点検口
「ふう、やるか!」カビ取り剤を洗面所の壁紙と風呂場の排水口にスプレーしてから、怜羅も、木戸さんと同じように脱衣室の点検口を開けてみることにした。
湿度計も100均で買ってきた。
開けるとこんなすぐ下に思うほどセメントむき出しの床下が広がる。
少しのぞくとパイプが無数に分岐しながら繋がってる。
「そうか!風呂場と洗面台と洗濯機の排水管って、ココで1つになるんだ!
わあ~、風呂の水抜く時と洗濯機回す時重ならないようにしなきゃ!勉強なるなあ〜」と考えながら、なぜか1人なのに大きな声で話す。
点検口開けた瞬間に部屋の空気が変わったのに怜羅は分かった。
気温が一気に下がった気がした。
白いモヤみたいなのが一気に吹き出すような。
肌で湿気がすごいのもすぐ分かった。湿度計を見るとグングン針が動きあっという間に100%に振り切った。
「ほぼ水の中かあ〜そりゃ、黒カビ生えるよね〜」とまた大声でなぜか話す。
…なんか背中に人の気配がどうしてもするのだ。
今はベビーサークルの中で昼寝してる圭一と自分しか家に居ないのに!
「よし!換気のためにしばらく空けとこう!
独身時代に使ってた除湿機、確か物置にあるはず!
探そう!」とそのまま洗面所を出て居間に戻る。
背中に感じてた気配が消えた。
「んで、洗面所がああいう状態なんだあ〜
まあ、仕方ないか!」真治がお風呂上がりに今夜はチョコでコーティングしたアイスを食べながらソファにもたれる。
「うん、とにかく夜お風呂終わって排水して洗濯機回して乾燥までね。下の排水管付近をとにかく除湿しないと!」点検口を開けっ放しにして除湿機本体を中に仕込んだのだ。独身時代、初一人暮らしで安かったので北向きの家に住んだらカビと湿気に苦しんだ過去があるのだ。
「タイマーつけて朝まで回したら、中の湿気飛ぶと思うのよ。それに…」と言いかけて淀んだ。
「まあ、寝てるの2階だし!音は大丈夫かあ〜
トイレは玄関と2階寝室横で別で良かったよな。洗面所は朝まであの轟音なんだ!扉閉めたら良いよね。」と気楽にアイスかじってる。
話すべきかどうか…怜羅は悩む。
「でさ、あの…お札とか貰える所とかさ、知らない?」怜羅は東京のそういう場所は知らないのだ。
「エッ、なんで?」真治が振り返って聞く。
「うん、洗面所の点検口開けた時ね…なんか急に寒くなって気温が下がったのよ。」言葉としてどう表現すれば良いのか悩む。
「…湿気とかカビの臭いとかのせいなんじゃあ…」真治の目が泳ぐ。
「居間に戻ったら平気だったの。でも、とにかくヒャッとしたのよ。点検口閉めて元に戻しても良かったけど、それじゃカビも何も解決しないから。
あえて開けっ放して除湿機を回してるの。」怜羅の判断に真治が目を丸くしてる。
「だって、あの黒髪は洗濯機裏にあったんだから。
閉めても何も解決しないと思ったの。」怜羅が決意を持って話す。
「ココは私達の家よ。木戸さんとも話したの。
ローン組んで買ったからには簡単に引っ越せないしね。黒カビも他の何かとの同居も解決していくしかないんだよ、私達で。」怜羅が話すと真治がアイスを塊で落としてしまった。
「ウソだろ、オイ〜いや、友達で居た!そういうの詳しい奴!相談してお札貰えるか聞くよ〜エ〜ッ」と携帯をピコピコしだした。




