#0019 大きな進展 / Great Progress
会話シーン苦手は相変わらずです。
もうちょっと簡潔に書いてもいいんですかね……?
どれくらい動作を描写すべきか、主観的な表現メインにするか、
誰かに語るような客観表現も交えるべきかなどいまだにいいバランスがつかめていません。
観測者視点ならもうちょっと一貫させやすいんですが……。
少しして、昼食をとる研究者たちで賑わっていた
この階も少しずつ落ち着きを取り戻してきた。
ぼちぼちとみんな自分の持ち場に戻るころだね。
それはカリアたちも同じみたいだ。
「ごめんね、待たせてしまって」
「さて、話を聞かせてもらうわよ、セルン」
そんな中しばらく待っていると、
カリアとクウェイスが戻ってきた。
これで本題に入れるけど、二個体ともまだ気持ちを
抑えきれていないみたいですこし挙動が変だね。
まあとにかく詳しい話は宿舎についてからするんだし、
とりあえずは移動しようか。
「うん。じゃあ君たちの部屋までついていくよ」
僕はそう答えて二個体の後を追い、チームの宿舎へ向かう。
相変わらず理由はわからないけど昇降機を使わずに
階段で下の階層まで降りて、少し歩けば到着……と行きたかった。
「あ、そうだあえてさっき聞かなかったんだけど、セルン、
その背負っているライフルみたいなものはもしかして回収した遺物なの?」
後ろを歩く僕の方を振り向き思い出したように
聞いてきたのはクウェイスだ。
確かに、あの時この件まで話していたらいろいろとややこしく
なっていただろうし気を利かせてくれていたんだね。
でも、ここで歩きながら話すことはないんじゃないかな……。
「そうだよ。大きくて重いし回収するかは少し悩んだんだけどね。
まあ詳しいことは向こうで話すから」
クウェイスにはそう返して、僕たちはそのまま宿舎へと向かった。
「昨日来た時よりは少しすっきりしてるね」
──僕が部屋に入ってまず初めに思い浮かんだ感想がこれだった。
カリアたちが実際にどういう仕事をしているかというのは
見ているわけではないから知らないけど、少なくとも一段落はしたのかな?
それに、昨日は部屋でぐったりしていたグリフォンの
アシャーの姿もないから、彼は出払っているらしいね。
「まあ少しは仕事の残りも減ってきたからねぇ」
「すーこーしーは、ね。クウェイス、まだ細かいのがたくさん
残ってるの見なかったことにしないでくれる?」
ニヤニヤしながら話すクウェイスにカリアはあきれ顔を見せた。
僕が持ち帰ったものでまた仕事が増えてしまわないか、
今から少し不安になるよ。
「ははは、君たちの方もいろいろあったんだね。さて、
僕が見つけたものについて話そうか。えぇと、どこで話せばいいかな?」
ひとまずは部屋の中央の机の前まで行ってみてカリアと
クウェイスに聞いてみる。人型種族の場合やっぱり座ってゆっくり
話せるほうがいいんじゃないかな?
そう思うけど、この部屋を見てみると意外なことに大勢で集まって
ゆっくり話せるような場所はないみたいだ。
「あー、確かにそういえばこの部屋椅子が少なかったわね。
まあ個人用の椅子を持ってきましょうか。
クウェイス? あなたも自分の持ってきて」
「はいよ」
僕はそう決めかねていたんだけど、そうか。
自分の机から椅子を持ってくればいいのか。
クウェイスも彼女に言われて椅子を取りに行き
中央の大きな机の前に置く。
これでようやく落ち着いて話せるね。
まあ僕は立ったままだけど。
「じゃあ、まずは君たちから頼まれていた品について話すよ」
全員揃ったら、僕は二個体の前で報告を始める。
頼まれていた品──つまり記憶媒体のことだね。
実際には持って帰ってきてないわけだから、
最初に説明する必要があるのは持ち帰らなかった理由だ。
「先に探索の結果から言うと、僕はかなりの数の記憶媒体を見つけは
したんだけど事情があってあえて持ち帰らなかった」
「……ふむふむ? 事情ねぇ。どの類のだろう?」
「重すぎて持って帰れなかったとかではないのよね?
そうなると装置から取り外すとまずいからかしら?」
あえて持ち帰らなかったという言葉にクウェイスは首を傾げ、
カリアも疑問を浮かべた。
まあこれに関しては現物を見てないとなかなか予想は難しいよね。
「うーん。まあカリア、君の考えが近いんだけど詳しく話すとだね」
詳しく説明すると少し長い話になるし、
一呼吸置いて二個体にも長話を察してもらい──
「僕が現地で見つけたものは、単なる独立した記憶媒体じゃなくて
複数の記憶媒体をまとめて繋いだ大掛かりな機械だったんだ」
僕は手帳に簡単に写しておいた絵を見せながら続ける。
「でも、それだけ大きな機械から特定の記憶媒体だけを抜き取ってきて、
ここにある読み取り装置で中身を見たときにちゃんと必要な
情報を適切な位置から読めるとは限らないよね?
例えば、何百ページもある本からそのうちの数十ページだけ
むしり取ってきて読んでも、肝心な情報が欠けていたり、
物語の流れがつかめない可能性がある。
あえて回収しなかったのはこのためだね」
「でも、だからと言って一切収穫が無いわけじゃないよ。
最初に僕が君たちに最高の知らせを持ってきたというのは
ここに写してあるもののことなんだ」
そして、さらに手帳のページをめくって件の施設の
見取り図の写しを広げ、二個体に見せた。
「待って、これは施設の見取り図? 随分と精巧ね?」
「あー、読めたぞ。稼働している機械を使って施設の情報を
探ったんだね? つまりそうなると……えぇっ?」
どちらも目を丸くして驚いているけど、そんな中でクウェイスは
いち早く僕の発見の正体に気が付いたみたいだ。
「そう。それはもう大発見だったよ。最高の知らせというのは
これなんだ。生きている機械を見つけて、そこから施設の情報を
閲覧できることも分かった。しかもそれだけじゃない。
見取り図を見ればわかるけど、あの穴から入れる地下施設は
ほかの施設とも大規模な輸送トンネルで繋がっていて、
遠く離れた場所にあるほかの施設を探索する際の足掛かりに
できるかもしれない。そして極めつけはね、ほぼ無傷の状態の
貨物コンテナが多数保管されていることも分かったんだ。
ちょうど今僕が背負っているライフルもその中から回収したものだよ」
カリアとクウェイスが空気を読んで黙っていてくれる間、僕は残りの事項も一気に説明した。
手帳に書き留めておいた倉庫目録の内容も見せながらね。
「……いや、セルン。本当に君の言った通りだよ。
無傷の状態の遺物が保管された倉庫だって? 夢のような話じゃないか!」
そうして僕が話し終えると、クウェイスも
最高の知らせだということに納得してくれた。
……耳が垂れているよ、クウェイス。一周回って落ち着いたのかな?
「そうね、これだけの発見があったなら、科学議会に持ち込めば
間違いなくかなりの人員を割いてもらえるわね。そうなれば、
仕事自体は増えても一人当たりの負担は減る! ほんと、
噂通りなのね、セルン。……はぁ、今後の動向が楽しみで仕方ないわ」
一方でカリアの方もこのことの大きさを理解してくれた。
まあ彼女の場合はどちらかと言うと労働力が増えて
仕事が楽になることの方が嬉しいみたいだけど。
とにかくこれだけ価値のあるものが眠っていることが分かれば、
カリアの言う通り議会も積極的に動けるのは間違いないよ。
これで遺物や当時の知識の発掘が進めば他の遺構を探索する際にも
大きな力になる。僕が遺物を活用して古代の機械兵器と渡り合っているようにね。
そうなれば砂岩の傷跡の調査にも役に立つはずだし、
まとまった量の古代の武器があればいざ共和国と
戦争になったときも有利に立ち回れる。
……傷を負った価値は間違いなくあったよ。
……はぁ。そうだった。怪我をしたんだ。冷静に考えれば、
あそこまで酷くやられたのは初めてかもしれない。
得られたものは大きいけど、同時に今後さらに深く潜るとき、
他の地域でまた損壊の少ない施設を探索するとき、僕はうまくやれるのか……
正直、少し不安だ。嫌だな。今この場で考えるべきことじゃないのに。
「まあ、見つけたのが僕というだけで価値のある遺物が
あの穴の下にあったというのは変わらないから、
遅かれ早かれだったとは思うけどね」
一瞬悩みこんでしまった僕は、少しでもその気持ちを
ごまかすためにその場しのぎでそう話した。
「そんな、それはそうかもしれないけど君じゃないと
あそこをまともに探索するのは厳しかったでしょ。
僕たちは飛べないんだから。でもまあこれは本当に期待だねぇ」
それに対して、クウェイスは優しいね。
正直なところ、僕はワイバーンの、もしくは飛行種族の探検家という
今までになかった隙間を縫って残り物をさらっているに過ぎないのに。
まあ、そんな漁り屋でも旧文明の研究に
貢献できているのは確かなんだ。考えすぎかな。
「えー……あ、そうだセルン。この件についてちゃんとした報告書と
資料の方作ってくれたりしない? ああもちろん報酬の方は
上に掛け合っておくから、ね?」
──そんな考えすぎていた僕を叩き起こすようにして、
カリアは議会に提出したいのか報告書の話を出してくる。
「へ? ああ、まあそれくらいなら。どうせしばらくは
次の探索には行けないんだし。なにせ手痛いのをもらってしまってさ」
それを承諾しつつ、僕は"苦笑い"して胸当ての傷を指さして見せる。
もちろんヘルメット越しでは見えないし、人間の見せる表情とは全く違うけどね。
でも雰囲気は伝わったと思う。二個体ともこの傷を気にしてはいたようだし。
「そうか、やっぱりそれ施設の防衛兵器に
やられた跡だったんだ。いや、おっかないな……」
正面の装甲を貫通して多孔質素材に深く空いた穴を
改めてよく見たクウェイスは一瞬毛を逆立てた。
「大変な目に遭ってきたのね。覚悟はしてたんでしょうけど」
カリアの方もクウェイスと同じように僕を心配そうな目で見ているよ。
危険と隣り合わせの仕事だから仕方ないけど、
昨日まで当たり前のように顔を合わせていた知り合いや同僚が
次の日から一度も姿を見せなくなるなんてことはざらにある。
今回みたいに、危険な目に遭った痕跡が残っていたら
尚更心配になる。嫌な話だね。
「正直に言うと、本当に命の危険を感じたよ。
でも、少なくとも僕がたどり着いた場所までの経路の安全は
確保してあるから、もし後続の調査隊が派遣されるなら
その時は安全に出入りできると思う。
段差や亀裂がある部分にはロープを張ったし、
永久照明もたくさん落として明るくしてきたから」
──だからこそ僕は後から同じ場所を探索する他の探検家や科学者のために
こうやってできるだけ道の安全を確保しながら進むんだ。
僕は翼を左右に広げ、ため息をつきながら話す。
「危険な目に遭ってるのに後続のことまで考えて
動けるのってなかなかすごいと思うけどなぁ」
「ま、とにかく、君たちの頼みごとに対する報告はここまでだね。
あとは僕自身の事情と、調査結果の詳細の方はこの町にいる間に
探検家ギルド経由で提出させてもらうから。僕は一度街に戻るよ」
感心するクウェイスのことは置いておいて、そろそろお開きにしようか。
依頼の品そのものは持って帰ってこれていないわけだし
今ここでできることはそれほど多くないから。
「……そうね。あまり長く引き留めるわけにもいかないわよね。
でもありがとう、セルン。きっとこれで人手が増えていろいろと楽になる」
「うん。本当に、少し話を聞いただけでもかなり興奮したよ。ありがとう、セルン」
「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。君たちの仕事がうまくいくことを願って。」
そうして二個体に別れを告げると、僕はアークタワーを出て一度街に戻ることにした。
はぁ……ナノシーラントで応急修理をしたおかげで貫通孔から
吹き込む風はなくなったけど、胸当ての穴が風に乗るのを邪魔して
きているのは相変わらずだね。翼の違和感が無くなったせいで返って目立つように
なった気さえする。もういっそのことこっちの方も埋めてしまおうかな。
どうせケーリムに直してもらうんだし応急修理は
いいかと思ってたところにあれなんだから。
……まったく共和国というのは。
[文化: 種族ごとの個体数の数え方]
一般的に、個体数の数え方は人型種族の場合は人間、ゴブリン、フェルツェ問わず"人"。
ドラゴンとスピニアは"匹"、グリフォンは"頭"、ワイバーンは"羽"と数えるが、一貫してただ単に"個体"と呼ぶ層も一定数存在している。特に、ワイバーンの内コロニー暮らしが長いものは
同族のみ羽と数え、それ以外はすべて固体と数えることが多いという特徴がみられる。
[交信技術: 発光信号]
発光信号は、魔術信号による複雑な遠隔通信に変わり最低限の設備で実行可能な
遠隔交信手段として古くから用いられているものである。
赤と緑の光の点滅パターンによって行われ、赤は0、緑は1に対応し、
6桁の2進数で表されるコード表に従い点滅させることで構成される。
当然ながら正確に読み取るためにはある程度の訓練が必要。
コード表:
a → 000000 b → 000001 c → 000010 d → 000011
e → 000100 f → 000101 g → 000110 h → 000111
i → 001000 j → 001001 k → 001010 l → 001011
m → 001100 n → 001101 o → 001110 p → 001111
q → 010000 r → 010001 s → 010010 t → 010011
u → 010100 v → 010101 w → 010110 x → 010111
y → 011000 z → 011001 0 → 011010 1 → 011011
2 → 011100 3 → 011101 4 → 011110 5 → 011111
6 → 100000 7 → 100001 8 → 100010 9 → 100011
(space) → 100100 . → 100101 , → 100110 ! → 100111
? → 101000 + → 101001 − → 101010 × → 101011
÷ → 101100 = → 101101 ' → 101110
コメント:
基本的に2進数の連番です。
2進数と16進数は魔術を学んでいる者にとっては割と馴染みのあるものなので
色々な場所で使われています。(前も書きましたが、それぞれの
魔術指令ごとに16進の番号が割り当てられている。)
そのほか:
セルンは右翼を負傷した際初めて死の危険、もしくはワイバーンとして生きることの終わりが頭によぎったようです。薬で治せる程度の傷だったからよかったものの、もし翼がもげるようなことがあれば二度と自由に空を飛ぶことは叶わなくなる。そんなことを考えかなりのショックを受けていました。
義手、義足があるわけなので当然義翼とでもいうべきものもありますが、どうやっても生身の翼と同じだけの機能は再現できず、そもそも神経が通っていないため性能や重量バランスが同じでも本物と同じ動きは出来なくなります。このことから、事故や戦闘の負傷で翼を失ったワイバーンの自殺率はかなり高いとされています。人間が脚を失って歩けなくなるのとはかなり感覚の異なるものというわけですね。
なお、傷を急速に再生させる魔法薬の適用範囲を拡大して欠損した部位を復活させる研究のようなものは普通に行われており、実現すればもう一度やり直す機会というものも生まれるかもしれません。
……こうやって書いてると思うけどやっぱりこの世界技術水準はかなり高いですね。
それはそうと、ここまで読んだ人 (そんなの実在するの?)なら気付いたかもしれませんが、この世界には宗教というものがありません。微妙に宗教味のある名前のシジルム・エーテルヌム (Sigillum Aeternum)もどちらかと言うと思想系であり、共和国も同様に排他主義思想で別に宗教ではないです。
全体としての傾向は技術主義、科学主義的だと言えますね。




