霊より
確かに霊は怖いのだが、怜羅は人間の方が恐い。
木戸さんに霊の話なんかしたら…それに尾ひれがついてココで生きづらくなるし、成長する圭一の耳にも将来入るかもしれない。
それの方が嫌なのだ。なので、スラスラと嘘ついた。
これから母になるのだ。
二枚舌くらいお茶の子さいさいにならないと!
だが、三笠みたいな人に処置はしてもらいたい。
そこらへん複雑なのだ。
「裏の旦那さん、眠れないんだって。アナタは大丈夫?」圭一と遊んでる真治に聞く。
「いや〜、ずっと住む場所で悩んでた時の方がシンドかったなあ〜
中古マンションの貯水槽が気になるし、でも通勤や予算考えたら〜とか眠れなかったよ。
新築で生活に必要な物も手短に揃うし、通勤もだんだん慣れてきたし、三鷹の実家より快適なくらいだよ。
実家はバス便が減って親大変みたいだし。」と真治も怜羅もすごく現実的な性格のようだ。
訳の分からない事より訳の分かる事で悩むのに比重が重いのだ。
「幽霊さんのためにココから引っ越したら、私達そっちの方が自殺したくなるよね、きっと…」今まで何も意見が合わなかった2人なのに、そこだけはキッチリと同意見なのにお互い気付く。
「井戸と女って言うと貞子じゃん?もう典型と言うか。
俺ら勝てるんだろか?
霊になるくらいだから、よっぽどの事があったんだろしなあ〜」真治が腕組して悩む。
そうなのだ。
真治と怜羅が、この家に住みたい!気持ち以上の怨念がこの地にあるのかもしれないのだ。
その時!洗面所から「うあああ〜ッ!」と悲鳴が上がる。
すぐさま真治と怜羅も圭一抱いて走った。
が洗面所は閉じたままだ。
「大丈夫か?三笠?」真治が声を掛けた。
「あっ、すまん。動画撮ってるから演出上スタッフに怖い時は悲鳴上げても良いと言ってあるんだ。
今、勝手に洗濯機がコンセント抜けてるのに動き出したんだよ。
洗面台のカミソリも落ちたしな。
そろそろ彼女も出てくると思う…僕以外に見えたら、また絶叫響くかも?」三笠達は中で取り込んでるようだ。
「すいません。今日は日曜なんで他の建て売りも在宅率高いんで〜声のトーンは下げていただけると助かるんですが…すいません。」怜羅が申し訳無さそうに言う。
話聞いたら、絶対怖そうなのは理解できるのだが…
「分かりました。確かにここは廃虚とかじゃないのですしね。スタッフにも徹底します。」三笠の返答が苦しそうだ。
その時!怜羅は自分の背後に気配を感じた。
あの寒い感じだ。
「…今、居るな」横の真治も感じてるようだ。
「…多分、私の後でしょ?今首すじになんか…」怜羅が首すじが異常に寒くなった。
「……ああ、手だな。姿は見えないが手だけ見えるぞ!」真治が声を殺して圭一を抱きしめてる。
首すじに息?を掛けられたような気がした。思いっきり目を閉じた。
スッと身体の中を抜けて、洗面所の方でスタッフさんが絶叫した。
三笠のマントラが大きくなる。
「日曜日なのに〜でも仕方ないか!
そうだ!あなたの実家、浄土真宗でしょ?お母さん達からお仏壇引き継ごう?子供も出来たし!
もう立派な主だし!
居間は嫌だから洗面スペースから玄関向かう廊下のスペース置こうよ!
玄関来た人からも見えるし。お経とか響いても、それだと自然になるし!」今の状況以上にこれからの生活が頭の中を駆け巡る。




