ご近所
「とにかくカビが広がらないようにしないと!」スーパーの買い出しにベビーカーを押しながら出掛けた。
駅前も何箇所かスーパーも家具屋ドラッグストアあるし電気屋まである。
生活に困らないのだ。ファミレスもあるし車があれば映画館ある巨大スーパーも10分くらいで行ける。生活も全く困らない。
田舎育ちで車生活慣れてる怜羅にしたら初級編だ。
ベビーカーだけでほとんど回れる、自転車で走ってる人も多いのは便利だ。
「私も年末にはママチャリデビューするかあ〜」とママチャリで走る親子に抜かされながら思う。
車も運転できるが小回り利く自転車の方が良さそうだ。自宅から半径1kmに何でもある。
考えると真治は会社遠いが、怜羅は何でも近場で揃う良い場所に素敵な家を買ってくれたのだ。
もっと感謝しないといけないのかも?
カビ除去の薬剤を眺めて、どれにするか悩んでると声を掛けられた。
「あの…違ってたらすみません。黒い家の角野さんじゃないですか?私、同じ宅地の木戸と言います。」と言われてみれば知ってる顔のような人に声を掛けられた。
「木戸さんって…ウチの裏手になる黄色いレンガのおウチですか?」建て売り6軒だが、1軒1軒趣が異なるのだ。なので同時期に建ってないと同じ建て売りではなく注文住宅地に見える。
同じように小さな子供を連れた家族ばかりだった気は確かにした。
夫婦だけの人も確かお腹が目立っていた感じがしたし。
「このベビーカー流行ってるドイツの超軽量で片手で畳めるヤツですよね?
私も買うつもりだったのですが、義母にコンビのプレゼントされてしまって〜気になってたんです!」とどうもベビーカーで黒い家だと特定されたようだ。
言われたらフリフリのサンシェードでプチ洋館みたいな家とお似合いのベビーカーに見覚えがある!
「家の感じとベビーカーがピッタリなんでオシャレなご家族なんだろなあ〜と思ってました!
…あの、でもやっぱりカビ剤買ってると言う事は…ウチと同じ状態かしら?」木戸さんが声をひそめる。
可愛いベビーカーにはピンクのスタイを着けた女の子がすやすやと眠っている。
「ウチまだ2週間しか住んでないのにお風呂場に黒カビが出たんですよ〜まさか、お宅も?」木戸さんが同じ種類のカビ取り剤を手にしていた。
強力の赤字がデカデカと書かれたやつだ。
「ゴメンね、この頃イライラしてて」今夜も疲れて帰ってきた真治になぜか優しくできた。
好きなレモネードアイスを風呂上がりに出す。
黒カビは真治に相談するよりご近所さんの方が良かったのだ。
やはり風呂場に発生するらしく、真っ黒なので風呂に問題があると言うより地面じゃないかと話し合った。
「排水管って地面の下でしょ?それでね、私脱衣場の下の点検口開けて湿度測ったのよ!
ビックリよ!ほぼずっと100%なのよ!つまり水没してるようなものなのよ!」洋館みたいなメルヘンな家でベビーカーも服装もフランス人形みたいな木戸さんなのに、動きは理系だ!
「そうか!洗面所の下の扉って何なのか良く知りませんでした。あれは水回りの点検口なんですね?」木戸さんに言われて初めて理解した。
真治をバカにしてたが、自分も良く家の構造を分かってないのだ。
「買う時 窪地だし盛土してるから気になったんだけどね〜
駅近でモロ好みの建売だったし〜買ってしまったのよ〜まさか2週間でカビの洗礼受けるとはね〜
他の家の人はどうなのかしら?」とか木戸さんと話せただけで気持ちが軽くなった。
自分1人で悩んでると暗くなるが、黒カビ仲間が出来て心強かった。
そうすると真治へも気持ちに余裕が出来たのだ。
「そうかあ〜ウチだけじゃないし、地下は湿度100%なのかあ〜ココは!そりゃ、黒カビも発生するよなあ〜誰か相談できないかなあ〜」と真治も親身になってくれた。怜羅だけの話ではなくて他人も参加した話だと真治も聞く耳を持つようだ。
「…あの髪の毛の話はその人にしなかったの?」真治が覚えていた。
「うん、そっちはね。何か話しちゃいけない気がして。」と怜羅も返した。
あの古い黒い傷みきった毛束は何だったのか?
前日怜羅が掃除してる時は無かったのだ。
その後に誰かが置いた?
翌日の朝に真治が見つけたのだ。
考えれば考える程、怖くなるのだ。




