ノームの支援
帰り道はエリーンの背中にサフィアスをのせた。そしてサフィアスに定期的に感知を使わせて、わかったことをエリーンの耳元で伝えさせた。エリーンが地図情報と組み合わせて、魔物をなるべく回避するように道を選んだ。女性が地図を読めないというのは嘘だな。そのおかげでエンカウンタを最小限に抑えて30階層までもどることができた。
30階層では既にポポゼウルが部族民を連れて待っていた。突然襲いかかってくる様子はなかった。
「ショウ様、無事のお帰りなによりでございます。」
ポポゼウルは大きく頭をさげた。横にいたサフィアスがノーム語でポポゼウルにささやいた。
「おじい様、私、感知スキルをいただきました。」
ポポゼウルの孫だったんかい!ポポゼウルの目が大きく見開き、その後涙を流した。俺に向き直った。
「ショウ様、私は確信いたしました。あなた様が真実に至る道だと。我が部族はすべてをあなた様に捧げます。」
それはちょっと重いな。
ポポゼウルの連れてきた部族民は大方ノームだったが、ケンタウロスやドワーフもいる。多分ノームの使用人なのだろう。何人か鑑定したが、ほぼレベル50くらいまではいってる。すごい。エリーンやペルカは同族と言葉を交わしている。ペルカはなんかドワーフ語で私は鍛冶持ちだよー、なんて自慢してる。新米やろ、おまえ。
ひととおり紹介しあったあと、ポポゼウルとリムは契約書に署名した。この辺はしっかりしてるな。破ったらどうなるんだろう。契約は1年単位の自動更新で、ノームはレショウム迷宮の30階層ゲートの管理とそれに伴う物資の運搬、建設作業を担当する。ゲートを通じた建設物資の移動は目立つので、建築物資はリム側が提供する。リム側はレショウム迷宮の探索記録をサフィアスを通じて提供を受ける。この情報は青い渓谷の関係者限りとする。双方は関係する情報を外部に漏らしてはいけない。
署名した契約書を交換した後、ポポゼウスとリムはしっかり握手した。両方とも小さいので何とか絵になる。その後ポポゼウスが俺に近寄ってきた。
「ショウ様、感知はすべてのノームが望むスキルです。全島で数人しかもっていないでしょう。それを孫に授けていただき、お礼のしようもありませんが、家族となった祝いも含めて、わたしから個人的にお礼の品を献上いたしたく。」
孫って言っちゃてるな。
「いえいえ、そのようなお気遣いは必要ありません。こちらこそサフィアスにはいつも助けられていますから。」
「迷宮攻略にはいくらあっても邪魔にはなりません。どうかMP2薬一万本、お納めください。後日運ばせます。」
おれは断ろうとしていたが、ついありがとうございます、と言ってしまった。リムの財布も心配だし。
向こうのノームたちはこちらがレベル35しかないので、最初は軽くあしらっていた。しかし四日でレベル31から35まで踏破したことや、スキルや特技を聞いて、長老の言うことに納得したようだ。
そんなみんなの様子を見ながら、ポポゼウルは更に寄ってきた。怖いな。
「それと、もうひとつ、こちらに控えますのはメレンタスと申します。サフィアスの姉です。彼女は一族の中でも魔法特性が高く、迷宮攻略でも成果を上げております。」
「メレンタスと申します。妹がお世話になっております。お見知りおき下さい。」
姉はコミ症じゃないんだな。サフィアスと同じ銀髪だが、向こうは少し青みがかかっているが。こっちは赤みがある。なんか既に話の流れがやばそうだ。どうして兄貴じゃないんだ。確かに鑑定するとMP量がサフィアスの倍近いな。こんなに個体差があるんだ。
「ショウ様のお許しをいただければ、ショウ様の偉業のお手伝いをさせていただきたく。」
ほら、やはりこうなるんだ。これは一人で決めたら大変なことになるな。
「なるほど、それは大変ありがたいお話です。しかしそういうお話はパテのオーナーとリーダーにも通しませんと。」
俺はそういうと大声で呼んだ。
「リム、エリーン、ちょっと来て~」
ふたりが来た。簡単にポポゼウルからの提案を説明すると、リムからは既に黒い何かがが溢れ出してる。
「ショウ、また家族を増やそうとしておるのか?」
「お嬢様、メレンタスさんはもうすでに家族ですよ。」
エリーンがぶっこんできた。いやいや俺何もしてないよ!
「いや、そんなことあるはずが。」
俺が口ごもると、すでにリムは火魔法を発射態勢に入っている。助けて~。
「畑の民の子供たちもショウさんの義理の子供ですよね。メレンタスさんはサフィアスの実の姉なんですから、ショウさんの義理の姉ですよね。」
「そうか、そういうことか。」
リムの魔力が急速に萎んでいく。でも義理の姉でも覚醒利くのかな、マイレージ特典はどうだったかな。リムが態勢を立て直して、というか取り繕って、口を開いた。
「ポポゼウル殿のご提案は大変ありがたいです。私たちのパテは魔法職が少ないので助かります。しかしながらこれから時間をかけて攻略することになるでしょう。短い期間で離脱されるのは困るのですが。」
「それなら心配いりません。ショウ様の偉業がなるまで、そちらにお預け致します。」
そんな時がくるのかな、と俺は疑問だが。こうしてメレンタスが俺たちのパテに加わることになった。
俺は今になってやっと気づいたが、この世界ではパテの強さだけではなく頭数が物をいう。ソシャゲではダンジョンに潜る段取りはほぼ省略だが、ここでは兵站がまず欠かせない。その上にセーフポイントなんてないから四六時中魔物が襲ってくる。長時間がたつとメンバーの疲労が溜まり、ミスが増える。例えればエベレストに登るのにシェルパが欠かせないように、トップパテを支えるサブパテが欠かせない。最初は10人は多すぎだと思ったが、今ではそれでも足りないと感じる。信頼できるパテを複数作らないと下層までも辿り着かないな。
まず、メレンタスに覚醒2までかける。彼女もサフィアスと同じように自分にスキルが使われたことを認識した。凄いな。
「ご主人様、末永くお願いいたします。」
メレンタスは顔を赤くして言った。なんか勘違いしてないか。魅了は使ってないぞ。
HP 110 MP 690 知力 400 体力 120 腕力 140
素早さ 550 幸運 640 レベル39 霧の民 スキル 火魔法2 特技 なし
久しぶりに地上に戻った。迷宮を出たのが夕方なので助かった。日が高いとまぶしいからな。
出口のキャンプ地では、シュレンジュ以下オーク達が待ち受けていた。オーク達は出てきた俺たちが、ノーム中心の別パテと一緒だったので驚いた。エリーンが事情を説明して、オーク達も喜んでいる。良かった。新しい友人の到着と家族の無事な帰還を祝い、ちょっとした宴会になった。オークもノームも質素な食生活なので、宴会と言ってもたいしたことない。ただしノームたちはほぼ妖精語もオーク語も話せないので、サフィアスが通訳で大忙しだ。ちゃんとできてるか心配だが。
当面ノームからは40人くらいが常駐することになった。20人はゲートに常駐して建設や物資管理、20人は物資の運搬だ。ケンタウロスが4体いるので4台の運搬車が使える。これは凄い、エリーンは少し運搬から解放されそうだ。なにせみんなレベルが高いから30階層と出口の往復なら、運搬車を護衛しながらサイでも蹴散らしていく。そのうえ山小屋からキャンプ地までの物資運搬も引き受けてくれたので助かる。
今回の探索で赤と橙の魔石がたくさん落ちたが、公爵領で売ると目立つので、ポポゼウルが買い取ってくれた。その資金を携えて、エリーンが翌朝早くケンタウロス4人を連れて買い出しに町に向かった。壮観だ。なにせ人が増えた。木材の備蓄は豊富だが、穀物はまだ荘園では農地開拓中なので採れない。ノームの分の食料はリム側で提供する約束なので、穀物を買い付けないといけない。運搬車5台で数往復すればすぐに十分な量が確保できる。




