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存続限界点: 朽ち行く世界と翼ある探検家 / Hard Limit: Decaying Reality and the Winged Explorer  作者: 核分裂断片
000 鉄と砂漠と: 砂に埋もれた記憶たち / Sand and Steel: Buried Memories of the Badlands
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#0021 休暇と次への備え / Vacation and Preparation

比較的ましな文字数……かもしれない。

更新は相変わらず遅いけど。

予想外に傭兵ギルドが混んでいたので、僕は予定を入れ替えて

アシャーとの待ち合わせ場所へ向かうことにした。


まあ、待ち合わせと言っても仕事の報酬を

受け取るだけなんだけどね。何か特別な用事があるわけじゃあない。


さて出発しようか。大勢の傭兵が集まって混雑した通りから飛び立ち、

北東側の壁の上へ。なんでもそこはアシャーのお気に入りらしくて

とても景色のいいところなんだとか。


――巡航高度まで上がって1分と少し飛べば

すでにその場所は目の前だ。


ただ、本当はもう少ししてから合流する予定だったから

まだ彼の姿はないね。


彼の好きだという景色を見ながら少し待っていようか。


転落防止用の柵の上に飛び乗って、

そこから街を見下ろしてみる。


……うん、確かにこれはとてもいい景色だ。

僕がいつも通る西側の壁から見たそれとは

随分と違うこの町の姿。


西からだと見えない工業区の製鋼所から漏れ出す

燃えるような橙の光が奥に見える中心街の街の明かりと重なって、

まるで炎の中の都市だね。


でも、それは燃える炎による荒廃を思わせるものではなくて――

どちらかと言えばこの町の活力を映し出しているかのような……。

そういった力強さがあると思う。


ロカウルは連合のアーコロジーの中でも規模は小さい方で

産業よりも研究の比重が大きい街だけど、

それでも連合の一員なんだって、これを見て僕はそう感じた。


良くも悪くもこの国は王国とは違う道を歩んでいる。

それは間違いないよね。


そんなふうに景色をしばらく眺めていると、

視界内にアシャーの姿が映った。

時計を見てみるとまさに時間通り。彼のことはあまり知らないけど

かなりしっかりした性格なのかな?


「先に来ていたのか、セルン」


アシャーは緩やかに速度を落として僕のすぐ後ろ降り立ち、

そのまま流れるような動きで首に下げた鞄を降ろす。


「本当は先に傭兵ギルドで報酬をもらうつもりだったんだけど、

随分と混雑しているようだったから」


「ああ……あの行列のことか。確かにあれでは受け取りもままならないな」


一瞬だけ町の方を振り向きながらそう話す彼。

なんだ、アシャーもあの行列は見ていたんだね。


「まあ、とにかくこれが届けるよう言われた報酬だ。

好きなように使え。それでは」


そしてそう言うや否やアシャーは再び離陸態勢に入る。


「うん、わざわざ届けてくれてありがとう、アシャー。それじゃあ元気で」


僕の言葉を一応は最後まで聞いたのち、

アシャーは再びアークタワーへと飛び立っていった。


……どうも、彼は必要最低限の話以外はしたくないらしいね。

まあ、僕もそういうのは嫌いじゃないけどさ。


気を取り直して、今回の仕事の報酬を見てみようか。

遠ざかっていく彼を見送りつつ、置いて行ってくれた物に

目を向けてみると……ああ、これ配達用の鞄をそのまま置いて行ったんだ……。


柵の上から飛び降り、気にしないで拾い上げるとそれはかなり軽かった。

軽いということは多分クレジット札や小型の装備品が入っているのかな?

こういう僕たち飛行種族のことを分かってくれている選定はとてもうれしいね。


で、中を開けてみるとすぐにその正体は分かった。

まず、クレジット札が……いやかなり多いね?


えぇと、大雑把に数えても4000万クレジット……これなら

連合領での買い物には当分困らないかな。

両替すれば王国でも色々買えるし、現金はやっぱりありがたいよ。


最新の装備品を買い漁ったりしなければそうそう使いきれない額だしね。


で、残りの品は……防壁発生装置?

説明書も一緒についているし読んでみよう。


ふむふむ、正式名称は "Mk.47 表面電磁防壁"

……ということは連合製の電磁強化装甲に使われている物かな?

確か、電磁気を使って衝撃を減衰させたり

装甲材の結合を強めるような効果があったはず。


このタイプだと多分シャッターシールドと

干渉しないから併用できるし、これもなかなかいいものだ。

動力源が固形マナであることを考えなければ完璧かな。


……念のため連合領を離れるときは交換用のパワーコアを買っていかないと。


さて、鞄の中身はこれだけみたいだし町に戻ろうか。


あっ……中身はいいとして入れ物――鞄本体はどうすれば……?


====


とりあえずは報酬の品が入っていた配達用の鞄を

東門の職員に引き渡して、僕は再び町へと戻る。


一応忘れ物だと言っておいたけど、まあ処理は向こうに任せよう、


傭兵ギルドは当分混雑したままだろうし、

せっかく大量の現金ももらったんだから買い物でもしようかな?


雑多な消耗品も改めて店を覗いてみれば新型や

改良型が出ているなんてこともあるし、悪くはないと思う。




今僕がいるのは東門から入ってすぐの大通り。

何度も訪れたことのある馴染みの場所と言ってもいいかな。


この町に滞在していた時間はそれほど長くはないけど

僕に必要な施設というのは大体ここにあるから。


そんな場所を今回は歩いて回る。


移動距離が短いのなら飛ぶよりも歩く方が楽なのは当たり前だよね。


で、しばらく歩いてみて最初に入ったのは

傭兵向けの装備を扱っている店だ。

確か前に入ったことがある。


店内にはそれなりの数の客がいて、そして皆なかなかに重装備。

電撃系や光線系の呪文投射器を持っている者が多いかな?


まあ、気にせず僕も品ぞろえに目を通してみよう。


中央の大きな棚に展示されているのは連合防衛軍で採用されている

コイルライフルみたいで、許可証があれば一応購入できると説明があるね。

値段は相応に高いけど。


……185万クレジットはよほど儲けている傭兵じゃないとなかなか手が出ないよ。

なんなら弾倉と飛翔体は別売りだし動力のパワーコアも要る。


こう考えると、回収した遺物をそのまま使える僕みたいな

探検家は装備が安上がりで済むともいえるのかな?

……いや根本的な危険度が違うか。


そんなことを考えながら他の商品も見て回る。


反発防壁装置、呪文投射器用の刻印盤の単品売り、

高速治癒剤に破砕水晶……。本当にいろいろなものがあるよ。


さて、これで一通り見たかな? ずっとここにいるのも

もったいないし次の店に行こうか。


二番目に立ち寄った店は探検家向けの装備を取り扱っているところで、

前に消耗品の補充の時に来たところとはまた別の店。


僕たちが必要とする一通りの品は当然揃っているけど、

この店はどうも連合製じゃなくて王国製の装備が多いみたい。


それもあってか液化マナと格納するためのマナシリンダーも売られていた。

これはありがたいね。尻尾に付けた閃電放射器も何発か発射したし買っていこうか。


中身入りのマナシリンダーを買い物かごに入れて、他の商品も確認してみる。

その中で僕が気になったのはこれかな。

この、吸着の刻印を利用して壁を登れる籠手と具足。


人間用だから僕には合わないけどかなり便利そうに見える。

まあ人間は体重の割に力は強くないから

登るのには苦労するだろうけど、面白い装備だね。




ここも見終えたからマナシリンダーの分の代金を払って次の場所へ。

実はこの町に来てから少し気になっていた店があるんだ。


東門から続く大通りをまっすぐ進んで中心街との境界辺り

まで来た場所にある妙に高い建物の上層階にある店がそれだね。


しかもここ、階段がつながっていないから

飛行種族じゃないと入れない。ご丁寧に着陸用の足場もあるし、

間違いなくその手の店だよ。


軽く飛び上がって発着場から中に入ってみる。

……やっぱり思った通りだ。ここは飛行種族向け装備の専門店だね。


「いらっしゃい、セルンさんだよね?

こんな変なところに来てくれるなんて嬉しいよ」


そして店に入ってすぐ声を掛けてくれたのは

店主を務めているらしい雄のグリフォンだった。


羽毛の模様や目の色からすると多分家系はラターかな。


「いや、階段のない上層階に発着場付きで構えられた店なんて

気になるじゃないか。飛行装具は自前のがあるとはいえ覗いておきたかったんだ」


「はは、まあゆっくり見ていってくださいな。うち、品ぞろえには自信あるんで!」


なんとも陽気だね彼は。

じゃあ、見せてもらおうかな。


品ぞろえには自信があるという彼の言葉の通り、

この店に置いてあるのはどれも見慣れないもので、

どれも製造されたばかりなのか埃一つなく輝いている。


エンジンタワーで作られた試作品とか

少数生産品を回してもらっていたりするんだろうか。


「確かに、普通じゃ売っていないようなものばかりだね。興味深いところだ」


「そうでしょう? さて、何か気になるものはあります?」


自信満々の彼は真っすぐに耳を立てながら話す。


「あれ? お客さんだ。 珍しい……って、もしかしてセルンさん?」


――そんな彼の後ろのスロープから降りてきたのは

従業員らしきワイバーンだ。


たぶん、細かい作業の担当かな。二足歩行な分

僕たちワイバーンの方がそういうのは向いているから。


「そうだよ? ……確かに僕はいろいろと噂が出回るような

個体かもしれないけど……普通に接してくれると助かるかな。

正直参ってしまうよ」


「ああ、えーと、んじゃ俺はじっとしてますんで」


そう言うと彼は壁際に移動して距離を取ってくれた。


さて本題に戻ろうかな。


「えー、気になるものと言えば……僕としてはこれかな。この"鋼烏"というの」


僕が翼の指で指したのは店に入って右側の隅に盾向きで置かれている

閃電放射器と槍の複合武器に魔工噴進機関を取り付けたような装備だ。


店主も助手の彼もそれに視線を向けたのちに納得の表情を見せている。


「あー、やっぱりそれ気になりますよね?」


「それっすか……」


この感じだとちょっと癖のある装備って感じかな?

説明書きには"遠隔誘導飛翔体"とあるから、便利そうに思えるんだけど。


「なに? そんなに妙なものなの? これは」


まあ詳細は聞いてみればいいね。


「えー、それめちゃくちゃ操作が難しいらしくてですね、

本来飛行機械の後席から専門の操作員が制御するものなんすけどね?」


「わけあってうちの商品として入ってきちゃったんですよ」


……なるほど。

渋い表情を見せる二個体の気持ちはまあなんとなくわかったよ。

扱いに困る品を押し付けられて、なかなか売って処分するのも難しいと。


「ふむ…………。とりあえず、どんなものなのか試してみてもいいかな?

構造からして遠くの敵に電撃を浴びせたり刃の部分で体当たりするもの

なんだろうし、なかなか可能性は感じるのは確かなんだ」


僕がそう言うと、二個体は互いに顔を見合わせる。

そして少しの間の後意見がまとまったみたいだ。


「ええ、大丈夫ですよ。やっぱりこういう

独特な装備は買う前に試さないとですからねー」


「えっと、それじゃいったん店の外まで行きましょっか、

さすがにここは狭いんで」


まあ、そうだよね。飛ぶものなんでここじゃ試せない。


この"鋼烏"を持って外へ出る二個体の後に僕も続いて作り物の青空の下へ。


さて、どんなものかな?

さすがに武器は試せないけどどうやって操作するかの確認はできるはずだね。


[場所: エンジンタワー]


ロカウルの中央省庁複合施設を取り囲むように配置された

研究機関を内包するタワーのうちの一つ。工学 (Engineering)の頭数文字から取り名付けられた。


管轄する分野が異なるものの、基本的な役割はアークタワーをはじめとしたほかの"タワー"

と同様である。内部では通常、戦闘用ゴーレムや飛行機械などの実際に稼働する機械類の

研究開発が行われている。個人携行装備なども同様である。


[種族と文化: グリフォンの主要な家系]


連合領中央部の険しい山脈で隔てられた高地に起源を持つグリフォンたちの社会には

大きく分けて5つの有力な家系があり、かつてはそれぞれが家長の元に領地を有していた。


以下がその有力な家系の一覧である。


1. ラター / Latah

2. セン / Sen

3. ヴォクス / Vox

4. ザー / Zarr

5. ツィル / Zir


[技術: 思念入力]


最新の魔術解析によって発見された"Utilities.Input.ThoughTracing"を利用することで

実現できる高度な魔術指令入力技術。術者の思考やイメージを直接機械の姿勢制御に使用する

事が可能であり、人型種族による二足歩行型ゴーレムの操縦性向上や、飛行種族が用いる

魔工噴進機関の推力制御の応答性改善やより精密な補助制御翼面操作の実現など

様々な面での活用が見込めるため現在多数の魔工技師が研究開発を進めている。


一方で入力内容が抽象的すぎることもあり、

非有機的な挙動の制御への適正は極めて低いという欠点も存在。


コメント:


ちなみにセルンが使っている増加肢である空洞の腕は別のインターフェースで動いており、

こちらは"Utilities.Input.VirtualLimbs"というものです。こちらは身体を実際に動かそうとする際の

神経信号を魔術指令に変換しているので操作対象の構造が使用者の身体構造と離れていればいるほど

操作が難しくなります。また、自分の身体を動かしながら

増加肢も同時に操作する場合相当な慣れが必要。


思念入力では例えば機械が次に移動すべき地点の座標を術者の思考から合成しているのに対し、

こちらは神経信号を駆動系への入力値として変換している感じ。


機能がかぶっているのは確かなので用途と適正で使い分けるものですかねまあ。


そのほか:


鋼烏がどういうものなのかは次回触れます。

遠隔誘導飛翔体という点と、閃電放射器に加え

直接攻撃用の刃が取り付けられているという点で察せるとは思いますが。



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