#0011 物流ステーション イプシロン / Logistics Station Epsilon
セルンの素の性格はこんなもんです。
外ではクール目に振る舞っても、
同業者や身内の前だと結構テンション高いところがあります。
あらためて黒い板だった部分に様々な文字、
図形が浮かび上がったそれを観察してみると、
表示部分の手前には、文字、数字に記号が書かれたボタンが並ぶ
楽器の鍵盤にも似た雰囲気の装置があり、その右隣には
二つの押せそうなボタンが付いた箱形の構造に
ボールが半分埋め込む形で取り付けられた装置がある。
この二つの装置がおそらくは操作するためのもので、
使われている技術は違ってもボタンやレバーを使った
魔工機械類の操作盤と似たようなものというのは想像できるかな。
見慣れたアルファベットや記号がたくさん並んでいるから、
文字や数字を打ち込むこともできそうだね?
文字を入れることができる機械……ああ、思い出した。
このボタンの並び、タイプライターと同じじゃないか。
1万5000年以上前のものなのに何故? まあ今は気にしないでおこうか。
となるとこれは多分この機械を使って行う作業中に
文字入力をするもので……右側のこっちは……試しに触ってみよう。
一番目立つボール状の部分に金属製の指先を乗せてみると、
その指が少し滑る。ボール部分が転がって受け流したんだ。
これはやっぱり転がすことができるみたいだね。
でも、特に正面の板に映っているものに変化はないかな?
……いや、違う。ボールを転がした向きと量に応じて、
板に映っている要素の中で十字線のようなものが動いているんだ!
動かせるということは、多分これをどこかに合わせて、
こっちの二つ並んだボタンを押せば何か反応が見られるかも。
ここに映っているものの中で気になる部分といったら、
倉庫目録、施設状態、輸送履歴、職員名簿……
この中だと倉庫目録が気になるよね、間違いなく。
物は試しでとにかく十字線を倉庫目録と題名がつけられた
表のうちの一項目に合わせてみると、どうも十字線を
特定の要素に合わせると十字線ではない別の図形、
今試した部分だと中心を向いた4つの矢印に
変わるらしいということが分かった。
これは多分操作している者にこの部分に対して何かができるとか、
もしくはできることの種類を伝えているんじゃないかな?
さて、続いて十字線を倉庫目録内の項目に合わせた状態で、
ボールの左下にあるボタンを押してみる。
……なるほどね。十字線を合わせてボタンを押すと起こること
──それは選んだ項目の詳しい情報が倉庫目録の右側に
別の枠で表示されるということだった。
ここに書かれている情報は一覧部分にも同じものが小さく
書かれているんだけど、入りきらない部分もあるみたいだから
それを詳しく確認するためのものだね。
詳細情報の枠内に書かれているのは、
"ID" "Weight" "Dimensions" "Content" "Tags"
といったもの。IDって何だろう? でもそれ以外の意味わかるかな。
重さ、寸法、内容と、Tagsの方は多分中身の種類を
整理するためのものだと思うね。僕にとって重要なのは多分内容とタグで、
書かれているタグを見れば目当ての遺物を楽に探せるはず。
目録内の項目を一つずつ見てみようか。
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探してみてわかったことは、ここに保管されているコンテナの
中身の大半は武器、兵器とそれらで使う消耗品といったもので、
他の倉庫にはまた違う種類のコンテナがまとめられているということ。
目録に表示されている"STORAGE 10" の文字の右側に
小さく下向きの矢印があることに気付いてそれを
左のボタンで選んでみたら、その部分が下に伸びて
他の倉庫の名前が表示されたんだよね。
どうやらここから他の倉庫の目録も見れるみたい。
ただ、いろいろな部分を触って試す感じだと多分、
記録されている情報の変更ができるのは
この機械が置かれている倉庫のものだけなのかな?
それ以外の発見だと、施設状態 (Facility Status)と書かれた部分に
十字線を合わせて左ボタンを押せば新しい情報枠が現れて、
項目の名前の通りに施設の今の状態を確認できるというのも見つけられた。
施設状態の表示枠の中にはここを上から見たときの見取り図
のようなものがあって、ちょうど7番倉庫がある部分が
真っ赤に塗りつぶされているから、これはなんとなく意味が分かる。
赤く塗られている箇所はほかにもあってね、
見取り図に書かれた区画の名前で言うと
"REACTOR 01" から "REACTOR 04" までの4区画が
すべて赤くなっていて、"COOLANT STORAGE" もすべてダメ。
"LIFE SUPPORT" は一つを除いて壊れているみたいだった。
そして、もう一つ重要そうな情報として、
黄色い文字で書かれた"[AUXILIARY POWER GENERATOR: ACTIVE]" と
"[EMERGENCY POWER SAVING: ENGAGED]"の表示があることかな。
補助動力発生器……と、緊急動力保持……かな?
多分、補助の動力が動いているのはメインの動力が使えないからで、
動力保持は要するに動力の消費を抑えるための処置が
発動されていることだと思う。
通路に照明がついていなかったり、扉がどれも機能していないのは
このせいかもしれない。でも防衛兵器は動いているわけだから、
重要なものだけを動かしている状態と考えるのがいいかな。
何はともあれだよ。施設の見取り図が使えるのはとてもありがたいね。
見た限りだと倉庫は全部で18個あって、目録の方と見比べてみると
1番から6番までは生活に必要な道具と消耗品の類、
7番から12番までは武器や装備品で、13番から18番までは
薬や医療用の消耗品が保管されていることも分かったし、
これは本当に大きな収穫だよ。
大規模な調査隊を編成してここにあるものを一通り
持って帰ることができれば第二の文明についての研究や
理解だってもっと進むはず! 地面に完全に埋まっていて
存在自体に気付かないような場所にほとんど無傷の
遺物や過去の記録が眠っている可能性があると、これからは地下の空洞や
構造物をもっと効率的に探すための技術の研究も重要になってきそうだね。
……ここまでの部分だけでも大発見なんだけどね、
嬉しいことに他にも見取り図からわかることはまだまだあるんだ。
中でも一番重要と思えることは、ここがトンネル網でほかの同様の施設や、
もっと大きな施設ともつながっているらしいというところ。
ほかの施設の情報までは見れないけれど、
図に書かれているこの施設自体の名前が
"Logistics Station Epsilon"なのを考慮すると、トンネルでつながった
地下施設群の間で物資の供給や保管を管理するための
場所だった可能性が高いと僕は思う。
ついでに、名前にイプシロンとあるわけだから、
単純に考えればこういう倉庫施設は
最低5か所あるはずという推測もできるね。
よし、施設の構造のことはこれくらいにしておこうか。
手帳に見取り図の簡単な写しをとって、
今度はコンテナの中身を調べてみよう。
倉庫目録のそれぞれの項目の詳細表示枠に書かれている内容と
同じものがコンテナ側にもないか探してみて、
もしあればその情報をもとに目当ての種類の遺物を効率よく探せるはず。
唯一の問題はコンテナをそもそも開けられるかどうか、
かな。でも、とにかくやってみよう。
はぁ、ずっと機械の表示部分を見ていて少し目が痛いよ。
それに、鉄の光を使えない状態でこの安全な密室から出るのは少し不安だ。
> BEGIN CONTROL
> TIMER = "30m"
> execute FloatingTorch(2.5, 20, 200, [255,255,255])
> END CONTROL(TIMER)
もう一度魔法で明かりを灯したら、覚悟を決めて部屋の扉を開き、
低い姿勢を保ちながら周囲の様子をうかがってみる。
部屋の外。白い光で照らされた無機質な箱型の空間は、
昨日自分が翼に傷を負った場所とは思えないくらいに静かで、
目につくものといえば床に乱雑に転がったコンテナと、
その反対に綺麗に整列され大きな棚の上に並べられたコンテナ。
そして僕が破壊した砲台の残骸かな。鉄の光で撃ち抜いた3つは
爆発で粉砕されているけど、灼陽で壊したものは近くの壁ごと
跡形もなく消えてしまっている。
とても静かだね。保存状態ははっきり言って今まで見た中で
一番いいくらいなのに、防衛用の機械類は固定式のもの以外動いていない。
やっぱり、動力区画らしい場所が完全に破壊されているせいなのかな。
"REACTOR" という単語はあまり聞き覚えがないからそこが動力源だと
言い切れるわけじゃないけど、でも帝国製の技術で
そんな感じの言葉を聞いた覚えはあるんだ。
まあ、今はコンテナを探そう。
10番倉庫の目録にあるもので僕が一番興味を惹かれたのはこの
"Ls.122 Heavy Laser Rifle" が20個入ったコンテナかな。
"No.38 Matter/Antimatter Battery" というのも一緒に入っているから、
こっちは併せて使う消耗品かもしれない。
Rifleという単語は連合で人型種族用に配備されている武器に
そんな名前のものがあったし、Laserは確か第二の文明で
光線兵器のことを指す言葉だったはず。
それならこの鉄の光とよく似た、ただし両手で持って
構えるタイプの武器の可能性があるよね。
今はちょうどあの機械を動かすために鉄の光の動力源を
使ってしまっているから、新しく武器が手に入るならありがたいよ。
コンテナの詳細枠に書かれていた内容のうち、
他のコンテナと明確に区別できそうな形式の項目は"ID"で、
目当てのコンテナのIDが"0177-05-0A-00000B98"だから、
まずはこれが書かれたコンテナを探してみよう。
そもそもあの目録に書かれていたような情報がコンテナ側にも
あるかを知りたいというのが第一だよ。
そのために、一番近くにある僕が昨日遮蔽物として使った
あのコンテナをよく観察してみる。
大きさは外の通路の幅、高さのちょうど半分くらいで
──これはクレーンで釣り上げたりするためのものかな?
フックを掛けられそうな取っ手もついているね。
……ん? ああ、これだ! ちょうどその取っ手のすぐそばの
小さな四角い枠に目録にあったIDと同じ表示形式の文字列がある!
なら、あとは目録の方で中身を調べて、IDを適当に書き留めておいて
この大量のコンテナの中から探すだけでいいんだ!
もしここまでの僕の考えが正しいなら、
歩兵大隊1個分くらいの装備をここから回収できるかもしれない!
第二の文明の軍用装備をまとまった数用意出来れば大規模な調査も
より安全に進められるようになるし、
もちろん僕が自分で使う装備だってたくさん確保できるよ。
満足のいくまで調べたら、みんなにいい知らせを持って帰らないとね!
コメント:
どう考えても入力機器二つはキーボードとトラックボールですが、それを知らない人物の視点で書かないといけないのでこんな読みづらいことになってます。なぜトラックボールなのかというと、狭い場所だとこっちの方が都合がいいからですね。腕を動かすスペースが一切必要ないので。現実でも軍艦の電子機器類の操作に使われていたりします。これは本体は動かせず、コンソールに埋め込まれている形式。
そのほか:
連合では携行式コイルガンが歩兵の標準装備です。
一方で王国側は通常の携行武器という点ではいまだに自動装填式セミオートクロスボウなので遅れていますが、様々な種類の攻撃呪文を発射するスペルプロジェクターという装備も使用されているので別に火力が低いということはありません。どちらかというと射程不足なので、こういうところは機動力の高い飛行種族がカバーする形ですかね。
帝国はまだ詳しい描写が一切ないですが、すでに核融合炉をも実用化している超大国です。海を挟んだもう一つの大陸の全土を支配していますが、連合や王国が位置する大陸の側とは中立姿勢を保っています。
セルンの言う歩兵大隊とは人数512-1024人程度の部隊のこと。
0b1111 1111 1 から 0b1111 1111 11 人。




