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人質救出2

「カソーピアのどの迷宮に人質が連れていかれたのかは履歴があるから分かっている。シンリアスの迷宮からそこまでは問題ない。人質がどこに囚われているかその場所を特定するのが難しい。これは霧の民の力に頼るしかない。」

「サフィアスが5人の波動を知っているので、それによく似た波動を感じるのはそれほど難しくないでしょう。迷宮からその場所が近ければすぐ対応できます。問題は迷宮から監禁場所までが遠い場合ですね。」

「恐らく、監禁場所は都だろうから、そこに向かうことになるな。」

「騒ぎを知って、騎士が集まる前にそこまで進まねばなりませんね。囲まれると厄介です。」

サイクスの言葉にジェイパスが反応する。

「わらわの部下にも60階層で色々捕獲させたのじゃ。それにわらわもついにメディーサを手に入れた。これは色々使えるのじゃ。」

「おおっ、そうか。それは対人戦では凄いことだ」

俺も思わず叫んだ。その後は具体的な作戦について話し合った。翌日リショウムの迷宮30階層に攻略部隊は集結した。話をきいてシンリアスの戦闘員も中央と西の迷宮から来れる者は参加している。

「それでは、これから俺たちの家族救出作戦を開始する。」

俺の掛け声に全員が雄たけびをあげ、次々とゲートに入っていった。

ペルカたち物理防御持ちが先頭で飛び込んだ。向こう側には警備の兵がいるが、シンリアスで物理防御を持ったオークを加えると20人を越える物理防御持ちに警備の兵は蹂躙される。それに続いてケンタウロスや加速持ちが次々とゲートに入る。ジェイパス達5人の人魚はファイアリザードをそれぞれ出した。ファイアリザードには6人乗れる。手筈どおり、先行部隊の一部は恐る恐るファイアリザードに乗り、迷宮の入り口に向かい疾走する。その間にも30階層のゲートや入り口を確保する部隊も続々とゲートを通ってくる。壮観だ。3時間ほどで第一陣は入り口に到着した。第一陣は60人ほどだ。

「まずいな、近くに町は無いようだ。」

入り口付近の警備兵をペルカたちが殲滅する傍らで俺は霧の民と話をした。今回はサイクス、サフィアス、メレンタス以外にも感覚の優れた者が3人参加してくれている。

「西に数キロ先に多くの波動がある。」

サフィアスの言葉に他の霧の民も頷く。迷宮から道が東西南北に通じているが俺たちは西に進むことにした。ファイアリザード4体を中心に俺たちは整備された道を疾走していく。騎士以外は邪魔しない限り傷付けないように指示しているので、住民が凍り付いている横を疾走していく。10分ほどすると前方に町並みが見えてきた。大きな石造りの建物が多い。立派な町だ。ここに違いない。更に町に近づくと、警報音が聞こえた。向こうも気づいたようだ。俺はエリーンの背中にリム、サフィアス、ジェイパス、アイと一緒だったが、

「これは守備兵が出てくるな。」

「前に500人ほど近づいてくる。」

「魔法職はいるか?」

「いないみたい。」

「それなら、任せよ。」

ジェイパスの合図で部下の一人が蚊を出した。100匹の蚊は町の入り口に展開しつつある騎士の上に飛び込んで行った。蚊は物理防御があるので、騎士では対応できない。次々と毒や衰弱になり倒れていく。俺たちはそんな騎士を横目に町に突入した。

「おお、すごい町じゃのう。」

リムが驚きの声を上げた。一同が周囲を見回す。町人たちは大混乱で逃げまどっているが、俺たちはそれを無視して前に進んだ。

「サフィアスどうだ。」

「まだ、人質の波動は感じない。」

「もう少し進もう。」

「前方に魔法職いる。」

サフィアスの警告に一同は緊張する。その直後光魔法が襲いかかった。横なぎの光線は多くの味方を巻き込んだが、魔法防御は全員90%あるので、ダメは少ない。ファイアリザードも魔法防御80%なので、問題ない。即座にロルやリムが魔法で反撃する。数発で敵の魔法職を沈黙させた。

更に前進すると射程の短い火魔法や雷魔法の攻撃もきた。こちらもサイクスやメレンタスも反撃する。10人ほどの魔法使いを殲滅した。更に精鋭らしい騎士が押し出してきたがファイアリザード4体が炎を吐く。さすがに魔法防御が高いのでダメが入らない。

「ペルカ頼むぞ。」

俺に声に反応して、物理防御職が集団で騎士の中に突っ込んで道を開ける。

「左の建物にいる。」

サフィアスが指さした大きな建物に俺たちは進んだ。ジェイパスは別の部下に指示を出し、新たな蚊が騎士に向かっていった。これは魔法職がいないと効果絶大だ。また次々と騎士たちは倒れていく。

「入り口を確保しておいてくれ。俺たちは中に入る。」

人魚、ファイアリザード、物理防御職が入り口を固め、35人ほどが建物に突入した。

「王様、私の後ろにいて下さい!」

アイが声を上げる。剣を握る手に力が入っている。落ち着いてな。加速勢が抵抗する者を排除しながら3チームに分かれて波動を追った。サイクス組、サフィアス組、メレンタス組はトランシーバで連絡を取っている。5階まで上がったが人質はいない。

「下かも。」

サフィアスの声に俺たちは地下に向かった。そこで人質15人を発見した。

「ニィアお姉さま!」

アイが一人のオークに抱きついた。

「あ、あなたは?」

ニィアと呼ばれたオークは突然人間に抱きつかれて戸惑っている。テルマトーンとビアティンも参加しているのでそれぞれ姉に抱きついて再会を喜んでいる。

「ゴンフィーネスです。お姉さま。今は人型ですが、あとでゆっくりお話しできます。」

「ええっ、そうなのですか!」

「みなさん、今は脱出に集中しましょう。草原の民に乗って下さい。」

人質が衰弱していることを考慮して、全員をケンタウロスに乗せた。地上に出て入り口まで来ると、ロルが魔法使いと戦っている。

「また、敵の増援が来たようです。すぐに離脱しましょう。」

「わかった、ジェイパス、何体か出してくれ。」

「わかった。」

ジェイパスの指示でデュラハン2体とチータ10体が現れた。敵の騎士は混乱した。俺たちはその間にフォイヘスが引いて来た運搬車に人質を乗せ換えて、撤退に移った。後ろで騎士たちが魔物と戦っているのを尻目に大通りを疾走した。大きな抵抗もなく町を離脱できた。

「ここまでは順調だな。」

「まだ、油断できません。」

エリーンが走りながら返事をする。

「まだまだ、使役がいるから安心するのじゃ。」

ジェイパスが得意げに言う。確かに大人数を相手にできるのですごいな。

迷宮の入り口に戻ると第2陣60人が到着している。ドワーフ、オークの混成部隊だが魔法職も10人ほどいる。

「おう、みんなありがとう。それじゃ。撤退だ。」

百数十人が後ろからの攻撃に気を使いながら30階層に向かった。

ゲートでも30人ほどが待機している。ここにはメイガロマトンを念のために配置していた。

「問題なかったか?」

「はい、誰も来ませんでした。」

「そうか、それはよかった。戻ろう。」

俺たちは人質15人を連れて荘園に戻った。


15人の人質はみんな痩せていた。シュレンジュが食事を用意している。

「みなさん、もう大丈夫です。ここでまずは体を休めて下さい。」

俺の言葉に15人は感謝の言葉を口々に述べた。大きな小屋がいくつも空いているので、その一つに人質15人と5人の家族が入った。5人が食事を運んでいく。

「まずは、静かに見守るのがよかろう。」

リムが沈痛な表情だ。

「そうですね。そうしましょう。」

エリーンとシュレンジュが同意する。俺は手伝ってくれたコンポロとモウル領の助っ人を送り返すのに忙しい。翌日になって5人の家族が俺の元にやってきた。

「姉や叔母たちもすこし落ち着きました。しかし心の傷の回復には時間がかかりそうです。」

ロロスマートが報告した。

「そうか、ここでゆっくりして、いつまでも居てもらって良いからな。その後どうするかも自由だ。」

「ありがとうございます。それぞれ長老には知らせておきますが、内密にするように言っておきます。」

「そうだな、そうしてくれ。」

改めてカソーピアの蛮行に心が乱された。


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