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黒い家  作者: たま


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8/16

即身成仏

「昔はこの能力が疎ましかったんですよ。特に思春期だし。」怜羅も動画で何度か見たおよそ僧侶に見えない長い髪を結んだ胡散臭い男にお茶を出す。

撮影スタッフも3人連れてやって来た。

「関西からですか?早かったですね。」と聞く。

「いえ、この頃はほとんど東京に居ます。

コチラは本当に人が多くて。その分、変な事件も多いです。」とため息をつきながら、ある方向を何度も見る。

まだ洗面所の場所は言ってないのに、そちらをチラチラ見てる。

「昔、初めは信じて無かったんだよ〜

でも、俺の彼女に大人の男が数人憑いてるとかさ言い出して〜

しばらくしたら本当にデートクラブの摘発で俺の彼女捕まったの!ビックリしたよ〜」と元チャラ男の真治が明るく話す。

「あれから俺はコイツの話は信用してんの♪」と久々に会っただろうに気さくに肩を組む。

怜羅の方がハラハラするノリの軽さだ。

「動画を送って下さって、ありがとうございます。

あんな手の込んだもの、コイツの細工では無理だと思いましたし、

奥さんの噂も聞いてましたから本物だと思いました。」とさすが仕事で来てるのでキチッと旧友の真治を無視して話す。

「? 私について何か友達に言いふらしてるんですか?この人?」本題の前にそれが気になる。

「コイツが軽さとアホの極みなのに、奥さまは秀才で理屈でねじ伏せるとか…」どうも真治は、怜羅の悪口をそこら中で話していたようだ。

テーブルの下でスネを蹴った。

「私も結婚するまでここまでのアホとは知りませんでした。でも…昔からアホな子が好きな傾向はあったので、自分のせいです。仕方ないです。」とため息をつく。

「オイオイ、ひどいなあ〜でも、良い奴だって三笠(みかさ)も怜羅も認めてくれたじゃん。」スネをさすりながら真治がボヤく。

「お前はバカだけど、絶対自分勝手じゃない。

常に相手のために動く。まあ、良かれと思って外す時もあるけど。」とその僧侶?霊媒師は真治を評価する。

怜羅も納得する。

結婚の決め手は、『真治』の名そのものな人柄なのだ。

家もほぼ勝手に決めたが、使い勝手が良くてムダが嫌いで甘めが苦手な怜羅のベビーカーの趣味とピッタリなデザインの家だし、今も生活に必要な物は半径1kmベビーカー押しても揃う環境だし、キツくてしんどいのは真治だけなのだ。

結局、人の話が理解できないアホだが、相手を思いやる気持ちは深い奴なのだ。

「本当はこの家を買う前に聞いて欲しかったですね。

ハッキリ言います。今からでも引っ越して下さい!」と三笠(みかさ)と呼ばれた男が怜羅に宣言する。

「さっきから見てらっしゃる方向に何が見えてるんですか?教えて下さい。」怜羅も聞く。

「ここはあの女の縄張りなのです。

なぜ彼女がココに拘るかは分かりませんが、あなた達が目障りで邪魔だと感じて居るようですよ?」三笠が憮然と返す。

「つまり除霊とか出来ないって言ってますか?」三笠の語気の強さに嫌な予感がしたのだ。

「貴方は僧侶でもありますよね?

主人から真言宗の教えを受けたと?

だったら、幽霊も仏ではないんですか?

この世の万物は仏だと言うのが、空海の教えだと思うんですが?」怜羅は理屈で除霊してもらおうと話す。

真治の話から、三笠は真言宗の寺の子で和歌山の高野山で修行をしたのは予想がついた。


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