人質救出1
リムとエリーンが何か言い合いながら去った後、俺はゴンフィーネスとふたりになった。
「突然、言われて混乱してるかも知れないがよろしく頼む。」
「王様の護衛など身に余る光栄です。命に代えてお仕えいたします。」
「そんなに力を入れなくて、良いぞ。もっと楽にしろ。」
「そういう訳にはいきません。同胞を救っていただいた王様を守る使命は最優先です。」
「そ、そうか。これからは他の種族と会うことも多くなるから、名前も人型の時は変えるか?」
「新しい名前を頂けるのですか?」
なぜか涙声だ。
「いやなら、今のままで良いぞ。」
「とんでもないことです、嬉しくて涙が出ました。」
「そうか、それならこれからはアイと呼ぼう。短い方が良いからな。」
「アイですか、ありがとうございます。名前に負けないように頑張ります。」
なんか大変なことしたのかな。
「それと、俺はゲートで他の島に移動するから、その時は一緒に来てくれ。」
「この前、清里に行ったあれですね。」
「そうだ、知っての通り俺の服は袋に入れないといけないから。持っててくれるか。」
「はい、王様の下着を持てるのは幸せです。」
力入り過ぎやぞ。
「ずっと一緒ですので、着替えや風呂の準備も致しますので、なんなりと申しつけ下さい。」
「いや、そこまでしなくて良い。」
「そういう訳にはいきません。」
アイは美しい顔に厳しさを含ませた。キスしたいぞ。
「そ、そうか、それなら頼む。」
めんどくさいことになりそうだが、ここは譲っておこう。
「はい、お任せください。」
アイの鼻息があらい。ほどほどにしてね。
シュレンジュがモウル領から戻っていた。シウロデールもコンポロから来ており、フィンゼィクもシンリアスから戻ってきた。シュレンパウスも含めてこの4人が領地運営の頭脳だ。山小屋の大部屋に集まった。
「シュレンジュには新たにできる館に戻ってきて欲しい、モウル領には新たに経営持ちを2人くらいシンリアスから行ってもらう。お前には全体を見て欲しいからな。」
「はい、仰せのままに。あのショウ様の後ろに立ってる人はどなたですか?」
4人の疑問を代表してシュレンジュが尋ねた。
「ああ、これはリムとエリーンからおれの護衛に任命されたゴンフィーネスだ。ステータスが上がるので、人型になってる。人の名前はアイだ。シンリアスからきた5人娘のひとりだ。よろしくしてやってくれ。」
「えっ、ゴンフィーネスなの!わからなかった。」
ロロスマートが叫んだ。
「そうなの、今朝突然任命されたので、まだみんなにも話ができてないの。」
アイが済まなさそうに下を向く。
「すごいね。ゴンフィーネス強いから頑張ってね。うらやましい。」
「シンリアスの畑の民は少しシュレンジュさんより肌が濃い色なんですね。」
獣人のシウロデールがアイを見た。
「私たちは赤道に近いので、日光が強いですからそうなのかも知れません。」
「素晴らしいスタイルですね。うらやましいです。」
シュレンジュのコメントは無視しよう。反応すると色々問題になる。
「月に一度はシュレンジュを中心にこの4人で会議を開いてくれ。そして金や人材の状況を共有して、問題があれば共に知恵を出して欲しい。」
4人は深く頭を下げた。
「まず、昨日リムから公爵の館を建てることで了解を貰った。ここから少し南の森林を切り開いて作りたい。場所の選定はシュレンパウス頼む。建物の詳細はシュレンジュがニトルと相談して決めてくれ。」
ふたりは頷いた。
「千人ほどシンリアスから建設要員に招きたい。10年契約で良いと思う。ロロスマートはこの話をシンリアスに持って帰って相談してほしい。建築費用には当面、戦利品の金を使うが、シュレンビータが新たに銅の鉱脈を見つけたようなので、そこから銅貨を作るようにしたい。これはシュレンジュが直接管理してくれ。」
「シンリアスでも採掘特技が何人かいますが、そこで雇ってもらえますか?」
「それは大歓迎です。高給で雇いましょう。」
ロロスマートの問いにシュレンジュが即座に反応した。さすがだ。
「あの、よろしければシンリアスから千人単位でコンポロに来ていただくことは可能でしょうか?コンポロは放牧が盛んなのですが、農作物は輸入しているので。」
「はい、若い人には新たな世界を求めている者もいるので、コントルホーンさんと相談しますが、大丈夫だと思います。逆にこちらに放牧で来ていただくことは可能ですか?山麓はなだらかな斜面で水も豊富ですので。」
「そういうところに新たな牧場を作るのには魅力を感じる者も多いです。こちらも募集してみます。」
4か所の領地で人材や技術の交流が進みそうだ。頼もしい。
会議が終わって俺は自分の小屋に戻った。アイがついてくる。それは仕方ない。
「むずかしい話ですね。」
「みんな、それぞれ得意分野があるからな。」
「でも、シンリアスが良くなっていくのは楽しいです。姉にもこんな風景を見せたかったです。」
アイは下を向いた。
「姉さん?」
「6年前にカソーピアに送られました。」
俺はアイを抱きしめた。
「そうか、前回の人質はお前たちの家族なんだな。」
「はい、姉が多いです。」
俺の中で何かが切れた。
「助けに行こう。」
「はっ、何をおっしゃいます。」
「最初に言っただろう、俺たちは家族を大事にする。」
「カソーピアの都ですよ。」
アイはおろおろしている。俺はアイを部屋に残して家族たちをゲートで迎えに行った。モウルやスティリアスのところは深夜だったが、俺がいくと嬉しそうに来てくれた。
「みんな、急に集まってくれてすまない。今日は俺たちの家族を救いに行きたいので協力して欲しい。」
「シンリアスの人質ですね。」
サイクスが即座に反応した。分かってるのか?
「そうですね。カソーピアではシンリアスが離反したことがもう分かっているでしょうから急いだほうが良いかもしれません。」
エリーンも頷く。想定内なのか。
「ショウ、わらわは礼を言うのじゃ、家族を助ける決断をしてくれて。」
「みんな、もう分かっていたのか?」
「ショウ様なら、そういうと思っていました。」
スティリアスも続く。
「みんな、これは危険な作戦になるが良いのか。」
「家族を助けるのに何が問題なのじゃ?カソーピアごとき相手に。」
ジェイパスも大胆に俺の問いに答える。
「私たちの姉を助けていただくのはありがたいですが、皆様を危険に晒す訳には参りません。」
パンティカが心配そうに呟く。
「パンティカよ、誰か死んだら蘇生するのじゃ。」
リムが陽気に言う。5人のシンリアスの娘たちは涙を流し土下座する。
「みなさん、席に戻って下さい。みなさんは重要な戦力ですからね。」
サイクスが優しく5人に声をかけ、手を取った。




