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17/25

#0010 損害評価 / Damage Evaluation

祝: パート0x10


高度な技術を持っていた第二の文明の痕跡を追うのはこのように危険な仕事です。

あと、マイナスを含む日付計算が対応しているツールなどが無くて壮絶に面倒なことに気付いたので今後の時間表記は絶対時間のみにします。月日に分けた表記じゃなくて単一の日数表記の時点で全然使えるのが無い。だからといってこのためにツール自作するのも面倒だよね。

倉庫での戦闘を終えて、

ようやく一度落ち着いて探索を進められるようになった。


でも、張り詰めた気持ちが抜けた瞬間、唐突に右翼に痛みが走る。


平静を取り戻して改めて翼を見てみると……あぁ……。


飛行装具の装甲には完全に穴が開いて、

そこからは少しずつ血と冷却液が流れ出ている。


羽ばたくどころか、少し動かすだけでも痛いよ……。


早めに手当てをしないと間違いなく危ない。

薬はどれだけあったかな。


──とにかく、ここでしばらく休むにしても

こんな目立つ部屋の真ん中じゃだめだ。


部屋の北西の隅を見ると、倉庫の管理室か何かの、

壁と天井で仕切られた小さな部屋がある。


あそこなら少しは安全だと思うし、早く部屋に入ろう。


ああよかった。この扉、壊さなくても普通に開けられる。


今まで通ってきたほかの扉とは違って

機械式の開閉装置が付いていなくて、普通の人間が通れる程度しかない


扉を開いて中へ入ると、そこにあったのは椅子と机、

そしてその上に置かれた見覚えのある機械。


確か記憶媒体を読み取れるものだったはず。

探索中に状態がいいものを見たのは今回が初めてだよ。

……これならここで記憶媒体を見つけた時

すぐに中身を見れるかもしれない。



いや、そんなことは後でいい──傷を早く何とかしないと。


武器や道具は一度ホルスターと装備ポッドにしまって、

足に巻いたベルトから細長い金属製のシリンダーを取り出す。


割れないように丈夫な素材でできた容器の内側には

刻印が彫られていて、充填された希釈液化マナと

通常の薬剤との組み合わせで薬剤の効果を

本来の何倍にも増幅するものなんだ。


高価だけどたくさん買っておいて本当によかった。


使い方は……このタイプは傷に直接垂らせばいいはず。


シリンダーの蓋を開けて、装備に空いた穴から

薄い桃色に光る液体を垂らす。


痛みは感じないけど、

傷口に何かが染み込んでいくような……

何とも言えない奇妙な感覚だけはある。


この状態で、翼を無理のない状態で伸ばしておけば多分

……どうだろう。半日もあれば直るとは思う。


逆に言えば、それまではほとんど身動きが取れない。


僕たちワイバーンにとって、翼はとても大切なものなんだ。

探索を優先してもし傷が悪化して、二度と直せなくなりでもしたら……

僕はそんなことは考えたくない。


本当は貫雲を外しておいて方がいいのかも。

でも、この装備にはもう一つの骨格と言えばいいのかな?

本来の骨格にかかる負担を肩代わりする機能もあるんだ。


だから、実際は着たままの方がいいんじゃ?

今の僕にはそれを考えるのも難しい。


…………。


普段ではめったに取らない、腹を上に向けて

地面に寝る姿勢で体を休めながら

この小さな部屋に何があるかを眺めてみる。


最初に見た記憶媒体を扱える機械が置かれた机と椅子。

それ以外には何があるかな?


見た目だけでは何に使うのかわからないものもいくつか

置かれているけど、一つ分かるのはここで

仕事をする誰かは長時間ここに留まって、

ずっと座ったままか、必要に応じて僕がちょうど今寝転がっている

柔らかい敷物……? で寝るか、座るかして休憩を

していたんだろうということくらいだ。


この敷物、明らかに布製ではなくて何かスポンジのように

へこんでも元の形に戻るもので出来ているよね。

第二の文明の遺物や、残された設備というのはどれも、

最低15000年以上は前のものだというのに

信じられないほどきれいな状態で残っている。


使われている素材がそれだけ長い時間に耐えられるのか、

素材以外の何かで保存しているのか。


詳しいことは今でも分かっていないと聞くよ。


はぁ……。


まだ外は明るいはずだけど、携行食を食べて今はしばらく寝よう。

翼を怪我している以上は安静にしておいた方がいいから。


左腰のポーチから取り出したのは平らな形状の飾り気のない袋。


今どきの袋入りの食べ物は中身が分かるような絵が描いてあったり、

宣伝文句が文字で書いてあったりいろいろ賑やかなんだけど、

これは軍用の固形食糧だね。


小さなブロックに栄養が凝縮されていて、

余裕のない状況でもすぐに取り出して食べられる。


僕たちみたいな基本肉しか食べられない種族でも

問題が無いようになっているから助かるよ。


袋から何粒か取り出して、ヘルメットの顎の関節の固定を外し、

少しだけ開いた口にそれを放り込む。


ロカウルを出る前カーサーの店で食べた

レンガとは違って味はほとんどしない。


怪我をして動けないって……こんなに空虚な時間なんだね。

まあ、いいや。今は……寝よう。


========


ABSOLUTE TIME: +74996 188 06:35:00.000


ああ、辺りは真っ暗だね。

ヘルメットの中の計器類を照らす

わずかな照明以外に周囲には何も見えない。


魔法で作り出した明かりも

設定した時間を過ぎたから消えてしまっている。


そうだ、翼の傷の方はどうだろう?

ゆっくりと起き上がって、

永久照明を部屋の床に置いて明かりを確保する。


その薄い黄色の光で照らされたこの部屋の中で

何とか翼を広げてみると……ああ、よかった。


動かしても特に違和感はなくて、装甲に空いた穴から

流れ出ていた血も止まって、傷口の周りに

黒く固まったものが残っている程度。


これなら探索を続けられるよ。

あまり無理は出来ないけど、あらためて周囲を探してみよう。


翼を畳んで体の重心を確かめたら、

この部屋に転がり込んだ時から気になっていた

あの機械に近づいて、よく観察してみる。


大きさからして人間用の机の上に置かれた機械には

真っ黒な板がはめ込まれた額縁のような枠に、

平坦な場所に置くための支えがついていて、

その装置の手前にはこれを操作するための

入力装置か何かが置かれている。


台座に埋め込まれたボールのようなものに押せそうなボタンが

二つ付いたものと、僕が以前に探索したほかの場所で

扉の開閉を制御していた、たくさんのボタンが付いた

パネルを拡張したような装置。


それと違うのは、数字が書かれているだけではなく

アルファベットが書かれたボタンが沢山あることかな。


机の上に置かれた機械類は長いワイヤーのようなもので

部屋に入ってすぐ目の前にある横に4つ並んだ箱形の機械に

つながっていて、見た限りでは動力は供給されていなさそう。


例え壊れていなかったとしても動かせなければどうしようもない。

残念だね。


それにしても、この部屋は人間にとっては泊まり込みで働く

部屋として使えるかもしれないけど、

さすがにワイバーンの僕にとっては狭いよ。


尻尾は真っすぐ伸ばせないし、翼を広げるのも難しいんだ。


他に部屋に置いてあるものといえば何があるかな。

壁に体をぶつけないように気を付けつつ

首を曲げて部屋の壁際や四隅、天井の方も調べてみる。




整理すると、まずこの部屋には窓はない。

出入口は入ってきた扉だけ。

まあこの狭い部屋にいくつも出入り口はいらないよね。


入口から入って左には多分長時間勤務の時に休むための寝床。

正面には上下に長い箱形の機械が4つ並んでいて、

その機械は入って右の操作用の装置につながっている。

入力装置と一緒に置かれている黒い板がはめ込まれた

額縁のような装置は、操作するのに必要な情報を

表示するためのものだったはず。


前にラステアの研究所で似たような機械を見せてもらったことがある。


それ以外は特に気になるものは…………

もう一度見まわしてみたけど、無いね。


でも、試してみたいことは一つあるんだ。

4つ並んだ機械。確か蓋を開けると中にいろいろな部品が

くっついた板状の遺物がたくさん入っていたはず。


このタイプの機械は第二の文明が情報の記録や管理だけじゃなくて、

繋がっているほかの設備を操作したり、遠くにある別の機械と

通信したりと、本当にいろんな機能があるらしいんだ。


そういう複数の機能を持った機械の操作装置と

繋がっているわけだから、中に入っているものは操作側から

入力された命令を処理するための部品とか、

情報を記憶しておくためのものじゃないかな?


試しに中身を開けてみようか。


機械の側面にあるネジで止められたパネルを慎重に

威力を抑えた鉄の光で焼き切って、取り外してみる。


中にはたくさんの板状の遺物が差し込まれていて、

仕方ないけど見ただけではどれが何の機能を持っているか

まではわからない。でも、その中にいくつか僕が回収するべき

記憶媒体と同じ形のものは見つけることができた。

これは当たりだね。引き抜いて回収しよう。


そう思っていたんだけど……なんだろう、これ?

見覚えのある形の、何かを差し込めそうな穴を

板を刺すための棚の外側に見つけた。


二つ並んだ細長い突起が刺さりそうな形状をしているね。

何か追加の部品を刺すプラグかな? 小さいから、

差し込まれているほかの機械とは役割が違いそうにも思う。


うん、間違いなく見覚えがあるものなんだ。

でも、どうしてもどこで見た物か思い出せない。


なんなんだろう……考えてみたけれど、

頭の中がもやもやするだけで答えを出せなかった。

まあいいや、ひとまずは取り外して向こうの机に置いておいて、

撤退するときに持って帰ろう。


パネルを切るのに使った鉄の光をホルスターに収めて、

板を引き抜くために機械の手を伸ばす。


──待って、鉄の光……たしか、

これの動力源は取り外せる構造だったよね。


突然にそのことが頭によぎったので、試しに

グリップの底部から差し込まれている鉄の光の動力を外してみた。


そうしたら、なぜこの形のプラグに見覚えがあったのか、

すぐにわかったよ。


この形、鉄の光を動かしている、この動力源になる遺物から

生えている接続用らしい突起と同じ形、配置なんだ。


動力源を刺せる場所があるということは、

この施設自体からの動力供給ができなくなった時に使う

非常用のものということ?


分からないけれど、

今の僕はこれを差し込んでみたくて仕方がない。


よく考えもせずにこんなことをして、

危険な可能性だってあるよ。


この機械に繋いでいる間は鉄の光も使えなくなるわけだしね。


それでもだった。


ものすごい発見をしたかもしれないという気持ちに駆られて

鉄の光の動力装置をこの機械に差し込むと、

少しの間のすぐ後に無数の板状の遺物と記憶媒体、

そしてそれらが取り付けられている機械本体にも

状態を示しているであろう明かりが灯って、

同時にやかましい何らかの機械の作動音も聞こえ始めたんだ。


視界の端にさっきまではなかった明かりが

映りこんでいることに気付いて僕は机の上に置かれた機械の方を向く。

真っ黒だった板の部分にはいろいろな文字や図形が並んでいて、

その中には"STORAGE MANIFEST"の文字もある。


想像していた通り、やっぱりこの部屋は倉庫の管理室だったんだ。

これは大発見だよ! もし役に立つ情報がここにある機械から

取り出せれば、第二の文明で使われていた様々な道具の、

僕たちから見た解釈じゃなくて当時の、

本来の名前や用途も分かるかもしれない!


はぁ……はぁ……本当は今すぐにでもロカウルへ知らせに

戻ったほうがよさそうなんだけど、興奮して息が上がってしまった。


すこし気分を落ち着けてから、どうするかを考えようか。


これを報告するにしてもここまでの経路の安全確保は必要だし、

機械の一部を動かしたことでもしかしたら防衛用の機械に

何かしらの動きを知られた可能性だってあるんだ。


それに、動力装置の予備を僕は持っていないから、

これを動かしている間は実質的に戦うことができない。


とにかく安全の確保と、動力をどうするか。

報告よりも探索を優先するにせよ、

今すぐロカウルへ帰るにせよ、気を引き締めていかないと。

[都市: ラステア]


アジマ王国で最大の研究機関 / 教育機関であるラステア中央大学が存在する学術都市。

王都エトゥスの東側に位置し、防壁山地を挟み内側と外側に分けられた構造を持つ。

防壁山地に面するほかの都市と同様にこの高さ13000メルハ近い山岳を抜けるための巨大なトンネルがあり、ラステア中央大学もまた、外側には将来の研究者を育成するための教育機関としての大学が、そして内側には王室主導で行われる機密性の高い研究を扱う研究機関としての大学の設備を有する。


コメント:


基本的にアジマ王国領内の都市の名前は太陽系内の天体の名前のもじりが多いです。

このラステアは"Adrastea" から。まだ登場はしていませんが天体系ではサイリス(Siriusから)、天文学全般ではオールト(Oort Cloudから)、オベル(人名 Oberthから)なども。


[魔法の系統: 魔法化学]


魔法薬学とも呼ばれる複合分野。刻印魔法を基に生物の体に対し様々な効果を発揮する薬品や、液化マナと触媒の混合で化学反応、物性変化を実現する手法について扱う。一般的に魔法薬は基本効果を定義する刻印が施された薬瓶と、それを生物や物体に対して作用させるための媒質(通常は医薬品、化学薬品、単純な化合物が用いられる)、そして希釈された液化マナの3要素で構成される。例として、外傷の修復に用いられる魔法薬は傷口を塞ぐための力軸魔法と傷の修復に必要なエネルギーを効率的に輸送するための活軸魔法、そして実際に必要となる栄養を提供する栄養剤からなる。

化学薬品や従来型の医薬品と魔術的アプローチとを組み合わせることによってさらに薬の効果を増強するのが魔術化学のうちの一分野である。化学という名前が含まれている通りに、工業用途での材料加工や変性技術の拡張にも用いられており、その応用の幅は非常に広い。


コメント:


飲むと一瞬で怪我が無かったことになる魔法のおくすりではないです。

傷の程度にもよりますがちょっとした切り傷くらいなら30分もせずに完全に修復できるのに対し、刃物、矢などによる深い刺し傷や光線兵器による熱傷を伴う穿孔、弾丸が超音速であるコイルガン系の銃創など、深刻なものは3日ほどかかる場合もあります。それでも通常の薬や医療処置よりはるかに早いため、負傷者を迅速に復帰させる必要がある場面では非常に便利なものです。薬品の効果を強める(成分の伝達、運搬を加速する)はもちろん毒を強化することだって可能。


そのほか:


セルンの旧文明のあれこれへの呼び方が安定しないのは見てる側は現実でいうところの何なのかを察することができても彼はよく知らないからです。


自分で書いておいてあれですがセルンくんそこそこひどい目に遭ってますね……。

この調子だとあまり奥まではいけない予感。

ちなみに彼が普段探索している場所はもっと大きな破壊の痕跡から露出した損壊の激しい構造物で、酷く破壊されているおかげで機能している防衛機構は少ないです。まあそれでも戦闘ロボットやタレットの射線に入った瞬間ひき肉にされるレベルで危険。様々な遺物を見つけられたのは、陸の種族では入れない、入れてもかなり移動困難な区画へ自由に出入りできるからという面が強いと思います。こういう性質からクモ型種族のスピニアも割と適性がありますが、飛べるわけではないので限界があります。

(チームでの調査だと糸を使って実質どこでもロープを張れるのも強み)


危険度の高い場所はほとんどの場合完全武装の調査隊数百人や歩兵旅団規模でしっかり準備をしてから突入します。砂岩の傷跡の硬すぎて開けれない扉の先を調査するのに大規模な合同調査計画が立てられているのも周囲の地形上の都合もありますが戦力的な問題がほとんど。

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