#0025 複雑奇怪な工学設計 / Enigmatic Design
あんまり時間が取れなくて短いですが、本題は次なのでそっちに分量を割きます。
セルンくんのモデルはもうちょっとかかるのでこんな調子もしばらく続きます。
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「えーと、ちょっと待って融合機関?」
僕の新しい装備の機能について得意げに語る
彼の口から飛び出したのは信じがたい言葉だった。
……それはもう驚いたよ。だって融合機関だよ?
帝国内部でもかなり貴重で高価な品だと聞くそんな代物を
技術商人から手に入れたなんて……ああ、めまいがする。
そもそもなんでこんな話に発展したかだけどね?
ケーリムの言う提案というのは、全く新しい飛行装具を
裏で開発していたからこの機会に渡したいというところから始まったんだ。
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「さぁて、準備はいいかな?」
提案したいものを見せるために積み上がった資材の山の間を
かき分け倉庫の奥へ進むケーリムについていくと、
彼は黒い布が被せられた何かの装備棚の前まで僕を案内してくれた。
ケーリム、随分ともったいぶるじゃないか……。
まあ、それくらいの自信作ということなんだろうけど。
「準備……とか言われても。まあ、いいんじゃないかな?」
彼がこういう態度をとるときは実際すごいものを
見せてくれることが多いから覚悟は決めやすいんだよね。
そんなわけで適当に答えつつ、早く中身を見せるように促した。
「なぁんだつまらないな。まあいいか、行くよ?」
そして、そんなケーリムが被せられた布を取り払うと――
姿を現したのは、なんといえばいいんだろう? 骨組み、
フレーム部分だけでできたワイバーン用の飛行装具らしきものだった。
えぇ、何これ? ……いや、本当に骨格だけで装甲が張られていないんだ。
後から取り付けるのかなとももちろん思ったんだけど、
固定用のボルトとかを通せるような部分は見当たらない。
「……これは……何? 飛行装具……だよね? 多分」
正直確証が持てなくて、彼にかける言葉もおそるおそるになってしまう。
でも、反応を見る限りそれで間違いないみたいだった。
「そう、よくわかったねセルン。これは僕が裏で君のために
こっそり作っていた新型の装備――極超音速飛行装具 "波渡" さ」
極超音速飛行装具。
ケーリム、君は目を離すとすぐにずっと先へ進んでしまうんだね、本当に。
装備の見た目は明らかに骨格のみで、
どう考えても空力的に優れたものとは言えない。
でも、彼が極超音速対応だというのなら……
僕の想像もつかないような仕掛けが施されているんだと思う。
そう、確信したよ。
「……ははは、極超音速? なんかもう、きみの技術は突き抜けているよね。……はぁ」
困惑と興奮で乱れた呼吸を落ち着かせてから、
少し間を置いて僕はケーリムの方を向いた。
彼も期待していた通りの反応で満足しているのかニヤニヤしていて、
初めてケーリムが僕の装備の相談に乗ってくれた時のことを思い出すよ。
「さて、落ち着いたかなセルン? まあ詳しいことは後でゆっくり説明
してあげるから、まずは君の今の装備の取り外しと修理をしなきゃね。
新しい装備に乗り換えるにしても予備はあったほうがいいだろうし」
「そうだね、お願いするよ」
――そしてそこからケーリムの長い話が始まり今に至るというわけ。
彼の言うところによるとね? この装備は軽量化のために
物理的な装甲の面積を限界まで抑えて、代わりに
光軸の魔法防壁で飛行装具の"表面"を形成するらしいんだ。
さらに、防壁の表面は関節部分に仕込まれた部品で
装着者がどんな姿勢を取っているかを検知して常に形を変え続けて、
果ては飛行時の姿勢と高度に速度域まで考慮して
彼があらかじめ用意した数百種類の点群情報から
最適な空力形状を作り出すことまでできるとか……。
ついでに点群情報を制御刻印盤に刻むために星追い飛行隊に
協力してもらったときのことも自慢話のごとく語ってくれたよ。
……見ない間に君も君であちこちを旅していたんだね。
本当に、魔工技師とは思えないくらい活動的で面白い個体だ。
はぁ、振り返りはこの辺りにして彼のとんでもない話に向き合おうか。
ケーリムの言う融合機関というのは海の向こうの超大国、
モラト帝国で大型の軍艦や地上施設を動かすために
使われている強力な動力源なんだけど……まあ当然
これは向こうでもかなり高価で構造も複雑な代物。
他国の技術者に売るなんてよほどの対価が得られなければ
あり得ないことだ。つまりケーリムはこれを手に入れるために
相当な苦労をしたんだろうね。
まあ、そのことは彼の方からいくらでも語ってくれるか。
僕が融合機関という言葉に固まっている中、
ケーリムは何がおかしいとでも言いたげな顔をしながら話しだす。
「そうだよ? 融合機関。君も知ってるだろうアレのことさ。
はぁ、これを手に入れるのにどんだけ苦労したか……まあ、
動力にこれを使ってるおかげで波渡は
高出力の防壁を常時展開し続けられるってわけ。
表面の大部分を非物質的な構造にしているおかげで貫雲より
ずっと動きやすくなってるし、絶対気に入ってくれると思うなぁ?」
そんな彼の話を聞いていて思ったのは、
防壁の常時展開というのもすごいけど "動きやすくなっている" 点かな。
貫雲は密閉型で、もう慣れたとはいえ使い始めた頃は窮屈に感じてはいたから。
飛行種族にとって、装備の重量と同じくらい大事なのは動きやすさだ。
飛行機械は翼も胴体も固定式……ああ、翼は折りたたんだり
後退角を変えられるものはあるけど基本は柔軟な動きはしない。
でも僕たちの場合は翼だけでなく胴体の曲げ方、
捻り方に尻尾や足の角度、ワイバーンならさらに耳の動きでも
体にかかる風の力を微調整して飛ぶ。
単に先進技術を取り入れたいだけでやっているわけじゃなくて、
しっかり僕たちのことを考えて作ってくれているんだと、
ケーリムの言葉を聞いて僕はそう感じたね。
「はぁ……君の作るものにはいつも驚かされてばかりだよ。
でも、ありがとうケーリム。僕の装備のために融合機関の
調達までするなんて、正直信じられないよ。
それに、僕たち飛行種族のことをよく知ったうえで設計してくれている。
……さて、ここまであれこれ話してくれたんだし、試させてもらってもいいよね?」
「ふっふっふ、もちろん! 君なら絶対そう言うと思って、
一通りの道具も持ってきてあるからねー。じゃ、さっそく始めるかい?」
「うん、頼むよケーリム」
新しい装備。いい響きだね。
ハフィルから新型の魔工エンジンをもらったときもそうだけど、
これには新たな遺物の第一発見者になったときと同じような高揚がある。
ああ、新しい飛行装具――波渡は
一体どんな使い勝手なんだろうか。楽しみだ。
[技術: 融合機関]
クトゥム大陸全土を支配する大国、モラト帝国にて一般的には大型の水上戦闘艦や
要塞などの地上施設への動力供給に使用されている高出力の動力装置。
公開されている情報では超高温、高圧下で
重水素とヘリウム3と呼ばれる物質を融合させることでエネルギーを生成、さらにそれを
磁気プラズマ力学発電機なる装置で電気に変換し、活用するものとされている。
また、対外向けには電気をマナに変換する動力接続装置と共に提供されているが、
入手には相応の対価を要求される。
軍艦に搭載されるものの場合、その出力は1基で250億ライズにもなり、
(注: 約20GW / 1ライズ = 0.8W)
この出力は王国や連合の主要都市の毎秒マナ消費量の十数倍である。
[兵器: 融合爆弾]
融合機関が利用している物理現象の巨大なエネルギー出力を破壊的用途で活用した
帝国の大量破壊兵器。1発で大都市を完全に消滅させるほどの威力があるとされているが、
帝国が大陸統一を成し遂げたより後に登場した兵器であり未だ実戦での使用例はない。
しかし、融合爆弾の前世代型ともいえる分裂爆弾の時点で帝国の主張通りの
破壊力が確認されているため、融合爆弾の威力に関しても誇張ではない可能性が非常に高く
帝国との外交は慎重に行う必要があるだろう。
コメント:
D-³He核融合炉と純粋水爆に相当する技術です。
帝国は現在燃料の調達がより容易なD-D核融合について研究を行っており、
そう遠くないうちにp-p核融合すら実用化できるとかの国の科学者は主張しています。
まあ、帝国は別に敵対はしていないので差し迫った脅威というわけではないですね。
なお、融合爆弾の威力は"戦略魔法"に分類される
第12級魔法の威力規模をはるかに上回るものになります。
[魔法の等級]
形式化された全ての魔法は、その効果規模に応じて等級が割り当てられており、
これは必要なマナの量や使用すべき、またはそうでない状況の判断に役立てられている。
等級は現在12個存在しており、その数字が大きいほど規模が大きいことを表している。
また、一般的に第1から第3級が低級魔法、第4から第6が高級魔法、第7、第8が大魔法
と呼ばれ、第9、第10は戦術魔法、第11、第12が戦略魔法と呼ばれる。
消費マナやマナ増幅装備の重量、性能の関係上生身の人間が扱うことができるのは
第8級までである。
丈夫な体と大きな体積を持つドラゴンであっても扱えるのは第10級までしか確認されていない。
これらの点から、第11級以上の等級の魔法は大規模な事前準備や
増幅設備の設営が必要となり、大勢の魔術師や技術者が集まり集団で
呪文の構築、設備の操作を行うためまるで
怪しげな儀式を行っている様に例えて儀式魔法とも呼ばれている。




