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40階層

そして遠征予定日が来た。3パテが迷宮の入り口に集結した。30階層までの移動はすこし舐めプになってて、3人のケンタウロスは運搬車を曳いている。建材はいくらでも必要だ。公爵領の30階層施設は建設に3年かかったらしい。もう少し早く仕上げたいな。


ケンタウロスは体が大きく、声もとおる。HPも高い。なのでリーダーをすることが多い。3パテともケンタウロスがリーダーだ。三人を呼び集めた。

「みなさん、これからしばらく宜しくお願いします。フォーメーションは事前にお伝えしたとおりです。30階層まではすこし連携の練習をしながら進みたいと思います。」

俺は三人にトランシーバーを渡した。

「それは連絡機です。離れていても話ができます。耳に小さいのを付けてみて下さい。」

エリーンが聞いた。

「ショウさん、これは魔道具ですか?」

「ちょっと違うけど、MPは消費しないので心配しないで。」

三人は恐る恐る耳に付けた。

「そうしたら少し離れて小さな声で話してみてください。話したいときは大きい箱の緑のボタンを押して。」

ケンタウロスなので瞬時に離れた場所に移動した。少しして俺のところにみんな戻ってきた。

「これは凄いものですね。遠くでも話ができる。」

「前後に距離ができると、お互いの状況が分からなくなります。これを使えば距離が離れても連絡がつきます。それと今回からサフィアスの感知と地図を重ねて、道を選びます。魔物の接近情報もエリーンからリアルタイムでお二人に伝えます。」

3人のケンタウロスは黙って、目をあわせた。


迷宮移動は順調に進んだ。少し先に遭遇する魔物が事前に分かるので、MPの使い具合も調整できる。後ろに全く魔物がいないときは、後軍のドワーフたちを呼んで、みんなでボコる。後ろに複数の魔物が来そうだったら、後ろに中軍を全部投入できる。経験値は魔物の止めを刺したメンバーのパテにはいるようが、低層では関係がない。

「これはすごいですね。今までと全く違う戦いです。」

エリーンが口にだしたが、みんながそう思っている。

「敵が分かっている範囲ではそうだね。でも敵が分からないと慎重にいかないとな。」

そう言いながら、内心、笑いがとまらない。


一日半で30階層まで到着した。そこには今はノームの増員が加わり40人ほどが既にいる。半分は施設の建設に専念している。

「お早いお着きですね。もう少しかかるかと思ってました。」

ゲートの責任者が笑顔で近づいてきた。

「ありがとうございます。こちらの設備も順調のようですね。」

「そうですね。食糧庫と貯水槽は完成しました。これからは居住小屋も順番に進めます。それと、長老からの品物はあちらの小屋に入れてます。」

「お手数かけました。少し休憩してから出発します。」

ゲートの左右で1パテずつ警戒しているので、ここではゆっくりできる。そこまでの移動での感知スキルとトランシーバーを使った戦いを上から来たメンバーが興奮して、同僚に話している。探索が新しいステージに入るのだと、みんなが感じたようだ。


長老からは、約束の一万本の薬が届いていた。ケンタウロスたちは運搬車を外して、MP2薬を背中の袋に積み込んで出発した。今回は最大15日で40階層をめざす。

31階層におりるとやはり少しそこで待機する。サフィアスが使う感知でどの色に魔物群が紐づけされるか見極めるのだ。

「青です。」

サフィアスがエリーンに告げた。すぐに大蟻がたくさん現れる。シュレンモハンが前にでようとするが、メレンタスが止める。

「すいません。ちょっと下がって下さい。」

メレンタスが魔法を発動すると前方に火が降り注ぐ。大蟻は9割は燃えて爆砕した。残りをシュレンモハンが片付けた。

「火の全体魔法、ファイアーストームですね。すごい威力です。」

エリーンが褒める。

「威力は小さいですが、大量の雑魚にはコスパが良いです。」

これが火魔法2か、この前聞きそびれたやつだ。

「緑です。」

熊が3体あらわれた。

「黄です。」

アイスウルフ4体があらわれた。それぞれ短時間でボコって、紐づけが確定した。

その後はサフィアスレーダーが敵を識別しつつ前進した。次に現れる敵までの間隔がわかるので魔法を使うかどうかぎりぎりの判断ができるようになった。パテの厚みと数もあってほとんどMP薬を使わずに進んだ。時間はそれなりにかかったけど。

「後ろは問題ないですか?」

魔物襲来が一息ついて、エリーンが確認の通信をしてる。

「はい、こちらは問題なしです。エリーンさん、ところで、戻ったら一度食事でもご一緒お願いできませんか。」

「あ、私には夫がおりますので。ごめんなさい。」

誰や、こんなとこで人の嫁をナンパしてるのは!


途中で、前方に3群、後方に2群の魔物が寄ってきた。後方が大蟻とアイスウルフで弱そうだったので、全員で後退して、後ろを片付けてから、前方に向かった。感知があるとこんな戦い方もできる。これは楽だ。道が分かっているので、進みははやい。半日で33階層の入り口に到達した。ここだと前後から挟まれることがないので、半分に分かれて1時間ずつの休憩を取った。休憩の時はほぼ参戦する必要がないので、リラックスできた。精神的にみんな回復してる。33階層にはいりカマキリが出てくるようになったが、今回はドワーフやケンタウロスのようなHPが多い仲間が多いので、囲まれる心配のない限りは、そのメンバーでボコった。これはMPの節約になる。

「あまり出番がないのう。」

リムは贅沢なことを言ってる。前回はMP薬のみ過ぎて、お腹くだしてたくせに。MP薬を使わずに魔物を倒し続けると、財布にもやさしい。それなりに魔石が落ちるので、遠征が黒字にできるかもなんて下心も出てくる。今回の遠征では薬や食料などの消耗品はリム側で持つことになっており、魔石は半々に分ける取り決めだ。


それから半日で35階層の入り口まできた。ここで野営をすることになった。前回は同じ場所だったが、ほぼ寝れずに消耗したが、今回は3パテが奥、中、前でローテーションしたが、奥パテはゆっくり寝ることができた。俺も3時間は熟睡できスッキリした。


出発前に食事を採った。後軍のケンタウロスが近づいてきた。さっきのナンパ野郎だ。

「ショウ様、先ほどは知らぬこととは言え、エリーンさんを誘い失礼いたしました。さっきリム様から、叱られました。」

リムもいらん事言うなよ。

「いや、知らなかったのなら気にすることはないよ。でもトランシーバーだったら中軍のリーダーも聞いてるだろ。リムみたいにエリーンの肩に止まって盗み聞きしてるのは別にして。」

「中軍のリーダーは私の嫁ですから、大丈夫です。今回来ている草原の民4人は私と三人の嫁です。」

「えっ、どういうこと?」

「前からエリーンさんは良い人だって言ってたら、嫁がいいんじゃない、と許してくれたので。ちょうどもうすぐ恋の季節ですし。」

一夫多妻ではそうなるんか。まあ、俺もその恩恵受けてるけど。

「おー、そ、そうなんだ。まあこれからもよろしく頼むよ。」

「はい、ありがとうございます。」

三人嫁持ちのケンタウロスは戻って行った。最後に俺の下半身をしげしげと眺めてから。まーそうなるわな。


前回は入り口で撤退した35階層はマッピングが0%だ。いくら感知はあっても地図無しだと、魔物との実際の距離は大きくブレる。慎重を期して、魔法を多用して進んでいく。危険な状況はなかったが、迷宮が複雑で36階層入り口までほぼ8時間かかった。疲れた。


「おかげで2日にここまで来れました。35階層は長期戦だったので、すこしゆっくり休みましょう。」

エリーンの指示に応じて、それぞれのパテは食事を済ませた。そして交代しながら長めの睡眠をとった。いよいよ未踏の36階層に大規模編成で挑戦だ。


「36階層に降りる前に隊列を変更します。前衛に草原の民と山の民の皆さん出て下さい。各パテ、前から4,3,3,で横に3パテが並ぶようにお願いします。」

エリーンの指示に従い前、中、後の編成が右、中、左に変わった。そういえばさっきリーダーのケンタウロス3人で何か話してたな。なんか怪しい会話かと思ったが、俺の妄想だったみたいだ、すまんエリーン。

「ど、どうして陣形変えたの?」

俺は嫉妬深いダメ夫的な罪悪感に心が少し折れながら、聞いた。

「36-40階層で出てくる可能性のある魔物はたくさんいますが、その中で一番厄介な魔物に備えた陣形で行こうということになりました。」

「厄介な魔物とは?」

「ヤマアラシです。先制攻撃してきます。攻撃も厄介で中距離から大きな棘を一度に20本くらい撃ってきます。1本のダメが50くらいあるので、油断してると一撃で死にます。なので、下におりてまずは密集して盾で棘を防ぐ編成でスタートして、23階層までヤマアラシが来ないことが確認できたら、少しゆるめます。」

「何体でるの?」

「最大2体のようです。」

40本棘が一度に来るのか、これはやばいな。

「先制攻撃は感知しても防げないの?」

「それは私たちも話したんですが、どうも記憶の範囲では分からないそうです。」

あいつ俺に嫉妬して、隠してるんじゃないだろうな。

「でも、接近がわかれば、長距離魔法で攻撃できないの?」

「それは、どうもダメなようですね。できるとすれば、メレンタスさんのファイアーウォールを打って、その後の先制攻撃に備えるとか。」

先制攻撃強力なんだな。


36階層におりて、いつものように入り口を背にして布陣した。

「青です。」

サフィアスが早速感知した。みんなの緊張が高まる。

「毒蛾ですね。」

メレンタスが遠距離で魔物を識別する。

「弓と魔法を用意してください!」

エリーンの指示に俺もボウガンを構える。

「毒蛾は高いところを飛ぶので、剣や斧では届きません。こちらのパテの上まで来ると毒の鱗粉をまき散らします。近づくまでが勝負です。」

魔法攻撃と弓矢の攻撃で9体の毒蛾は爆砕したが、1体はパテ上まで届いた。紫の鱗粉が左頭上に広がる。俺も浴びたが毒は効かない。近くのノームとドワーフも毒を浴びた。すかざず二人は解毒薬を飲んだ。最後の毒蛾も矢と魔法を同時に浴び爆砕した。

「大したことないが、薬がもったいないな。」

「そうですね。今回解毒薬はそれほど多く持ってきてないので。」

エリーンが少し困った顔をした。

「それなら、毒蛾には魔法を出し惜しみせずにいこう。」

リムの言葉に、後ろにいる者たちが頷いた。

「緑です。」

サフィアスの警告からしばらくして現われたのは蟹一体だ。シオマネキのように片方だけ爪が大きい。高さ2メートル近い。

「大蟹の大爪は吹き飛ばし効果があります。盾では止められません。大爪攻撃の後、クールタイムが長いのでその間に殴って下さい。山の民がタゲ取って下さい。」

エリーンの言葉に応じてドワーフ二人が前に出る。蟹の大爪が横殴りで襲いかかった。エリーンの言ったとおり、二人は弾き飛ばされ300ほどのダメを受ける。これはドワーフで受けないとつらいな。

「大爪の攻撃の後、30秒ほど間が空くので、今です!」

剣や斧でボコって、五千ほどのHPを削り切った。1体ならこれでいいけど複数出るとどうなんだろう。

「二体以上の時は、ペルカは物理防御を使い一人でタゲ取って下さい。三体の時は魔法攻撃もお願いします。」

吹き飛ばされると少しの間こっちにも隙ができるので、複数で来られると危ない。なのにペルカ一人がタゲを取ることに、何人かのドワーフは不安そうだった。しかし次の大蟹二体襲来で、ペルカが二匹の大蟹の攻撃を受けてびくともしないことに同胞たちは歓喜した。

ペルカの物理防御はMP100で使えるので、燃費は良い。


緑と青が交互にしばらく来た後、サフィアスが言った。

「黄色です。先制してきます!」

「前衛、盾をしっかり構えて、後ろはしゃがんで上に盾を向けて!」

エリーンの言葉が終わらないうちに、数十の棘が上から飛来した。盾の間をすり抜けた棘が何人かに突き刺さる。中衛、後衛は少し混乱した。メレンタスがファイアーウォールを前面に展開して、第二波を防ごうとする。リムや魔法系のノームは惜しみなく魔法を叩き込む。おい、三体いるぞ、最高二体じゃなかったの?

メレンタスの作った火の壁が第二波の棘をほとんどを燃やして仲間を守った。攻撃魔法を連発してなんとか三体を撃破した。

「でましたね。ヤマアラシ。」

「それも三体だね。いままでになかった数だな。それにサフィアスは先制攻撃が分かるの?」

{はい、攻撃してくる魔物は感知では点滅します。視野に無いのに攻撃してくるというのは、先制攻撃スキルだと推測できます。}

「そうなんだな。しかし前後をこいつに囲まれるときついな。」

「前後に三体ずつ来ると、一度に百二十ほどの矢を受けることのなりますからね。」

「前はメレンタスのファイアーウォールで止めて、後ろは盾で防ぎながらモウルやペルカが切り込むのが良かろう。棘を受けたら直ちに回復薬じゃな。」

リムの提案に三人のケンタウロスも頷いた。それで行けるんかな。

「さすが上位迷宮ですね。ヤマアラシの数も増えてます。」

ハーレム持ちの間男ケンタウロスが不安な様子を見せる。

「そうじゃな、40階層までの最後の魔物も気になるが、38階層で確かめるしかない。」

リムが強気に言った。内心は怖いんだろうが、グッジョブだ。


ヤマアラシの前後襲来に備えた陣形に変えて、俺たちは前進を開始した。36階層では魔物が一度に3グループ以上同時に襲ってくることはなかったが、迷路が複雑で時間がかかった。それに比例してMP回復薬の消費が多くなった。37階層への降り口を見つけるのに7時間ほどかかったので、ここで食事と休憩だ。ヤマアラシに攻撃を受けた時に休憩中のパテに被害が行かないように警戒パテはずいぶん間隔を開けて位置取りをした。ヤマアラシが先制攻撃してくるとその間にバラバラと棘が突き刺さる。痛そうだが、被害はでない。休憩中のパテも魔法持ちはすかさず盾を掲げながら前線に上がる。連携も更に良くなった感じだ。

「ヤマアラシの棘は15メートルくらいの範囲で来るようですね。」

「それなら15メートル開けて中衛に霧の民を配置すれば前後から棘を受けるのは回避できそうだな。」

「それはそうじゃが、全体が間延びして、他の魔物の時に対応が遅くなるのう。」

「魔法を多用すれば、ヤマアラシ以外は対応できそうなので、ショウさんの案が良さそうですね。」

エリーンの意見にリムも同意した。


37階層に降りて、前衛パテ、中衛パテ、後衛パテ、それぞれ15メートルの間隔をとる陣形に変更した。トランシーバーが役に立っている。サフィアスの感知によって、魔物が接近する様子は瞬時に3パテに共有される。ヤマアラシ以外の時は中衛が前後に参加して戦うことで、大きな危険は回避できていた。

「前からヤマアラシと毒蛾、後ろからヤマアラシと蟹、ほぼ同時に来ます!」

エリーンが前衛から緊迫した声で魔物の襲来を伝えた。

「メレンタス、前に。それ以外の霧の民は後ろに。」

メレンタスが前に合流してファイアーウォールを打つ前に、ヤマアラシの第一撃が来た。走っているメレンタスを棘が襲う。何本かが刺さる。

「エリーン、メレンタスの回復を!」

俺の指示でエリーンがメレンタスに魔法をかける。ドワーフたちは棘を受けながら前に切り込んでいく。リムもエリーンの陰から闇魔法を連発する。メレンタスのファイアウォールがヤマアラシの第2弾をなんとか防ぐ。前に出たドワーフたちは毒も受けたが何とか毒蛾とヤマアラシを倒した。後ろではペルカが物理防御を使い魔物の中に仁王立ちになって斧を振り回した。昔と違い次々とヒットする。モウルも加速すると、大蟹やヤマアラシの攻撃は回避しきっている。剣舞だなこれは、美しい。リムも前を殲滅した後、MP回復薬を飲みながら後ろに飛んで、闇魔法を連発してなんとか魔物を殲滅した。

「なんとかなったのう、お腹の調子が悪くなったが。」

また薬の飲み過ぎで下痢か。なんとかならんのか。


その後時間はかかったが大した危険もなく38階層の降り口にたどり着いた。

「ようやくここまで来たのう。みんなご苦労様じゃ。」

リムが労いの声をかける。一行は少し緊張を緩め新たな魔物が現れるはずの階層に備えて休息をとった。

「しかしヤマアラシが出たということは、次の階層では何が出るのですかね。」

間男ケンタウロスが俺に話しかけた。まだ許して無いぞ。まあ、おれも大人だからそれなりに対応するが。

「ヤマアラシの次に厳しい魔物が出るんじゃないの。」

俺の適当な返事にエリーンが即座に反応した。

「それはないでしょうね。おそらく新種の魔物か、41階層以降の魔物が出るかと。」

お前、帰ったら折檻だな。

「41階層以降の魔物が出るとすれば、進めませんな。」

「下の魔物はそんなにやばいのか?」

「41階層以降の魔物は魔法を使ってきます。このパテの装備では全くダメですね。」

全否定なのね。

「我々も40階層までを前提に装備をしてますので、魔法防御の盾や鎧はありません。それではすぐに全滅してしまいます。」

間男ケンタウロスが恐ろしいことを言い出す。

「41階層以降に行くには魔法防御の装備が必須ということなのか?」

「そうですな。少なくとも70%は持たないと厳しいです。」

「70%とは?」

「魔法遮断率です。盾や鎧や兜の遮断率の合計が70%、つまり魔物の魔法の威力を三分の一にしないと、中層制覇は難しいです。その上ここは上位迷宮なので、それでも不足かもしれません。」

うーん、よくわからないが今のままではどうにもならないんだな。帰ったら詳しく聞こう。

「それなら、38階層の入り口で新たな魔物を見極めて、もし魔法を使うようなら即時撤退ということで良いかな。」

一同が同意して38階層への坂を下った。


38階層の入り口で布陣した。全体魔法がくると20メートル四方に被害が出るそうなので、HPの高いケンタウロスとドワーフが前を固め、20メートル後方にそれ以外が控える。最初の4グループは従来の魔物なので、サフィアスの感知で順調に片付ける。

「赤が来ます!」

サフィアスの報告を受けてエリーンが大声で伝える。みんなが前方の闇を凝視する。赤い眼が見えた。虎だ。虎は大きくジャンプして前衛の真ん中に飛び込んだ。爪にかかったドワーフは一挙にHPが500ほど削られた、強い。

「みんな、私の後ろに!」

ペルカが叫び、虎の正面に立つ。虎の爪は容赦なくペルカを切り刻もうとするが、物理防御が効いている。後ろから走り出したモウルが加速して虎の側面に回り込み、剣舞を叩き込む。


HP8000 MP100 知力 150 体力 1000 腕力 1200

素早さ 150 幸運 80  


HP8000なので、切り刻んでも魔法攻撃を叩き込んでもなかなか削れない。ペルカの物理防御が切れる直前に仕留めた。みんなペルカのスキルの凄さを誉め称えた。ペルカがいなければ犠牲が出ていただろう。グッジョブ!

「よくやったな。」

俺はペルカの頭を撫でてやった。ペルカも嬉しそうだ。

「虎ですね。これまでの迷宮記録ではこの階層で出たことはなかったはずです。ペルカさんがいなければ、物理防御を上げてないと山の民でも危なかったですね。」

間男ケンタウロスも感謝してる。まだ許してないけどな。

「でも前後を虎に囲まれると、対応できませんね。これ以上は厳しいそうですね。」

エリーンが悔しそうに下を向いた。

「赤、移動遅い。工夫する。同時避ける。」

サフィアスは虎は移動が遅いので、発見したらそちらを優先して、同時に虎2体と遭遇するのを避ければ、と言ってるようだ。

「しかし、虎が2体で一グループだったらどうする。」

「難易度から考えると、虎が2体で一グループは無いと思います。」

間男ケンタウロスが想定を言ったが、間違ってたらどうするんだ。

「確かに、あれが2体はないでしょうね。」

エリーンがまた間男ケンタウロスに賛成する。帰ったらきびしい折檻だな。


38階層では虎は頻繁には出てこなかった。そのためヤマアラシ対応フォーメーションで何とか危機もなく乗り切った。しかしまた7時間ほどかかった。ドワーフとノームはこのような迷宮内での強行軍に慣れているようだが、それ以外の種族は相当疲れがたまっていた。俺も結構辛い。食料も豊富なので、ここで半日ほど休むことにする。しかし虎に飛び込まれたらまずいのでサフィアスとペルカは別々に休息をとることにした。一度だけ休憩中に虎が現れたが、サフィアスが起きている時だったので、ドワーフたちが盾を並べて、虎の突進を止めて、なんとか撃退した。


6時間ずつ交代で寝たので、全員しっかり回復した。俺も元気いっぱいだ。あまり役には立ってないけど。今回はレベル40を目指すので、実質39階層を踏破すれば良いので、あと一階層だ。引き締めて行こう。俺が引き締めても無駄かもしれないが。


「ファイアーウォールはどれくらい効果があるの?」

「だいたい5分くらいですね。」

「虎が来たら、5分は足止めできるということだね。」

「火魔法は効果が大きかったので、そうだと思います。」

メレンタスには虎を含む複数の魔物に囲まれたら、虎側にファイアウォールを打つように指示した。これで少しは時間稼ぎができる。実際メレンタスの詠唱時間が短いので、ファイアウォールを連発して、虎を15分ほど足止めできることが判った。これは大きい。MP薬はどんどん消費するが。新たな作戦が功を奏して、39階層は思ったより順調に進んだ。メレンタスも下痢になってしまったけど。

「MP薬の在庫は大丈夫?」

「三千持ってきて、千使いましたね。38階層と39階層で消費が大きくなってます。」

エリーンたちケンタウロス三人が背中の袋を確認した。まだまだいけそうだが、金かかりすぎだな。時価五千万円だぞ。まあ、ポポゼウルに貰ったんだけど。


8時間かかって40階層の降り口に到達した。結構虎のでる回数が多かったからな。しかしメレンタスのファイアーウォールのおかげで同時襲撃を避けることができたのが良かった。

「リム様のパテは凄いスキルを持ってる人が多いですね。改めて凄さを実感しました。これなら長老が言うように偉業を成し遂げられるかもしれませんね。」

間男ケンタウロスがお世辞を言った。エリーンはやらんからな。

「いやいや、ドロン殿他の支援があっての事、感謝しております。」

リムが謙遜して言った。あ、間男ケンタウロスはドロンという名前か。どっかでそんな女たらしの名前聞いたことがあるような気がする。


降り口の前で3時間ほど休憩して、最後の戦いのために40階層に降りる。この世界では階層が合わないと全く経験値が入らない。レベル40になるためには40階層で戦う必要がある。たとえ階層入り口付近の楽なところでもいいから。40階層入り口でヤマアラシ対応の陣形で7時間ほど戦って俺たちは全員レベル40になった。


リム      スキル 火魔法、 闇魔法3    特技 MP吸収

モウル     スキル 加速           特技 剣技、調薬、即死回避

シュレンモハン スキル スラッシュ        特技 剣技、HP吸収 

メイガロマトン スキル エレキショット      特技 弓技

メレンタス   スキル 火魔法2、魔法攻撃無効

ショウ     スキル 鑑定4,魅了2,覚醒2,同期


また6人が新たなスキルや特技を手に入れた。レベル5ずつで半分は上がるな。これが覚醒2の効果みたいや。俺はあいかわらず戦いに関係ないスキルやけど。

「リム、闇魔法3ってどんなの?」

「や、や、闇属性の全体攻撃魔法。」

過呼吸に陥ってるな。大丈夫か。しかしこれは心強い。41階層からは全体攻撃魔法の打ち合いか、ゲーマー心をくすぐるな。俺は蚊帳の外やけど。

「メレンタス、おめでとう。凄いスキルだな。」

「ご主人様、おかげさまで、私もすばらしいスキルを手に入れました。これもご主人様にかわいがって、」

俺はメレンタスの口を塞いだ。廻りを見回してサフィアスしかいないので一安心。


スラッシュは一撃で通常の5倍のダメージが与えられるようだ。エレキショットは雷属性で5倍のダメージらしい。これらも強力だ。うらやましいわ。モウルも即死回避があると、一撃が大きな魔物に対してもタゲさえとらなかったら結構いけそうだ。戦いに幅が出そうだ。それにくらべ俺はまた鑑定か!鑑定4を使ってみたが、もしかしたらこれは使えるかも知れない。というのは鑑定相手のスキルや特技の方向性や獲得可能性が表示される。これから新たなメンバーを増やすときの参考になるかもしれない。スリーサイズ表示よりは圧倒的に優秀や。


ステータスの上がりがレベル31以降は種族によって異なるとエリーンに聞いていたが、まさにそのとおりだった。なんとレベル36-40でHP、MPとも40上がっている。31-35が20だったから倍だ。これは期待できる。更にレベルがあがれば雑魚脱出もあるかも。


パテ全員がレベル40になったことを確認して、俺たちは帰途についた。帰り道はリムが闇の全体魔法を連発して引き続き下痢が悪化した。毒蛾は一発で一掃だ。メイガロマトンのエレキショットは時々魔物を麻痺させてみんなを驚かせた。特に虎が麻痺したときは歓声が上がった。凄いな。帰りは一日で30階層まで戻った。そこでノームのパテとは別れることになった。

「リム様、厳しい上級迷宮で一回の遠征でレベル上げを完了するのは素晴らしいことです。これからも機会があればまたご一緒お願いします。」

間男ケンタウロス、いやドロンはそのように挨拶した。お前はもう来るな。

「ドロン殿、ポポゼウル様に宜しくお伝えください。このご恩は忘れません、と。」

「いえいえ、上級迷宮の情報も入手できましたし、見たことの無いようなスキルを見せていただき大変勉強になりました。それに多くの魔石もいただき恐縮です。しっかり長老には報告いたします。」

確かに魔石は多かったな。赤、橙、黄がそれぞれ200以上だ。折半でも100ずつある。

ドロンたちがゲートからノームの島に戻るのを見届けて、俺たちも新たにできた小屋で少し眠った。ここは快適だ。そして目覚めると一気に地上を目指し、一日で地上に戻った。その中でそれぞれが新たに手に入れたスキルや特技を使いこなすようになっている。

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