翌朝
「全然音漏れしなかったな。良く寝れたよ〜
友達がついでに取材と動画撮らせてくれと言ってたのは良かったのか?」真治が友人に連絡すると彼はすでに霊関係で仕事にしていて、動画配信も行ってた。
「うん、私動画で見たことある人だよ、きっと。
まさか真治の友達だと知らなかったよ。 だって近畿の人でしょ?なんで?」怜羅が意外な人脈に驚く。
「うん、大学とか関係ないよ。高校エスカレーターの男子校だったろ?その時に家が寺の奴が居てね〜
見える奴でその頃は悩んでたんだ。
でも、それから近畿の寺の本山で修行してそれが普通だと認識できたんだって。
始祖空海は見える人で百鬼夜行と戦った事で貴族に認められて開祖したんだって。」と説明する。
「関東の寺は檀家が絶えて親の代で廃寺になったらしいけど、そいつはそのまま近畿の山で修行を続けて自分なりに納得できてから下山して事務所立ち上げたんだって。
でも、東京支部があるらしくて京都と東京を行き来してるって。
仕事の依頼が東京に偏ってるらしくて〜」と説明を受けた。
「ウチ都心から遠いけど来てくれるの?」怜羅は心配する。
「動画撮影させてもらえるなら良いってさ。場所や家は絶対特定しないようにするってさ。
オレに先に撮影始めてくれって。昨日仕掛けた除湿機、夜中に止まってたんだろ?」真治は霊が見える友達が助けてくれるとちょっと乗り気になってる…怜羅は反対に不安になる。
「うん、私が独身時代使ってる時こんな事無かったの。タイマー掛けてたのにその前に赤ランプ点滅して止まってるとか…一体どういう状態なのか?
タンク開けてみないと分からないの。」怜羅も首を傾げる。
「まず、それ映して送るよ。」と真治は携帯で動画を起動する。
怜羅の除湿機は湿った空気を冷やして水に戻してタンクに貯めるタイプのだ。下半分がほとんどタンクなので滅多な事では止まらないのだが…
「北向きベランダ無しの部屋で洗濯物もこれだけで乾く優れものだったんだけど…」東京で働き出した頃の安いアパートで一晩タイマー掛けとけば、温かい乾いた空気を吐き出してくれるし洗濯物も朝には乾いてるし便利だったのだ。一人暮らしで外干しは心配なので助かった。
夜中に勝手に止まるなんて…あり得なかったのだ。
除湿機をコンセントを抜いて点検口から持ち上げて出す。
「あれ?すごく重い!湿気が凄すぎてタンクが満タンになったから止まったみたい!
こんなの、初めて!」と重そうに怜羅が持ち上げるので真治も片手を貸して手伝う。
洗面所全体を映してから除湿機にカメラを向けた。
「じゃ、水が満タンみたいだから開けるよ。本当に湿気がすご…い…って、これ何!ヒーーーーーッ!!」思わず冷静な怜羅が悲鳴を上げて後ずさった。
「ヒエッ!」真治も後ずさったが携帯で撮影は続けた。
除湿機のタンクには水もだが藻のように黒い髪がミッシリと詰まっていたのだ。
その為に満タンでタイマーを無視して止まっていたのだ。
「なんで?なんで?空気の取り込み口はフィルターだよ?こんな毛なんか入りようがないよ!ど、どうして??なに?これ?」真治と怜羅は近付いて引き出したタンクの中を改めてしっかり見る。
が、やはりあの洗濯機の裏で見た毛の塊ような傷んだ縮れた黒髪がミッシリとタンクの中に藻のように詰まっている。
「…これか?洗面所、廊下より気温低いよな?ウチ、全体空調なのに…」真治も身体で感じたようだ。
洗面所だけヒンヤリしてる事に。
湿度じゃない!もっと背筋が凍るような冷たさなのだ。
「俺、これ知ってる。お祖父ちゃんの棺桶に花手向けた時に顔に手が当たったんだ。あの皮膚の温度だ!
死体の温度だ!」2人は洗面所から走るように逃げ出した。




