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存続限界点: 朽ち行く世界と翼ある探検家 / Hard Limit: Decaying Reality and the Winged Explorer  作者: 核分裂断片
000 鉄と砂漠と: 砂に埋もれた記憶たち / Sand and Steel: Buried Memories of the Badlands
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#0020 任務完了としばしの安らぎ / Tranquility After the Operation.

いろいろ忙しかったので遅くなったうえに短いね。

お話的にはようやく最初の章が終わって、次に向けて進み始めるころです。

技師のケーリムと合流してからが第2章開始といったとこでしょうか。


なのでしばらくは平和で特に大きなことは起こらないパートが少し続きます。

その分アーコロジー内の風景の描写を詰められればと……。

さて、昇降機、トラム、昇降機と何度も待たされて

ようやくたどり着いた場所がここ。


ロカウルのすべての統治機能が集約された中央省庁複合施設の地下1階。

都市国家を動かす二つのグループの内の片方である科学議会の議場だね。


呼ばれた理由というのはとても単純で、

僕が提出した第二の文明の地下施設、物流ステーション イプシロンの

調査報告書の内容に関する直接の聞き取り調査だ。


できる限り詳細に書いたつもりではあるけど、

当然議会が興味を示すすべての事項を網羅できているわけではないし、

報告書はあくまで事の重要度の判断基準にはなっても

最終的な決定の基準にまではならない、ということ。


「ようこそ、お待ちしていましたよ、セルンさん」


議場の出入り口まで歩いていくと、施設の職員が出迎えてくれた。

小さくしなやかな身体、全身を覆う暗い色の毛皮に大きな三角の耳。

間違いなく彼はフェルツェだね。


「できるだけ早く来たつもりだったけど、遅くなってしまったかな?」


正直なところを言うと、アシャーがわざわざ直接書類を届けに来たから

重要なんだと思ってそのままタワーに帰る彼の後を追ったわけだけどね。


その書類には実際"できるだけ早く来い"という旨が書かれていたし、

間違いではないだろうけど……僕は公的な場所に呼び出されたことが

ほとんどないからどう対応すればいいかわからない部分は多いんだ。


「いえ、予想よりはるかに速いご到着だったので

こちらとしても少し驚いていますよ。ではこちらへ」


特に表情も変えず淡々と話す彼の案内に従って、僕も議場に入る。

……科学議会というものの存在は知っていたけど実際にその場で話すことになるとは。


でも、今回見つけたものは僕が探検家としてやってきた中で

間違いなく最大の、最重要の発見なんだから初めて

こういう場に出ることになるというのも当然といえば当然か。




――通路を抜けた先はそれほど広くはないけど狭くもない、

議場というよりはどちらかと言えば会議室といった方がしっくりくる。

そんな空間だった。


部屋の中央には大きな半円形の机が置かれていて、

すでに7個体の科学者が席についている。


いつ到着するかわからない僕のためにずっと

この部屋にいるわけにもいかないだろうからね。

まだ出席していないものがいることは特に気にならないかな。


急な連絡だったから僕としても予定を組んでいる暇なんてなかったし。


「やあ、待たせてしまっていなければいいんだけど。

とにかく僕は質問に答えるまでだからあとはそちらに任せるよ」


部屋に入ったら前に出て皆に挨拶をする。

出席者は種族も年齢もばらばらで、

今ここにいる中だとやはりフェルツェが多いかな。


「いえいえセルン殿、こちらとしてもこんなところまで

呼び出してしまって申し訳ない限りで。議会を代表してお詫びいたします」


その中で最初に口を開いたのは

僕の真正面の席についている雄のフェルツェだ。


声からして少しばかり高齢で、種族の差はあっても

他の出席者と同じくらいの肉体年齢に感じる。


彼が椅子から立ち上がり軽く頭を下げると、

他の個体もそれに倣い再び全員が席に戻った。


……わざわざ謝ることはないんだけど、本来どこにも属さない

僕みたいなフリーランサーを気遣ってくれてのことかな。


なにかと軍や公的機関と協働することは多いから

僕自身もたまに感覚が狂うけどね。


「気にしなくていいよ。僕としてもこの町やこの国、

そして二国間の同盟に対しても貢献できるわけだから光栄だよ」


実際、僕がこの探検家という仕事をしていて

最も強く価値を感じることの一つがこの、

"世のためになっている" という事実なんだ。


旧文明の謎や神秘に触れられて、自分で見て感じて

過去の歴史を掘り返すことができるのももちろんそうだけど、

僕が活動を続けられるのはこのおかげだと思う。


そうじゃなければあんな危険な場所に好き好んで飛び込んだりはしないからね。


「そう言っていただけるとこちらとしてもありがたい限りですな。

では本題に入りましょうか。まだ数名出席予定の者がおるのですが、

彼らもじきに到着するでしょう」


……そして、質疑応答が始まった。


========


長くしゃべりすぎて喉が渇いたよ。

最初は特に何事もなく淡々と報告書の内容に関して詳細や

補足情報を説明していたんだけどね……やっぱり彼らも科学者だから

どうしても熱くなってしまって。


僕もそれに乗って話しすぎてしまったんだ。




まあ、みんなの反応自体は良好だったかな。

発掘を強行することによる利益や第二の文明の地下トンネル網への

接続が意味するさらなる発見。


カリアのチームが調べていた地下への入り口の分布図と

あそこで見つけた見取り図がほぼ一致することも報告していたけど、

おかげで地図作成に予算を追加で割り当ててくれるように

なったみたいだしなかなか先は明るそうに見えたよ。


みんな僕が持ち帰った装備品の現物にも興味を示してくれて、

過去に見つかった遺物との共通点や関係性についても議論が

始まったりと……科学者として抑えられない気持ちというのがあったんだろうね。

なんというか、場の張り詰めた雰囲気とは正反対だった。


本当に、面白い集団だよ彼らは。

公開できる範囲で説明してくれた資金に労働力配分を考慮しても

砂岩の傷跡調査計画との競合は最小限で済みそうだったし、

はっきり言って一気に心配事が吹き飛んだ。


そして同時にとても疲れた。

一度宿に戻って休もうかな?


まあ、なんにせよ今日はゆっくり過ごす。これは確定だね。


====


ABSOLUTE TIME: +74996 193 08:30:00.000


議場での質疑応答という名の実質的な研究バカの集会に出た後、

僕は真っすぐ町へ戻った。


喋りすぎて疲れたからねぇ。トラムに揺られている間もぐったりしていたよ。


正直アークタワー側から地上に出てからの空路の方がいくらか気持ちが楽だった。

飛行装具越しとはいえ風に乗るのは心が落ち着くからね……。


そういうわけでその後は宿の部屋に戻ってのんびり過ごして今に至る、というわけさ。


さて、これでようやくすべての仕事から解放されたわけだし

今日はいつにもまして自由に行こうかな。


まずは昨日できなかった報酬の受け取りに。

傭兵仕事の報酬をギルドの支部で受け取ったら、

今度は東側の壁の上でアシャーと合流。


カリアたちに頼まれていた件の報酬をもらってあとは好きに過ごすだけ。


ケーリムと連絡が取れるまではもう少しかかるだろうから

また傭兵の仕事を探そうかな?


それか町の外を少し観光するのもいいかも。


とにかく、今言えるのは何にも縛られない暮らしは最高ということだよ。

これに関しては群れに属さない野良の同胞たちがうらやましく思えるね。




はぁ、そろそろ起きようか。

時計の針が指しているのは8時半――

この時間帯なら店も施設も大半はすでに開いているかな?


少しだるさが残る体を起こして寝床から立ち上がる。

いつもなら座ったまま寝るんだけど昨日は

疲れていたせいで床に倒れこんでいたみたいだ。


そうしたら部屋を出て、1階のロビーへ。

ここ数日はほかの利用客の姿をよく見かけたけど

今日は誰もいないみたいだね。店主の彼を除いて。


まあいいや、部屋の鍵を預けたらさっそく出かけよう。


宿を出たらもうそこはいつものロカウルの景色だ。

中心街では科学者や官僚たちが積み上がった仕事に

押しつぶされそうになっている中、町は今日も平和な限り。


……僕ももっと別の方向を目指していたのなら

彼らと同じように平和な日々を送っていたのかな?


――おっと、そんなことより仕事の報酬を受け取りにいかないとだ。

周囲の安全を確認したら、僕はいつものように空へと上がる。


目指す場所はもちろん傭兵ギルドの支部。


====


短い空の旅を終えてギルドの支部が面する通りの

上空までやってきたわけだけど……なんだろう? いつもよりにぎやかだね?


空から見下ろして分かる限りだと旅をするのに向いた

軽装の防具を着こんであからさまに武器を携行した集団が

傭兵ギルド支部の前に集まっている。


つまり彼らは傭兵というわけだけど……ああそうか、わかったぞ。

合同調査計画中の警備業務関連の募集が始まったんだ。


こういう大きな国家事業の場では何かと

陰でよからぬことをたくらむ連中が出てくるからね。


やはりこういう時は金さえ積めばすぐ雇える傭兵が頼りになるんだって、

実際いろいろなところから何度も聞かされたよ。


これだけ大勢集まっているんだから報酬はかなりおいしいんだろうねぇ。


まあとにかく今の僕には関係ないことだ。早く受け取りを済ませて、

今度はカリアたちからの仕事の分の報酬をもらいに行こうか。


さて、降りられる場所はあるかな?


道路の向きに沿って見渡して、降りられる場所を探す。


あー、これは無理だね。車道になら降りられるけどさすがに危ないし、

素直に少し離れた場所へ降りようか。


仕方ないのでそのままギルド支部の建物を通り過ぎて少し奥まで進み、

群衆がまばらになり始めるところを狙って着陸した。


昨日はあんなに静かだったのに、

大規模作戦の募集がかかった瞬間これなんだからねぇ。


それにしてもすごい行列だよ――ロカウルの傭兵ギルド支部は

そんなに大きなところじゃないからこれだけ集まられたら

職員もたまったもんじゃないだろうに。


そして当然僕の方もたまったものではないね。

これだと報酬の受け取りだけで日が暮れてしまいそうだよ……。


はぁ。後回しにして、先にアシャーから報酬を受け取ろうか。


[場所/建造物: ロカウル中央省庁複合施設]


"Central Government and Administrative Complex" という名の通り、正式な名称は

"中央行政及び管理複合施設" となる、ロカウルの統治機能の中心。


全ての行政機関がこの一つの建造物に集約されているため、

防衛上の理由により地上入口を持たないのも特徴である。


本施設へのアクセスは都市基礎構造体の下に

整備された輸送トンネル網を経由してのみ可能。


施設の外壁は厚さ15メルハ (約12m)にもなる高強度の多層複合素材が

使用され、大型火砲や戦術級攻撃魔法にも対抗できる性能を有する。


また、CGA複合施設は長期間の籠城戦を想定し、

建物自体が小規模なアーコロジーとして機能するよう設計されている。


コメント:


科学議会の連中は研究熱心な奴ばかりで仕事より自分の研究を優先したがるレベルの者もいて、その関係で議員の地位を押し付けあう始末だったりします。偉い地位に就くと研究に割ける時間減るからね(統治業務の割合が増える)


中央省庁複合施設はそれ自体が小さなアーコロジーなため、

必要ならエネルギーが供給できる限りいつまでも立てこもりができます。

内部には食料生産、空気、廃棄物リサイクル設備があり、外部からの補給は不要。


ほか:


公的な場所に呼ばれることが滅多にない → 軍や公的機関と協働することは多い


というのは要するに依頼主が軍や政府の場合公にできないような任務のことがほとんどなので

正式に行政施設に呼び出されることはほとんどないということですね。

フォーマルな場所でのお行儀のいい振る舞い方は心得が無いという感じ。


ハフィルからの依頼は彼個人の依頼という面が強いのでいろいろ事情が違います。


なお、この世界は合理主義的な考えの影響力が強い分

身分に合わせた言葉遣いなどはあまり重要視されておらず、王族相手でも

"好きなように話したらええんとちゃう?"くらいの扱いです。

むしろいちいちそういう部分に腹を立てる人間ほど精神が未熟だと捉えられる部分も。


なので丁寧な話し方をする人はそうしたいからやってるだけです。

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