めれば、後ろは攻撃をうけない。真ん中の連中は大変だけどな。
「あ、これは良い作戦ね。」
サイクスもエリーンの作戦に気づいて褒める。ケンタウロスやドワーフは結構ダメを受けたが、HPが危険レベルまで減ることはなく三体のファイアーリザードを殲滅した。
「エリーン、素晴らしい作戦だ。」
俺もエリーンに声をかけた。エリーンは笑顔で頷いた。少しは肩の力が抜けたかな。
T字路でHP回復薬を使ったり、エリーンに回復魔法をかけてもらったりして、一同は態勢を整えた。ファロリアスも複数ファイアーリザードの時は光魔法を使うので、MP回復薬を飲んでいる。俺たちのところにサイクスが近づいてくる。
「メレンタス、もう気づいてると思いますが、ここの魔物はトロンビアの迷宮と比べて、」
「はい、おそらく10階層分くらい難易度が高いようです。」
えぇ、そうなんか!
「そ、それだと、45階層は厳しいのか?」
「いえ、私たちは60階層直前までいっておりますし、皆さんも一戦するごとに戦いが上手になっています。それになんといってもエリーンさんの指示は的確です。まだまだいけます。」
サイクスの笑顔が俺たちの不安を吹き飛ばしてくれた。
何度かファイアーリザードに囲まれたが、T字路作戦で切り抜けて、43階層への降り口まで到着した。7時間かかった、長かった。
「みなさん、今日はここで野営しましょう。」
エリーンの言葉に一同は食事の準備を始めた。
「おい、エリーン大丈夫か?」
俺やエルフ、ケンタウロスは、ドワーフや妖精、ノームと比べると迷宮での耐性は高くない。指示を出しているエリーンは俺なんかよりずっと疲労がたまっているはずだ。
「ショウさん、大丈夫です。」
「エリーンさん、リーダーと回復役とお姫様のガードをひとりでするのは簡単ではありませんよ。みんなで役割分担しなければ、どこかで破綻します。」
サイクスがエリーンの背中を撫でながら言う。
「サイクス殿、貴殿のお考えをご教授いただきたい。」
リムもエリーンの疲労に気づいて心配している。
「ご存知のように我々霧の民は迷宮でもあまり消耗しません。サフィアスも経験を積んでパテの動かし方を学んできたでしょう。少しの間、エリーンさんには後ろに下がってもらい、私がサフィアスの感知を聞きながら、サフィアスを指導しましょうか?」
エリーンは何かを言おうとしたが、俺はエリーンの尻尾を掴んだ。リムもエリーンの背中に手を当てた。
「わかりました。それでは宜しくお願いします。」
エリーンは俯いて答えた。この答えは彼女にはつらかっただろうが、よく聞き分けてくれた。サフィアスの言葉は分かりにくいので、サイクスがトランシーバーを付けてパテ全体に指示を出すことになった。二人は別のケンタウロスの背に乗ってパテの先頭にでた。エリーンはリムを乗せて中衛の位置にさがった。リムの闇魔法は射程が長いし、発射速度もあるので、むしろこの場所が良さそうだ。
10時間ほど過ごした後、俺たちは43階層に進んだ。
「38階層でもイレギュラーが出たのですよね。」
サイクスは態勢が整うと聞いてきた。
「41階層以降の魔物と言われる虎がでました。」
「それなら、ここも注意ですね。サフィアスが赤の魔物を感知したら全力で魔法で先制しましょう。メレンタスは火魔法で防壁を張って。」
虎やファイアーリザードが何回か出た後で、サフィアスが叫んだ。
「赤、来た。」
サフィアスが即座にファイアーウォールを放ち、魔法職は前に出てきた。ドワーフたちは密集隊形をとる。火炎の向こうに魔物の影が見える。サソリだ。
「サソリですね。魔法を95%カットします。魔法を撃ち続けて下さい。物理ダメは少ないですが、しっぽの毒が強力です。1分で200ほどの継続ダメを受けます。」
炎がおさまり、闇魔法や、氷魔法が次々とヒットするが3000ほどのHPはあまり削れない。前衛のドワーフもじりじり後退して、尻尾攻撃に備えるが、尻尾が長く、スリニーにヒットする。ダメは50くらいだが、そのあとHPが減り続ける。
「スリニーさん、解毒薬を早く!ショウさん、前に出てタゲとってください。」
俺はサイクスに言われる前にダッシュしていた。大きな尻尾が俺にヒットするが、ダメは25くらいだ。問題ない。その間にも連続で魔法がサソリにヒットする。頼むから、俺に当てないでね。俺がサソリの尻尾で五回刺されたときに、ようやくサソリは爆砕した。
「サソリの尻尾は動きが読みにくいので、横にまわって攻撃するのも危険ですね。」
サイクスが腕を組む。
「主様を投げれば良い。」
サフィアスが恐ろしいことを言う。
「それしかないですね。」
この姉妹は怖いわ。
「そのときは私も前にでる。」
モウルが軽く言う。
「加速すれば、サソリの尻尾も余裕でかわせる。」
なるほど、早く言えよ。
サソリとファイアーリザードは移動が速いので、サフィアスが探知してから早いときは数分で接触することがある。それに比べると虎とクラゲは止まってるようなスピードなので、タイミングをずらすのは難しくない。なので囲まれるのはサソリとファイアーリザードばかりだ。またファイアーリザード2体をT字に誘い込んで戦い始めたところに、脇道の奥からサソリが近づいてきた。あっという間だ。
「後ろからサソリきます!」
俺とモウルは後ろに向かう。サフィアスも状態異常耐性があるので接近戦に参戦する。俺が尻尾に刺されまくっている間に、モウルが踊るようにサソリを切り刻む。サフィアスも着実にダメを与える。リムも闇魔法を連発して何とか倒した。
「これだと、サソリも問題ないのう。」
リムはそう言うが、俺は結構痛いぞ。




