500人の覚醒
翌日5人のオークを連れて、シンリアスの西の迷宮へ戻った。西で宰相のコントルホーンを拾ってシュレンジュ達とフォイヘスの高速運搬車に乗って各町をまわった。そして5人の親戚を2週間後に各港に集めるように指示してまわった。スキルや特技が手に入るというのが広まって、いとこだけでなく、血のつながった若いおじやおばも手を上げたので、500人に迫っているそうだ。
ロンドビー船長に手配して各港から親戚を運ばせようとしたが、中央だけは何処に出るにも遠い。
「中央の人はほんとに不便だな。」
山小屋前の広場でそんな愚痴をこぼしてエリーンと昼ご飯を食べていると、サイクスが寄ってきた。
「ショウさん、それなら迷宮を探したらどうですか?」
「え、迷宮ですか?」
「シンリアスはペイニャと同じくらいの広さがあります。それなら迷宮もまだまだあるはずですよ。」
「それはそうかもしれませんが、直ぐに見つかりますかね。」
「シンリアスには東西の山脈が二本ありますね。あそこには人も行きませんから、結構可能性が高いと思います。」
「それは耳よりな話ですね。」
エリーンも乗っかってくる。こいつ迷宮好きだからな。
「何かいい話か?」
リムがひらひらと近寄ってきた。これはあかん。昼ご飯が終わったらすぐ出発となった。
霧の民3人、俺、リム、エリーン、フォイヘス、コントピロ、ペルカ、で出かけた。
「それじゃ、先に行ってますね。」
フォイヘスとコントピロは加速があるので、一日で中央の町まで行ける。俺とエリーンとサイクスの組は二日かかる。サフィアス、リム、フォイヘスチームは北の山脈に向かった。コントピロ、ペルカ、メレンタスチームは南の山脈に向かった。それぞれトランシーバーで状況を共有する予定だ。俺たちが中央の町に着いてフィンゼィクの挨拶を受けている時も刻々と調査状況が届く。王宮も着々と工事が進んでいるので、それもむりやり見学させられた。一日ロスしたぞ。町に一泊させられて翌日俺たちも北に向かおうとしたら、南のメレンタスチームから連絡が入った。迷宮発見だ。俺たちも南に向かうことになった。サフィアスチームも南に向かった。翌日の昼には3チームが合流した。南の町に抜ける街道から西に10キロほどの丘陵に迷宮は見つかった。
「私もたまには役に立つでしょう。」
メレンタスが自慢げに言う。
「そうじゃのう、ペルカみたいに重いの乗せて、コントピロも頑張ったのじゃ。」
「私は重くありません!」
俺の方見て言ってみろ。
「外に魔物がでてますね。」
サイクスが冷静に言う。俺たちは地上の魔物を片付け、迷宮もサクッと解放した。解放しっぱなしもまずいので、急いで中央の町に戻った。
「フィンゼィク殿、ちょっとよろしいでしょうか?」
「はい、ショウ様、いかがいたしました。」
「迷宮を見つけて、解放したので、どなたか迷宮のオーナーになっていただけますか?」
「な、なんと言われました。」
「迷宮ですが、ここは港まで遠いので、探して使えるようにしました。これで移動も楽になります。」
「そ、それは凄いことですが、」
「オーナーを選んでください。」
「は、はい、それでは愚息でお願いします。」
俺たちはオーナーを変えて、10日後に迎えにくると伝えて荘園に戻った。
ロンドビー船長にシンリアスの北と東と南の町には迎えの船を出すように手配した。その後、時間差で西、中央、北、東、南の親戚たちが到着したので、俺はまたそこから3日ほどゲートボーイとして働き続けた。もう勘弁してくれ。しかしそのおかげで、シンリアスの人材は飛躍的に増強できた。
魔法職 20人
戦闘職 180人
支援職 300人
さすがに5人の娘たちほどではないが、これでシンリアスの各町は自力で防衛も可能だ。
支援職はほぼ全員農業か放牧を手にいれて、それに加えて技巧や建築、船長、経営なども手に入れている。これでコントルホーンの政府もうまくいくだろう。コントルホーンも外交まで入手したようだ。頼もしい。
レベル上げが済んだ親戚たちは感謝してシンリアスに戻っていった。まずはシンリアスの
政治をしっかりしないといけない。シュレンジュを連れて中央の町に飛んだ。
コントルホーンには、経営持ちを全員集めるように指示を出しておいた。王宮の建設はまだ途中だったが、その隣にある屋敷に50人が集まっていた。
「コントルホーン殿の政府はこれからこの国の舵をとることになるが、ここの集まった経営もちは全力でそれを支えて欲しい」
俺の言葉に全員が頭を下げた。
「そして、ここにいるシュレンジュがコントルホーン殿の顧問として、アドバイスを行う、この国では雌の地位が低いが、彼女は我が右腕である。軽視することは許さない。」
ざわめきが起こったが、コントルホーンが立ち上がった。
「これからは異種族との平等な交流と同時に雌の権利もしっかりと守る国にしたい。この中にも15人の雌がいるが、一緒に頑張って行こう。」
雌たちは力強く頷いている。その後税の取り扱いや、新たな作物の開発や商業について、町の間の交通についてなどの大きな方針を議論した。特に異論はでない。
「ここからは今までのこの島での生活を変える話になるので、意見のある者は遠慮せずに言ってほしい。」
俺の言葉に一同が緊張する。コントルホーンが立ち上がった。
「我々は豊かな生活をしてきたので、子供も餓死することなく無事に育てることができていた。しかし普通の民は半分以上の子供を亡くすことが日常だった。今後はそのようなことは無くしていきたい。」
「しかし、コントルホーン様、税を下げていただいたので、それも減るのではないでしょうか。」
「確かに、短期的にはそうなる。しかし、なにもしなければ今の人口が倍になれば同じことが起こるぞ。」
経営持ちは数字に強いので、そのことは全員が理解していた。
「宰相はどのようにお考えですか?」
「人口の増加をなだらかにすることが必要だ。今のように恋の季節ごとに子供を作っていては、それはむずかしい。」
「それはそうですが、そんなことが可能でしょうか?」
俺は口を挟んだ。
「実は俺の島でも昔そんなことがあった。何百年にもわたって人口は2000万人だったのが、技術がすすんで、どんどん子供を作るように国が奨励したら50年で8000万人になった。政府はあわてて人を他の島に捨てたり、他の島を侵略するようになったんだ。人口の爆発は人を不幸にする。」
みんなは話の中身より8000万人のところに食いついている。例えが悪かったな。
「その島ではどのように長い間2000万人で維持していたのですか?」
「この国のように餓死させるのではなく、中絶したり、生まれてすぐ殺していたんだ。」
「中絶とは?」
「生まれる前に、殺す技術があったんだ。」
一同から、どよめきとため息が漏れた。
「しかし、今では妊娠しない技術が進んでおり、中絶は少し減っている。」
「その技術を使えば、子供ができなくなるのですね。」
「そうだ、どうしても子供が多いと労働力が増えるので一家の繁栄につながるように思うのだろうが、その考えを変えなければいけない。」
「しかし、その考えを変えるのは簡単ではありません。」
「みんなが農業でしか生活できないと、どうしてもそういう考えになるな。なので、産業を興して生活できる場を増やすことも大事だ。」
「産業とはどういうことでしょう?」
「衣服を作ったり、家を作ったり、道路を作ったり、商売をしたり、そのようなことで生活の糧を稼ぐようにするのだ。そうすると子供が多いことが繁栄につながらなくなる。」
「確かに今は農業以外では食料を得ることができませんからな。」
「そのためには貨幣経済を入れねばならない。」
「いまは貨幣など使っておりません。」
「そうだな、だから税は銅貨に代えて、使っていくことになる。最初はその銅貨を流通させることが大事だ。」
「なるほど、ぼんやりと分かってきました。」
「それと恋の季節をやめろとは言えないので、避妊薬を作ることが大事だ。確か医療の特技を持つ者が20人ほどいたので、そこでは避妊薬の研究をしてほしい。」
一回ではなかなか分からないだろうから何度もこんな会話がいるだろうな。




