#0023: 出発の刻 / Departure Time
短めですな。
この世界、普通に爆撃機とかあります。
ABSOLUTE TIME: +74996 197 12:30:00.000
ロカウルでの用事を全て済ませてからしばらくして、
ようやく僕のもとにケーリムからの返事が届いた。
どうやら彼は連合領の西端にある貿易港――たしかテレイルだっけ?
で待ってくれているようだね。
確かあそこはエーティル行きの船も出ているから、
彼の仲間の活動地域を考慮するとそこから渡ってきたんだと思う。
手紙にはほかにもケーリムは今港の倉庫を借りて僕に渡す予定の装備や
整備用の機材、部品の類を保管していて、大抵の要求には対応できるともある。
倉庫を借りてくれているのなら鋼烏の改造や調整も
向こうでできるだろうし、
僕が自分で持って行くよりは配送依頼を出しておけばいいか。
当然追加料金は発生するけど。
まあ、これでついに装備の更新ができるんだ、宿の宿泊期間は
まだ残っているけどキャンセルして早速出発しよう。
傭兵ギルドの支部でケーリムからの手紙を受け取った後、
僕は宿に戻って荷物をまとめ、受付で手続きを済ませてから
鋼烏を買ったあの店まで行き、ケーリムが待つ
テレイルへの配送を頼んだらすぐに街を出た。
もちろん、忘れずに予備のパワーコアも買ってから、ね。
今から飛んでいけば日が傾き始める前には余裕を持って到着できるはずだ。
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Perspective: Observer
連合領で最も王国に近い位置にある研究アーコロジー、
ロカウルの西発着場から小さな黒い影が空へと飛び立つ。
町での用事を全て済ませたセルンは次の目的のために再び出発したのだ。
巡航高度に達した彼はその針路を南西――正確には方位2-5-3へ取り、
腰に装備した最新式の魔工噴進機関のスロットルを開く。
従来型のそれよりはるかに大きな推進力が
セルンの身体を砂漠の乾いた空へと押し出し、
速度はすぐに飛行機械ですら追いつけない領域に達した。
「そういえば、まだこれの全力は出していなかったんだったね……
試してみたいけど、説明を読む限り危険でもあるみたいだし少し悩むな」
彼のつぶやいた独り言は、音よりも早く飛べるという
0602QS/IW型魔工噴進機関に対するものだ。
通常、飛行速度が速くなればなるほど体に吹き付ける風は
激しいものとなり、飛行種族であっても限度を超えれば
目を開けていることはおろか呼吸すらままならなくなる。
セルンの装備は設計上は超音速飛行に対応したものではあるが、
彼にはまだ実際の超音速飛行の経験はない。
不安が残るのは無理もないのだろう。
覚悟を決めきれないまま空を突き進む彼だったが、
ちょうどテレイル行きの直線航路の三分の一
といったところに差し掛かったところだろうか。
セルンは遠くの空にあるものを見つけたことで
その判断を見送ることになった。
「……? あれ、王国の爆撃機だよね? 何をしているんだろう?」
彼の目が捉えたものは、4基の大型魔工噴進機関と
大面積の翼を持つ重量級の飛行機械――爆撃機と呼ばれるものだ。
通常は自由落下型の爆弾を胴体内部に格納して運搬し、
地上目標へ大火力を投射するために展開される兵器だが
そのようなものがここで何を?
首を傾げるセルンであったが、
どうやら彼には心当たりがあるようだ。
「ああ、そうか! 物流ステーション イプシロンの発掘だ!
ついに爆破で空洞を崩すんだね」
彼の知る限りでは爆撃機の進行方向の先にあるものは
第二の文明の地下施設へ通じる小さな開口部があった地点。
そしてその反対方向にあるのは王国領北部の
アルデン空軍基地という点からそう推測したのだろう。
セルンはそれに興味を示したのか緩やかに旋回をはじめ、爆撃機の後を追う。
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Perspective: Cernn
やっぱり思った通りだったよ。
あの爆撃機は真っすぐ地下空洞の入口へ向かっている。
あまり近付くと邪魔になるから距離は詰められないけど
いいものが見られそうだね。
高度を上げて追跡を続けていると、
爆撃機が投弾までの最終接近に入ったところを確認できた。
……それにしても何を使って爆破するんだろう?
衝撃系の破砕水晶かな? あまり熱や破片が出るものは
適さないと思うし……どうだろう。
――そんな疑問も目の前の爆発を見れば吹き飛んだ。
思った通り衝撃系だ。
目に見えない何かが砂漠と荒野の砂を薙ぎ払い、巻き上げる。
そしてもとより脆かった地下空洞の天井は勢い良く砕かれて
押し寄せる衝撃がその破片を空洞の底へと弾き飛ばし
はるか下方で巻き起こる破壊は数秒遅れて
空の上の僕の耳まで届き、風を切る翼をわずかに揺るがす。
これだけの距離があるのにすごい衝撃だよ。
その後の数分も、僕は上空で崩落した後の様子を眺めていた。
視点を未だに砂埃が晴れない崩落個所から東側へ移してみると、
そこには爆撃の指揮を執っているであろう空中騎兵の姿が。
それにロカウルから派遣されたであろう調査チームの車列も遠くに見えるね。
ついに、本格的な調査が始まるんだ。
僕も正直なところもっと奥を探索してみたいという気持ちはある。
でも、装備が損傷したままではあまりにも危険だし、
新しく手に入れた遺物だってまだ一度しか使ったことがないんだ。
ここは他のみんなに任せるのがいいだろうね。
僕の強みは自由で身軽なことなんだし、
未探索の地域なんて世界中にたくさんあるんだ。
昔と違って今の僕は多少の危険なら撥ね退けられる。
もっと、遠く深い場所へ鉤爪を伸ばすのも悪くはないよ。
……さて、寄り道はこのくらいにしてテレイルへ向かわないと。
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寄り道を済ませた後、僕は真っすぐテレイルへ向かっていた。
見渡すことのできる地の果てには海が見え始めていて、
高度を上げれば沖合を走る船の姿も見えそうだね。
……そろそろ、試してみようかな。
ハフィルがくれたこの魔工エンジンで音よりも早く飛ぶことができる
というのは知っていたけど、自分で実際に
超音速飛行をするというのはもちろん経験がない。
それに不安要素もたくさんある。暇な時間にマニュアルは読んだんだよ?
その中には物騒な言葉がたくさん書かれていて、
ただまっすぐ飛ぶだけでも考慮しなければならない点が沢山あるんだ。
まず、超音速飛行時に体にかかる動圧というのはすさまじいものになる。
あまりに早い速度で空気にぶつかるわけだから、
バランスを崩して急減速した時に体にかかる負荷は
通常飛行時とは比較にならないわけで……。
取り繕わずに言えば、
少しのミスで体は気流に引き裂かれることになる、ということ。
こうして言葉にしてみると恐ろしいね。
超音速飛行でこれなんだから、今研究されている
極超音速飛行では一体どうなってしまうんだろう?
……うん、やめておこう。少なくともやるならケーリムに
装備を新しくしてもらってから、彼の助言も受けたうえでやりたい。
飛ぶことそのものは僕たちワイバーンの方がよく知っているけど、
高速飛行時の挙動はさすがに科学者や技術者の方が詳しいからね。
そうやって危険を冒さず踏みとどまったところで
あらためて周囲を見渡すと……
僕はちょうどテレイルまであと少しというところに来ていた。
これくらいの距離を飛ぶには今のままでも十分早いよ。
よし、町に降りようか。
テレイルは連合と王国とを結ぶ唯一の海路につながっている大きな港だ。
船の輸送能力は飛行機械や列車とは比較にならないからね。
全長500メルハを超えるような巨大な輸送船が
いくつも入港している様子は壮観だよ。
空からだと小さく見えるとはいえ降りれば見上げるほど大きくて、
よくもまあこんなものが海に浮かぶものだと感心してしまう。
そしてそんな巨大な船の荷物を動かす大型クレーンと
積み上げられた無数の貨物コンテナ。
流光が空を飛んでいることの方がさらに驚異的ではあるけど、
テクノロジーが持つ可能性というのは素晴らしくて、そして夢がある。
あそこまで研究と開発に熱心になれるケーリムや
ほかのフェルツェたちの気持ちもよくわかるね。
見物し終えたら、着陸のために少しずつ高度を落として
町の正門のすぐ前へ降下だ。
別に飛行種族は町の壁を飛び越えていいことになっているんだけど一応ね。
はぁ、降りてみるとやっぱり大きいな。
着地したら、門を警備する衛兵に軽く挨拶をして町の中へ。
門をくぐった先の左側には貨物船から降ろされたコンテナを
各地に運ぶための輸送車両が沢山停められていて、
その駐車場は港のコンテナ置き場と直接つながっている。
反対側には一般市民用の駐車場かな? この町は港湾設備が主で、
生活するための町という感じではないんだよね。
その点ではエーティルとは大きく違うと思う。
さて、合流場所はどこだったかな? 倉庫の番号は03番だから……あそこだ。
街に入ってしばらく歩くと合流場所である
貸し倉庫を見つけることができた。
彼のことだし中に仮設の作業場でも建てて
すでに機械をいじってるんじゃないかな?
まあ、留守にしているなら港湾管理棟に行って伝言を頼めばいいや。
[場所: テレイル]
テレイルは連合領の西端に位置する連合唯一の貿易港である。
都市というよりは港湾労働者のための居住地という方が近く、
またアーコロジーでもない。
大型のコンテナ輸送船を収容可能な設備を複数有し、それらを連合領各地に
分配するための輸送車両も運用されている。
ほか、一般市民でも利用可能なエーティル - テレイル間の連絡船も運航している。
[場所: エーティル]
王国で唯一の造船所が存在する巨大な港町。都市部分と海軍基地部分に
分かれた構造となっており、造船所もまた民間の造船所と軍の造船所で分かれている。
全長1500メルハ (1200m)にもなる王国のテンペスト級戦艦が
停泊できる港はここ以外にはなく、
それゆえに首都圏と同等の厳重な警備、防衛体制が敷かれているのも特徴だろう。
また、交通量が非常に多く各地から人や物が集まる関係で輸送路上の警備に限界があり、
傭兵にとってはエーティル周辺の警備業務は安定した収入源になりうるためここを拠点に
活動する傭兵は多い。
[場所: アルデン空軍基地]
王国領で最北に位置する空軍基地。
王国空軍第19爆撃航空団の運用拠点である。
滑走路の長さは最大で4000メルハ (3200m) 配置は 30 / 12
[兵科: 空中騎兵]
アジマ王国特有の飛行種族と陸上種族のペアによる特殊兵科。
通常は人間、フェルツェ、またはゴブリンの騎手と
それを乗せるワイバーンの一組で構成され、空中と地上を自在に行き来し
必要に応じて別行動を行うなど柔軟な戦術により他の地上部隊を支援することが
主任務である。また、移動の自由度と視野の広さから前線、
現地での航空攻撃の指揮、統制を担当することも多い。
コメント:
空からの攻撃、騎手を降ろしてからの陸空同時攻撃、どこにでも射点を移せる狙撃手や
JTACまで幅広くこなせる非常に高度な兵科です。もちろん偵察なども得意。
乗せる側であるワイバーンたちからは
体重の軽いフェルツェやゴブリンの方が好まれます。
その関係で人間の騎手だと女性が多い。




