#0024 フェルツェの魔工技師 ケーリム / Querrim, Feltzen Thaumamechanist
短いですがもう片方と投稿日時合わせるために分割。
これからセルンくんのキャラクターモデルを作るので次回は相当遅くなります。
(どれくらいかかるのかわからんので念のためね)
倉庫のシャッターに近づくと、それは勝手に開いた。
そして中から現れたのはもちろん彼だ。
僕の飛行装具を作ってくれたフェルツェの魔工技師、ケーリムだね。
技師とは思えないほど重装備で完全武装。
他と見間違えることはめったにないであろう特徴的な姿だ。
本当に、久しぶりだよ。
「やあケーリム、久しぶり」
「ほんとだよねぇ、見ない間に随分と知らない装備が増えたようで
……まあいいや。さて、僕を呼び出したということは
当然装備に関する話でしょ? 色々聞かせてもらおうじゃないの」
……その久しぶりに再会した彼の視線は
僕ではなくて僕が持っている装備の方に向いていた。
本当に彼らしいところだとは思うけどもう少しこう……いや、
言うだけ無駄だね。
「もちろん。話は倉庫の中でいいかな?」
「そうだね、ほら入りなよ」
まあ、ひとまずは手でこちらを呼ぶケーリムに続いて倉庫の中へ。
……本当にすごい量だ。
輸送車両で乗り入れられるくらいには広い倉庫なのに、
既に4分の3くらいは埋まっていてしかも見たことのない部品や
未加工の素材が大量に積み上がっているんだよ?
入口のそばに置かれている黒いブロック状の物体は
多分貫雲の構造に使われている……えー、何だっけ?
ぐらふぇんえあろじぇる だったかな?
第二の文明の炭素系素材だと思うけど、
これだけあればかなりいろいろ作れそう
というくらいには存在感を発しているね。
それに、隣に置いてあるのは帝国製のナノラティス複合材だ。
僕の空洞の腕と質感が全く同じだからこれはすぐに分かった。
他にも随分と重そうな金属の延べ棒やロッド、シートにワイヤーと
ベアリング……あとは灼陽によく似た形状の物体。
形状が似ているだけで多分爆発物じゃないと思うけど、何だろう?
少なくとも起爆用のスイッチやレバーの類は付いていないね。
「……随分と荷物が多いんだね、ケーリム。まあ、僕の方も
荷物は増えたからおあいこかもしれないけど」
「まあね、エーティルの方の作業場から使えるものは大体持ってきたから
こんなもんさ。さて、さっそく君の注文を聞こうか?」
先に奥で待っていたケーリムはこちらを振り向いて、
自慢げに片手を低く掲げる。
君が優秀なのは認めるけど本当にどこから
そこまでの自信が湧いてくるのか気になるよ。
はぁ、それは置いておいて頼みたいことをまとめないとね。
……えぇと、まず必要なのは装備の修理だったけど……
これだけの設備と資材があれば新しい装備くらい
作れるんじゃないかとも考えてしまう。
修理の件でとりあえず一つで、次は鋼烏を扱うための受像装置付きの
ヘルメット、あとは鋼烏本体側の調整も頼んだほうがいいかな?
携行する必要があるから飛行装具の背中側にレールランチャーを
取り付けられるように改修も必要だと思う。
よし、今すぐに伝えられることはこのくらいかな。
残りは彼と相談しつつにしよう。
「注文、ね。じゃあ一つずつ話していくよ?」
僕の言葉の後、ケーリムは "何なりと" とでも実際に
口に出しそうなほどわかりやすい表情を見せた。
なら遠慮なく注文を突き付けてやろうね。
「まず、最優先でやってほしいのは貫雲の修理――胸当てと
右翼の付け根辺りだね。次は後で送られてくるはずの
新しい装備の調整とか、既存の装備への統合かな。
鋼烏っていうのは聞いたことはある?」
……? 鋼烏の名前を出した瞬間にケーリムはわずかに顔をしかめた。
もしかして、君が開発したの?
その予想はどうやら当たりだったようで、
彼は珍しく自信のない顔のまま口を開く。
「ああ……アレ、ね。うん、もちろん知ってる。
なにせ僕が開発者なんだから当然……はぁ」
「おや、君にしては珍しく自信がなさそうだけどどうしたの?」
確かに扱いは難しくはあったし、店主も "押し付けられた" なんて
否定的な言い方ではあった。
やっぱり一般向けに配備するのは難しいということなのかな?
気になるところだよ。
少しの沈黙の後、ケーリムはようやく話し始める。
「アレはねぇ、僕としてはなかなかいい出来だとは思っているんだ。
でも扱いが難しすぎて……そう、訓練期間が長くなりすぎるんだ。
複座型の飛行機械全てに装備させてっていうわけには
どうしても行かない。それに――」
ああ、見えたぞ。操作するのが人型種族だから余計に
難しくなってしまっているということだね。
「それに、人型種族が使うのには根本的に不向き、ということだね」
「……せめて僕に言わせてよね? まあ、君の指摘する通りさ。
なんというか、こればっかりは僕が抜けていたというか、
装備本体の性能しか見ていなかったというか……。
なにせ仕事終わりにみんなと飲んでいる間に思い付いたものだから」
待って、酔った勢いで作ったということ?
ちょっと羽目を外しすぎじゃないかい? ケーリム?
「は、はぁ……。酔っぱらったままこんなものを作れるのは
さすがというほかないけど、勢いに乗りすぎたんだね」
実際彼が作るものはどれもどうしてこんなものを思いつけるのか
分からないくらいには高度な設計がされているんだ。
僕が今使っている貫雲の内張りの中を通る冷却チューブ網だってそうだよ?
こんなの他では見たことがないし、第二の文明の噴進式追尾弾を
現代の技術で作られた装備と統合して魔術指令で
発射できるようにするとか、彼以外にこれができる魔工技師は
ほとんどいないんじゃない?
でも、意外と抜けているところもあるんだね。
「そういうこと。ま、僕がまさに開発者なわけだから仕様は
誰よりもよく知っているわけで、改造依頼は任せてよね。ほかに注文はある?
ないなら今度は僕から提案するよ?」
他の注文か。彼の側からの提案というのも気になるけど……あ、
そうだレーザーライフルを譲ろうと思っていたんだったね。
今のうちに手渡しておこうか。
「ああ、もう一つだけいいかな? これは注文とは違うんだけど」
吸着式のスリングがあるとはいえ微妙に邪魔な背中のライフルを
降ろしてケーリムに見せる。
「さっきから見えてはいたけど、そういえばそれは第二の文明の武器?
構造からして光線系っぽいな……」
彼は僕に近寄り軽く観察すると、それだけでどんな武器なのか言い当ててしまった。
説明しようと思っていたのに。
「そう、光線を放つ武器なんだ。多分僕が使っている鉄の光の
両手武器型みたいな立ち位置かな? 君は前、両手用の呪文投射器が
欲しいって言っていたよね? 今更かもしれないけど、正直これは
僕にとっては重くてかさばるし、せっかくだから譲ろうと思って持ってきたんだ」
ケーリムのことだし武器としてじゃなくて帝国の技術商人との交渉に
使う可能性の方が高いけど、どちらにせよ彼にとって間違いなく価値はあると思う。
僕はあまり重い物ばかり持ち歩きたくはないし、
向こうは自分で使っても売り払ってもいい。
なかなかいい考えじゃないかな?
「ああ、あの話まだ覚えてたんだ。だいぶ前でしょ? でも、
君がこんなものを持ってきてくれるなんてねぇ。確かに
君には邪魔になりそうだし、僕としてもこれは最高だね。
ありがとうセルン。くれるというなら受け取らせてもらうよ」
僕は小さく頷き、ライフルを彼に手渡した。
鋼烏の話で少し暗くなっていたその表情も一転して明るくなって、
やっぱり技術者としてこういうものはうれしいんだろうね。
「何に使うかは任せるけど、有効活用してくれることを
期待しているからね。さて、僕から伝えないといけないのは
ひとまずこれですべてかな。……えぇと、君の方からも提案があるんだったね?」
いまのところ僕からケーリムに言っておくことはこのくらいだ。
あとは彼の話次第かな?
> ENTITY IDENTIFICATION RETRIEVED
> SOURCE: (
"ROOT:\WORLDS\CIV_SANDBOX_TERRAN\SAVED\
CYCLE_04\INDIVIDUALS\GIFTED\QUERRIM.AAR"
)
> INDEX: 8
> NAME: QUERRIM
> RACE: FELTZE
> SIDE: GIFTED
> ROLE: THAUMAMECHANIST
> DESCRIPTION: (
ケーリムは連合出身のフェルツェであり、技師として活動を始めた直後から
数々の先進的な魔工機械を作り出し、民間、軍事分野双方での
技術発展に貢献し続けている。彼の名は科学会でも広く知られ、異なる系統の技術を
柔軟に組み合わせた複雑だが無二の性能を持つ機械の製作実績において特に高く評価されている。
直近では従来型と比べはるかに素早い交換が可能な呪文投射機用マナ増幅コイルや
状況に応じて動的に最適な形状へ変形可能な光軸魔法防壁、およびそれを利用した
可変式空力胴体と翼面に飛行種族向けの増加肢など、扱うことのできる分野の幅も広い。
)
コメント:
重要人物の内の一人。フェルツェの魔工技師です。
とにかくあるものを活用し、片方の不足をもう片方で補うような
技術の組み合わせや発想力に優れています。
旧文明の遺物を組み込んだ装備なども一部の精鋭向けに開発していたりと
裏の仕事も多く、特にそういった特殊用途では性能を追求する性質もあり
いつも金欠に悩まされています。そんな彼が作る装備を
身に着けて各地で功績を上げ、一方で時折回収した遺物や
現金で彼を助けるセルンは広告塔であり後援者ともいえます。
そのほか:
ケーリムもセルンもしゃべり方が似ているので難しいんですよね……。
基本的にはケーリムの方がはるかに自信たっぷりでかつ砕けた話し方をします。




