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鍛冶を始めました

十日ぶりに町から荘園に戻った。

「ご主人様、お帰りなさいませ。皆さんお待ちです。」

畑の世話をしていたファロンビスが俺たちを見つけて声をかけてくる。

「おう、ファロンビス、毎日ご苦労様だな。みんな無事迷宮から戻ってきたか?」

「はい、昨日2回目の遠征から戻られました。また多くの者が新しい特技やスキルをいただいて、はしゃいでおります。」

「それは良かった。ファロンビスの子供も何か手に入れたのか?」

「それが、」

ファロンビスが涙ぐんだ。俺何か悪いこと聞いたのか。

「畏れ多いことに、私のただ一人の息子ファロリアスが光魔法をいただきました。」

え、えっ、オークが光魔法!それは感涙だったんだな。

「お、おう、それはおめでとう。よかったな。」

俺はいつも黙々と畑で働き続けるファロンビスの荒れた手を握りしめた。ほんとうによかった。俺は畑で少しの間、ファロンビスを抱きしめた後、山小屋に向かった。


「ショウさん、お帰りなさい。」

エリーンが俺を遠くに見つけて、大きな声をかけてくる。その声に反応して、みんなが小屋から出てきた。リムも大きな羽ばたきで俺に飛びついてきた。

「寂しかったぞ、ショウ。」

「遠征は大成功だったみたいだね。」

「どうして知ってるのじゃ。」

「さっき、畑でファロンビス達と会ったんだ。」

「そうか、それならファロリアスの事も聞いたんじゃな。」

「おう、光魔法らしいな。凄い。」

「光魔法にはいくつか系統があってな、ファロリアスはバフ系の光魔法を手に入れた。」

「バフ系?」

「攻撃力アップとか、防御力アップなんかができる。空の民でもあまり持つ者はいない。」

「それは凄いんじゃないのか。」

「そのとおりじゃ、これも秘密にせねばなるまい。」

「え、どうして。」

「考えてみよ、上級種でも手に入りにくいスキルを下級種が持つなど、空の民から見れば許容できないのじゃ。わらわは家族としてファロリアスを守らねばならん。」

「な、なるほど。」

「ショウだけでも化け物なのに、更に化け物を抱えることになるとはな。」

言葉とは裏腹にリムは笑顔だ。そこにノームの姉妹が近寄ってきた。トラブルは困るぞ。こいつらほんとに空気読まんからな。

「光と闇は扉を開く。」

サフィアス何を言ってるの?

「サフィアスが言ったのは青い渓谷に伝わる伝承の一つです。」

メレンタスがフォローした。

「それはどういう意味なんじゃ?」

「これについてはあまり有力な仮説もありません。しかし迷宮攻略に関する重要な伝承であることは間違いありません。しかしお姫様のパテに闇と光を使う者がいることは、何か関係があるかも知れません。」

良くわからん。とりあえず放置だな。

「ファロリアスはまだ4歳だからな、霧の民のふたりで魔法について色々教えてやってくれ。」

「はい、お姫様。」

めずらしくちゃんとしたやり取りだ。


幹部四人が山小屋に集まった。俺が町でのことを報告し、エリーンが遠征の結果を報告した。

「今回も半分が新しいスキルや特技を手に入れた。すごい確率じゃな。」

「ふつうは10%以下ですからね。五倍以上ですね。特にファロリアス、スリニーが。」

「スリニーは攻撃系だろ?」

「よくわかりましたね。剣技とハイスラッシュを同時に手に入れました。」

「ハイスラッシュ?」

「帰りに試したら、すべてのMPを使って8倍の攻撃をするようです。MPが増えたら更に倍率が上がりそうです。」

それはすごい、もともとドワーフの斧は強力だしな。

「町の借金ですが、手元の資金が厳しいので、大丈夫でしょうか。」

シュレンジュが心配そうな顔をする。

「それについて考えがある。町で採掘業者とはなしたら、コリコラスだと大きな金塊でも交換できるらしい。これを小分けにして銅貨や銀と替えてきてはどうだろう。」

俺はそう言って新たな金塊を取り出した。

「ショウ、その金塊を何本持ってるのじゃ!」

他の3人が呆れている。後日俺、エリーン、ドワーフ3人でコリコラスに行き、銅貨二十万枚と銀二十キロを仕入れてきた。銅貨だけでも400キロ。ドワーフたちも分担して持ち帰った。


いよいよ本格的に鍛冶に取り組むことになった。鉄や石炭もシュレンビータ達が頑張って採掘して多くの在庫ができていた。主だったものを集めて会議を開いた。

「まずはお姫様の装備だな。」

「空の民の装備は特殊ですから。しっかり良いものを作ります。」

ビジェイが気合を入れてる。

「どう特殊なの?」

「空の民の装備はローブと兜だけですし、それらは特別な軽量小型になります。そのため通常の鎧や兜とは金、銀の配合が変わります。」

「とりあえず、作れる最高はどんなだ。」

「ローブは金、銀、鉄を三分の一ずつですね。兜も同じです。品質が良いのができると、ローブに魔法防御+6、物理防御+6、兜に魔法防御+4,物理防御+4が付きます。」

「おお、そうすると100%ダメ受けないのか?」

「実は、魔法も物理も+10を付けても95%までしか効果が無いのです。」

「それなら、ローブと、兜は最高を目指してくれ。」

「一度ではできないかも知れませんが、金属は溶かして再利用できます。黄色の魔石は失われますが。」

「手間をかけてすまないが、何度でも試してほしい、黄色の魔石は気にしなくていいから。」

「わかりました。」

「わらわにそんなよい防具は無くてもよいぞ、ほどほどで。」

「それはダメです。」

俺とエリーンがハモった。

「ローブが600グラム、兜が300グラムですから、金300グラムと銀300グラムです。」

ここは金に糸目はつけられない。みんなもそう思ってる。

「人間、山の民、霧の民、畑の民は共通で鎧、盾、兜に最高+6、+3、+3が付けられます。森の民と草原の民は鎧は装備できないの、チェインメイルですが、これは+3までです。」

「できれば私たちもチェインメイルが良いです。」

メレンタスが声をあげる。ノームも結構素動きが早いからだろうな。

「まずは、お姫様の防具と、チェインメイル4、鎧10くらいを、最高品質で作ってみよう。そのできに応じて盾や兜のレベルを決めようか。」

俺の提案に一同は頷いた。

「それだと、今の材料でカバーできると思います。余裕があれば武器も可能ですね。鍛冶2だと、銀を使って物理ダメージを+3までしかできませんが。」

「まずは死なないことが大事だから、当面防具を優先しよう。」

本人には言えないけど、ビジェイは鍛冶3を取る可能性ありそうだし。


防具つくりはドワーフ3人がかりで数ヶ月かかりそうだ。その間は31階層の入り口くらいで魔石集めをすることになった。ペルカがいないので慎重に。

その前にファロリアスを連れて光バフの効果を確認に迷宮に入った。俺には魔物のHPも鑑定で分かるので、バフありとなしでダメの入り具合を比較する。まず驚いたのはバフがパテ全員に効果があることだ。これは大きい。そして攻撃は魔法も物理も20%多く入るようになる。バフの時間は5分ほどだ。しかし大きな制限があって、一度使用するとMP回復しても1時間は使えないようだ。なので使いどころは見極めないといけない。


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