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黒い家  作者: たま


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対話

「本当に霊より奥さんだよ、厄介なのは。」文句を言いながら三笠達は車から機材を運び込む。

「ネネッ、何だかにぎやかね。」裏の洋館風のお家の木戸さんが声を掛けてきた。

今日は旦那さんも一緒だ。

「ウチも点検口から排水管とか見てみたら!やっぱりスゴい湿気だったんですよ。

でね、下のセメントに水が滲み出てて〜どうも地下に井戸があるみたいなんですよ!

専門家の人たち呼んで見てもらう事にしたんですよ〜」と口からデマカセを言う。

まあ、図書館で調べた本当の事だが。

霊の話は、絶対したくない!

が、木戸さんの旦那さんの顔色がとんでもなく悪い事に気付いた。

「…あの、旦那さん、大丈夫ですか?」思わず聞いてしまう。

「そうなの!住んで3週間で黒カビ生えるし旦那は体調崩すし散々よ。

なんだか眠れないって言い出して夜中ずっと座ってたり。睡眠障害の専門病院へ連れて行ってくるわ!

多分通勤時間が長くなったせいだと思うんだけど。」と車で出掛けて行った。

『まさか裏の家まで、あの霊の影響とか?』ちょっと心配になる。

「お宅は2人とも鈍いから毛とか物理的に攻撃されるけど、普通はああ言う風に睡眠不足とか悪夢とか霊の姿を見るとか言う形になるんですよ。」と三笠さんが木戸さんの車が出た後、怜羅に囁く。

確かに裏の家と洗面所や水回りがちょうど背中合わせなので近いのだ。

ただ木戸さんは、メルヘンだけど理系女子なので幽霊とはチャンネルが合わないのだろう。

旦那さんが1人でダメージ食らってるようだ。

「良くあれだけスラスラと嘘つけますね。普通、淀みませんか?

小説とかだと『ぎこちなく取り繕う』とかのくだりでしょう?」と三笠が呆れる。

「いや〜井戸が地下にあるらしいのは本当なんですよ。その女性の霊が井戸とどういう関係なのか?

古い新聞をチェックしてきたんですが、こんな田舎の地方の話が載ってなくて。」怜羅が腕を組んでため息をつく。

「分かりました。本人と対話を試みましょう。その井戸があったのはいつぐらいですか?」三笠が聞く。

「大正くらいですね。元々は秋川渓谷の湧き水の池だったようです。水脈がズレたのかだんだん湿地帯となり大正期に井戸を掘って使ってたようです。」と図書館の古地図のコピーを見せる。

「町中は水道の整備も始まった頃ですが、ここらへんでは自分達で水脈を探って井戸を作らないといけなかったんでしょうね。彼女はいつの時代の人なんでしょうね?聞くけど答えてくれるかどうか?」と悩んでいる。

「元は人間でも話せなくなってるとか?」怜羅がたずねる。

「本人が無自覚な場合もありますからね。思念の残像だけの場合もありますし。」三笠が僧侶らしいグッズも今回は持ち込んでいる。

「コレって何ですか?」お墓とかで見る五輪塔が洗面所にセットされる。

「これは浮遊する魂を救いあちらへ導くものです。

1番下が地輪、その上が水輪、火輪、風輪、そして1番上が空輪です。

人間はこの順番であちらの世界へ行くんですよ、普通は。

未練やこの世にしがらみのある者が地上に留まり霊になるんです。

居たくて居る者はほとんどいないんですよ。

皆、御仏に成りたい戻りたいんです、本当は。」そう言いながら真言(マントラ)が始まるようだ。

「ココを閉めますよ。居間にいらしてて下さい。」とスタッフと共に洗面所風呂場にこもり出した。

ちょうど木戸さんご夫婦が出掛けてくれて助かった。

声が漏れないほど小声だが。

スタッフがカメラを回し、スピリチュアルBOXなども構えていた。

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