ノームの里へ行く
そんな日々を過ごしていると、ケンタウロスのドロンが俺の小屋にきた。おまえ出入り禁止と違うんか!
「ショウ様、おはようございます。ますますご活躍のようですね。」
エリーンはやらんぞ。しかしおとなの対応をしないと。
「おう、ドロン殿か、そちらもお元気そうでなにより。どうかしましたか?」
「じつは長老のポポゼウルからの伝言を預かって来ました。」
「どういうお話でしょうか?」
「防具の準備には時間もかかるでしょうから、お時間があれば、いちどこちらにお越しいただけないかとの、お願いです。」
ポポゼウルにはMP2を一万本ももらってるし無下にはできないな。
「そうでしたか、俺もあまり知られていないそちらの島には興味があります。仲間と相談してお返事いたします。」
俺もおとなの対応ができるな。
「それはありがとうございます。そのように長老にはお伝え致します。」
この申し出について早速話をした。
「どういう意図なのかのう。」
リムが心配そうに呟いた。
「これからの迷宮探索に向けて、一族の情報をお伝えしたいのではないかと思います。代々の長老だけに伝わる情報もありますし。」
メレンタスがフォローする。
「それなら私と霧の民のふたりは行かないといけませんね。」
エリーンが言った。おまえはドロンに会いたいんか!
「私も興味ある。行きたい。」
モウルがため口で続く。
「わらわも当然行かねば。」
「それはどうでしょうか。」
エリーンが異議を唱える。
「領主が安全も確認されていない他国に行くというのは。」
「そうです。お姫様は軽々しく他国に行かれては困ります。」
シュレンジュがエリーンの援護射撃をする。リムは涙目になって俺を見るが。
「そうだな、お姫様の思いも分かるがここは慎重に行くべきだろう。」
俺は重々しく言った。実はメレンタスが色々話してリムの耳に入るのが怖いだけなのだが。
リムはふくれっ面で飛び去ったので、それで結論となった。
四日後俺たちは迷宮に入りノームの島トロンビアを目指した。
運搬車にはポポゼウルへの土産を積んで30階層へ向かう。俺たち五人にノームの使用人のドワーフ4人でパテを組んでいる。ゲートまで順調に一日で到着した。そこでゲート前にメレンタスが立ち、行き先を入力する、モロード迷宮。そこでドワーフたちと別れ五人でゲートに入る。ゲートにはいるのはいつも緊張する。
ゲートをでると向こうの入国管理があるが、そこにはポポゼウルが立っていた。
「ようこそお越し下さいました。ショウ様、皆さま。」
「これは長老自らお出迎えいただき恐縮します。」
「ここの入国管理は厳しいので、使用人登録が無いと時間がかかります。儂がおりますとそこは柔軟にできますので。」
長老、権力者なんだな。腰低いけど。その後、入国管理も税関もほぼノーチェックで入国できた。事前に連絡がいってたのか、向こうでもドワーフ4人と長老をパテに加えて、更に護衛のパテを従え、一日でモロードの迷宮を駆け上がった。迷宮をでると、既に日は暮れていた。
「こちらは寒いですね。」
「コリコラスより更に北ですので、朝夕は寒いです。」
夜なので見通しは悪いが迷宮の出口を遠巻きに建物が取り囲んでいる。
「この迷宮はいくつもの部族がつかうので、それぞれ部族の宿舎が迷宮の入り口を取り囲むように建っているのです。こちらにどうぞ。」
ポポゼウルは俺たちを取り巻いている建物の中でもひときわ大きいところに導いた。幅50メートルはあるな。4階建てで豪華だし。
「今日はもう遅いので、こちらの部屋でお休みください。」
俺たちは大浴場で温まり、そのまま二階の個室に案内された。
翌朝朝食の後に、ポポゼウルの執務室に俺たちは招かれた。朝食はやはり質素だった。
「昨日素晴らしい風呂にいれていただき、部屋もすばらしかったです。ありがとうございます。」
「いえいえ、我らは食事が質素なので、あまりおもてなしもできず恐縮です。」
「明るくなって、部屋から見ると、この町は迷宮を取り巻くように作られてるのですね。」
「迷宮のまわりを三重に取り巻いております。内側が大きな部族の宿舎、真ん中が、小さな部族の宿舎、外側が、色々な店です。万一、迷宮のスタンピードが起こった場合はそれぞれの宿舎にそれなりの戦力がいるので、協力して対応することになっております。」
「こちらの建物が一番立派なようですね。」
「この迷宮には、五十以上の部族が定期的にパテを派遣していますが、その中で青い渓谷は最大の部族なので、そうなっております。」
「おじいさまは、この迷宮の世話役の一人です。」
メレンタスが補足した。
「世話役ですか?」
「ああ、前も申したとおり霧の民には貴族はおりません。各部族がゆるい連帯をして生活しております。迷宮の運営についても部族間の選挙で世話役を五人選び、その五人の合議で決めております。」
結構民主的なんだな。
「申し遅れましたが、これらを土産に持ってまいりました。この前大量の薬をいただき、その内祝いとお考え下さい。」
内祝いで通じるのかな。
「おお、それはありがたい。拝見してもよろしいですかな。」
ポポゼウルはたちあがり、テーブルの上の品を手に取った。
「これは、すばらしい防具ですな。」
「鎧は物理、魔法とも+6、盾は+3,兜も+3です。」
「えっ、この前お目にかかった時はこのような業物はお持ちではありませんでしたな?」
「はい、あの時のご助言に基づき、製作を始めました。遠からず全員の防具を魔法も物理も+9まで揃えたいと思っております。」
それを聞いてポポゼウルは目を見張った。
「全員と言われましたか?」
「はい、来月までには揃えたいと考えております。」
「莫大な費用がかかります。本当にショウ様は底が見えませんな。」
「これもポポゼウル殿に貴重なアドバイスをいただいているからです。感謝しております。」
ポポゼウルはひとしきり防具を見た後、横にあるヘッドセット型の懐中電灯を手に取った。
「これは何に使うものでしょうか?」
「このように兜に付けて使います。」
俺が頭にセットしてスイッチを入れると、灯りが廻りを照らす。朝だから見えにくいが。
「これを使うと松明が要らないということでしょうか?我々はある程度暗闇でも見えますが、これも凄いものですな。」
「20組持ってきましたので、お使いください。横にあるのは電池と言って、それを入れ替えることで何度でも使えます。」
環境破壊するかもしれんけど。
「これは珍しいものをありがとうございます。」
「いえいえ、先日いただいた薬に比べると微々たるものですがお納めください。」
「ショウ様は貴重なスキル持ちであるだけでなく魔道具も作られるのですか?」
「いえ、これは魔道具ではありません。それに近いものかもしれませんが。」
「何をされても規格外ですな。今日はメレンタスとサフィアスの両親もショウ様におめにかかりたいと申しておりましたが、里の方ですこし厄介ごとがあり、残念ながらこちらには来ておりません。」
「それは残念です。」
「この迷宮は島の西にあるのですが、里は南東に運搬車でも2日はかかります。今回はこちらでお過ごしください。これから中層から下層に挑戦される皆様に、攻略に有用な情報もあるかと思います。こちらの地下にはそれらの書物もそろっていますので、ご滞在中にどうぞご覧ください。」
「ありがとうございます。俺は字が読めないので、エリーンたちがしっかり勉強させていただきます。」
「あれだけ色々な言葉をあやつるショウ様が、字が読めないのですか。」
「はい、残念ながら。」
みんなの視線が痛い。
「光と闇は扉を開ける。」
気まずい沈黙を破るようにサフィアスが呟いた。ポポゼウルは直ぐに反応した。
「サフィアス?」
「おじい様、ご主人様のパテに光属性の魔法が使える人が出ました。」
メレンタスがフォローする。
「そうなのですか。その言葉の意味については解釈が分かれておりますが、迷宮攻略の重要な要素と言われております。実は今回お越しいただいたのには、長老にのみ代々伝えられるいくつかの言葉があります。それをショウ様にお伝えしたく考えております。」
「そのような重大な秘密を俺なんかに教えてもらっていいんでしょうか?」
「前も申したように、霧の民は迷宮の真理を求め続けております。そのためにできることはすべてやるのです。」
ポポゼウルの目が怖いわ。
その後、エリーンたちは地下の図書室に降りて行った。俺はポポゼウルから秘伝の言葉を教えてもらった。しかしどれもなんちゃらの大予言みたいに、何とでも解釈できるようなのが多い。俺は長老の言葉をメモッた、日本語だが。忘れそうなのばかりだ。昼ご飯の時間になって俺はエリーンたちと合流した。
「どうだった?」
「地下の図書室は凄く頑丈でりっぱでした。それに魔物や迷宮のことも詳細に記録されていて参考になることが多いです。当面の情報を集めるだけでもけっこうかかりそうです。」
「それはよかった、それなら長老にお願いして、その間使わせてもらおう。」
四人にはこの島に来る前に、向こうのノートとペンを渡しておいてよかった。こっちの紙は質が悪いからな。
「ショウさんはどうしますか?」
「俺は字が読めないから、町をぶらぶらするよ。」
「ひとりで大丈夫ですか?」
子供扱いするなよ。雑魚だけど。
「わたし、付いていく。」
サフィアスが言い出した。
「いやいや、大丈夫だよ。」
俺の声は当然のように無視された。午後はエリーンとメレンタス、モウルが図書室に籠り、サフィアスは俺についてきた。
「あれは、青い渓谷の感知のサフィアスじゃないか?」
サフィアスと町を歩くと、そんな声が聞こえてくる。ここでは有名人なんだ、コミ症だが。
ノームの髪の毛は銀髪が普通だと思っていたが、少し灰色に近い人が町では多い。青みがかった銀髪は目立つのかも知れない。俺はサフィアスに注目がいくことで気楽に歩けた。
魔石を売っている店が多い。
「ここでは魔石は専売じゃないの?」
返事がいつものように分かりにくいので、俺の翻訳で行く。間違いがあるかもしれんけど。
{霧の民の各部族は魔石集めに力を集中しています。それに公爵のような権力者がいないので、魔石は自由に売り買いできます。他の島からも多くの商人が買い付けに来ます。なので数量が多いと割引もあって価格も変動します。聞いた話ではこの島ですべての魔石の半分近くが産出されているという説もあるようです。}
そうか、なので赤魔石も安く手に入るんだな。それであんなにMP2をたくさん持ってるんだ。
「それなら迷宮は結構混んでるんだね。」
{そうですね、31階層から50階層はいつも混んでるようです。}
「この町の店の人は人間がいないね。」
{人間は口がうまくて嘘をつくので霧の民は信用していません。}
人間、最低なんだな。
「それなのに良く俺は信用してもらったもんだな。」
{ご主人様は特別です。}
サフィアスは俺の腕にしがみついた。悪い気はしない。
外側の商店街を抜けるとそこには荒涼とした土地が広がっている。山は遠いので、いくつもの方向に街道が伸びているのが見える。
「畑とかは無いんだな。」
{寒いので、畑ができるような土地は限られています。どの部族も畑の開発に力を入れないので、食料が採れる量は少ないです。ギリギリ自給自足してる部族が多いです。}
やはりノームはストイックなんだ。
「西には山が無いんだな。」
{西は半日ほどで海に出ます。この町は人が多いので、食料は船で他の島から持ってきています。}
港があるんだな、見てみたい。その日の夕食で俺はポポゼウルに港を見たいと言った。ポポゼウルは快諾して、草原の民を付けてくることになった。




