#0012 先駆者の遺産: 旧世界の武器 / Relics of the Precursor: Weapons from Old World
新装備を手に入れて浮かれるセルンくん。
0602Q/IW 魔工エンジンの時もそうでしたがこういう場面では興奮を隠せないタイプです。
短いですが本日数時間で急いで書いたので許して。
期待を膨らませながら僕は目録にあった ID "0177-05-0A-00000B98"
のコンテナを探してこの部屋にあるそれらをひとつずつ確認して回る。
他にもいくつか興味深い内容物のあるコンテナを
手帳に書き留めてあるから、それも含めてだね。
今更ながら本当にこの腕は便利だよ。
これが無かったころはどれだけ苦労したか……。
さて、コンテナや目録に書かれているIDなんだけど、
探しているうちにすべて番号? に05と0Aの
文字があることにも気が付いたんだ。
そして、別の倉庫の目録──例えば今は破壊されてしまっている
7番倉庫なら0Aの代わりに07、12番なら0Aではなくて0Cに
なっていることも分かった。
これが意味するものは何だろう? 07は倉庫の番号と同じだけど
0Aは違うよね? 確か倉庫の番号が10よりも小さいところのコンテナは
01から09までで、10番からは0Aになっていたはず。
ということは……もしかして16進数表記なのかな?
言語魔法や刻印魔法で使われている魔法の命令文も確か
それぞれの命令に対応する番号があったよね。
えーと、オペコードとか言ったかな?
まあそれはいいんだ。これらの規則性から読み取れるのは……
そうだね、ハイフンで区切られたIDのうち3番目のグループが
どの番号の倉庫行き先を決めていて、2番目のグループは何だろう?
5番目という点と、この施設が物流ステーション "イプシロン"
だから、それを表しているのかな?
なら、2番目のグループが04ならデルタで、
09ならイオタということになりそう。
……細かい部分が気になってしまったけど、
最初の目的のコンテナは無事に見つけることができたよ。
この倉庫にはコンテナを垂直に安定して並べるための
ラックがあるんだけど、僕が最初にここへ入ってきた通路から
見て右側、方角で言うと部屋の南にある2つのラックの内の左、
下から3番目の段にそれはあった。
位置が高いし相当な重さがありそうだからこれを下に降ろすのは
僕には無理だけど、調査隊がここまで到達できれば回収は難しくないと思う。
そのためにも帰り道でもっとわかりやすく目印を付けたり、
ロープを張ったり、あとはさっき写した見取り図も
提出して報告しないとだね。
でも、まずは僕が自分で使う装備を確保しよう。
鉄の光なしじゃ心もとないよ。
薬のおかげで完全に傷が無くなった右の翼の状態を
念のため確認したら、勢い良く羽ばたいてコンテナの
ヒンジ部分を狙える位置まで飛びあがり、
足で近くのラックをしっかり掴んで体を固定する。
まるで小鳥が枝や人工の柵に止まるときのようだけど、
実は僕たちワイバーンもこういうことができるんだよね。
人型種族の器用な手先もいいものだけど、
こうやってしっかり物を掴める足はワイバーンと鳥たちだけのものだから。
さて、普段なら鉄の光で撃てばいいんだけど今回は少し工夫が必要。
でも幸いなことに僕には飛び道具がもう一つある。
この尻尾の先についた閃電放射器がね。
電撃武器は本来物体を破壊する力は弱いけど、
電気を通しにくい素材に向けて電撃を放てば
電気抵抗で発生する熱で溶かしたり、粉砕することもできるんだ。
あのコンテナ、見た目こそ金属製だけど僕の見立てでは
普通の金属じゃなくて、金属と樹脂を混ぜて作られているはず。
残骸になったコンテナを横目に通り過ぎたときに
それらしい破断部分があるのが見えていたから。
さて、試してみよう。コンテナラックに取り付いたまま、
尻尾の先を目標へ向けて、発射指令を出す。
そうすると、電気を流すための混合気体が瞬間的に
コンテナのヒンジに向かって伸びて、
その直後に針のような電極から稲妻が走る。
よし! やったね! 遮光風防越しでもわかるくらいの火花が散って、
閃光が収まり晴れた視界には、黒く焦げて穴が開いた
コンテナの外装と、繋ぎ止める対象が無くなって転げ落ち、
ほぼ無傷で残ったヒンジがあった。
後はもう片方も焼けば強引に開けられるようになるかな。
同じようにしてもう一度電撃を放つと、
二つ目もあっさりと焼け落ちた。
これならもう開けられそうだね。地面とほぼ平行になった
今の姿勢のままコンテナラックを蹴って向かい側に飛びつき、
片足でボロボロの蓋を強引に引き剥がしてみると、
中身はまさに宝の山だったよ。
大きなコンテナの中にはいくつもの小さな武器ケースが
詰め込まれていて、それらの武器に使うであろう動力源も
一緒により小さな箱に入れられていたんだ。
目録に遭った名前は確か……Ls.122 Heavy Laser Rifleと、
動力の方はType 41 Matter / Antimatter Batteryだったかな?
えー、"Matter" 物質というのはわかるけど、
"Antimatter"って何だろうね? 物質の対になるもの、
反対するものという意味……だと、いや、意味が通じない気がする。
少なくとも、現代でも使われているような用語ではなさそう。
まあ、今はそんなことよりも!
僕は単純にへびーれーざーらいふる とやらを試してみたい!
……うん、名前からして重そうなのは少し不安かな。
コンテナに詰まった大量のケースのうちの一つを
片足で掴んで引っ張り出して、動力装置が入った箱は
機械の腕で持って取り出し、一度床に着地する。
こんなに長時間足場にしがみついていたのも久しぶりだね。
さて、そもそもこのケースは開けられるのかな?
閉じ方は工具箱とかに近い形みたいだけど……おお、開けられるね。
特に鍵の類は掛けられていないみたい。
そしてその中身はというと? やっぱり思った通りのものだった。
連合戦略防衛軍で使われてるコイルライフルというのと
道具としての形状はほとんど同じ。
肩に当てて狙いを安定させるための、えー、
銃床という部品が一番後ろにあって、その先に機関部、
そして加速器か銃身に当たる部品がつながる構造だね。
まあ、僕の身体では銃床を肩に当てるのは難しいけど、
どうせ狙うときは照準器は覗かないから気にしないでおこう。
うん、見たところさすがに動力装置が刺さった状態では
保管されてないから、これを取り付けて……。
もう片方の小さな箱から動力装置を手に取り、
機関部の下側から接続部に刺すと、照門の
すぐ手前にある黒い板に光が灯って、残りのエネルギー量が映し出された。
ふむふむ、この表示を見る感じ、残りエネルギー量じゃなくて
残りの射撃回数が書かれているのかな?
ということは、鉄の光ももしかしたらこの表示方式に
切り替えたりできるのかも。あとで試してみよう。
よし……いよいよ試し撃ちができるね。
本当なら、未知の遺物なんて町一つを吹き飛ばす可能性すら
あるんだから気やすく試験は出来ないところだけど、
運がいいことにこれは僕が普段から使っている
遺物とおそらく動作原理は同じもの。
それぞれの部品の構造的な特徴が一致するから
間違っているということはまずないと思う。
えっと? まずはこの"SAFE" に合わせてあるダイヤルを
"PULSE"に、"BLAST" を "PIERCE" に合わせて……
あとは"GAMMA" を念のため "UV" に。
これでいいかな。あとは実際に撃ってみるだけ。
昨日あれだけの戦闘があって防衛兵器がここに押しかけて
こなかったなら多少試し打ちをしても問題は無いだろうし、
派手に行ってみよう。
僕自身が巻き込まれない程度にね。
多孔質金属でできた増加肢──空洞の腕でしっかりと
このLs.122を構え、昨日破壊した防御砲塔に照準を合わせる。
普段ではまず取らない直立に近い姿勢まで体を起こして、
せっかくだから王国、連合軍のどちらでも教えられている
正式な構え方でしっかりと銃床を肩……つまりは翼の付け根に当て──
長い首を後ろに引いて照準器を覗き込み、僕は引き金を引いた。
光線兵器特有の、前方の空気が熱せられることで
間接的に生じる発砲音。そして、放たれた光が青白い閃きと共に
防御砲塔の残骸に深い穴を穿ち、そこから遅れてやってくる轟音。
設計は違っていてもわかるよ。根本は鉄の光と全く同じ。
でも、こっちの方がより力強いね。
まあそれは両手で扱う武器だから当たり前か。
名前からかなりの重さを想像していたけどそうでもなかったし、
嵩張るけど携行する装備に加える価値は大いにあるよ。
これはとてもいいものを見つけたかもしれない。
[遺物: Ls.122 重レーザーライフル]
連合領内の幅九の地下に築かれた古代の保管施設で発掘された両手用の光線武器。
機能的な特徴はセルンが用いる鉄の光と共通していることが確認されており、現代の連合戦略防衛軍に配備されているコイルピストルとコイルライフルの関係と同様である可能性が高いとみられる。
また、このことから鉄の光の当時の正式名には"Laser" と "Pistol"という単語が含まれる可能性も高い。
また、名称の内"Ls.122"は形式名や設計名を指していると考えられる。
コメント:
高出力のレーザーライフルで、通常は狙撃用途で配備されます。
射撃モードに速射パルスモードがあり、これを選ぶとフルオートでパルスビームを連射可能。
射撃キャパシターの最大容量は8GJで、出力は16GW。サイズが大きい分強力です。
[遺物: 四一式 物質 / 反物質バッテリー]
物質と "反物質" と呼ばれる未知の存在を使用した動力装置と思われる遺物。
反物質について判明している事実は極めて少なく、通常の物質と常にペアで運用する必要性が同種の遺物の名称に見られることから、物質と反応し高エネルギーを発生させることのできる類の素材や燃料であると考えられている。大きさは標準的な建築用レンガを半分に切った程度のもので、動力を必要とする別の遺物と接続するための突起、端子らしき構造が4つ確認できる。
コメント:
大型ライフルやマシンガン、ランチャー系で使用する大容量反物質バッテリーです。
接続用の端子の本数が多いほどエネルギー供給速度の上限が高く、バッテリーという形式をとっているもので最も高出力なモデルは端子が8つあります。適切な改造を施せば反物質爆弾としても使えますが、もちろん非常に危険です。こういった反物質バッテリーには極めて高度なフェイルセーフ機能があり、格納容器の破損時には反物質の電荷を瞬間的に反転させ、無害化する処理が行われるようになっています。爆弾として使う場合はこの機能はもちろん無効化する必要あり。
なお、第二の文明の反物質動力のエネルギー回収率は約90%で、合計1グラムの物質/反物質から80TJのエネルギーを得ることができます。
[軍事組織: 連合戦略防衛軍]
都市国家連合における唯一の軍事組織。
その戦力は各アーコロジーから規定された人口比率で拠出されており、構成員は要塞アーコロジーである"メイギオル"にて訓練を受け、各地に配属される。戦略防衛軍の名の通りに長距離砲や固定兵器を用いた接近拒否型のドクトリンを採用しているが、アーコロジー内部での戦闘や機動戦を想定した部隊も編成されており、搭乗型ゴーレムによる機動歩兵隊や数は少ないものの存在する空中巡洋艦、爆撃機などがこれに当たる。空対空戦闘向けの戦力の優先順位は低いため対空迎撃は大部分が地上兵器の担当となり、次いで航空艦が担当する。
コメント:
領内防衛に特化した軍隊で、比較的小規模な機動戦力と固定式だが強力な防衛兵器で敵を遠距離から一方的に叩く運用が最大の特徴。空中巡洋艦は王国空軍の流光を小さくして、艦載機運用能力を最小限に抑えた代わりに本体の武装の割合を増やしたようなもの。なお、王国空軍側も同様の兵器を保有していますが、これは連合からの輸入品です。流光は共同開発というか技術交換政策の一環で建造されています。
連合側は王国の進んだ魔工技術について学び、王国側は連合の高度な大規模工学技術を学ぶ。そんな感じ。そもそも流光のコイルガン砲塔は連合製です。ただし光束砲は王国の独自設計。
レーザーと魔工技術は相性がいいのである。
[魔法の系統: 触媒魔法(または導体魔法)]
触媒魔法とは、マナを特定の物体中に通すことでエネルギー量が増幅されるという現象を利用した言語魔法、刻印魔法の拡張の一種である。マナは物体の内部を通過する際、わずかにその物体を劣化させることが知られているが、特にこの性質は細長い形状の物体や高密度の物体の内部でより顕著になる。
触媒魔法の最も身近な例は多くの魔術師が用いている杖を介した魔法であり、杖の細長い棒状の構造に術者のマナを流すことでエネルギーを増幅、さらに指向性をも強化する。理論上は超高密度のワイヤー状構造にマナを流すことが最も効率的な増幅効果を得られるものの、増幅効果量は触媒、マナ導体の劣化量と等しいため、このような設計は純粋に機材の寿命を縮めることにつながり、現在は一部の特殊用途でのみ使用されている。なお、密度の低い物体の内部においてはマナはほとんどその物体を劣化させない。つまり、人間や他のほとんどの種族は魔法の行使のために体内からマナを外部に放出する過程で身体構造の劣化を受けずに済む。既知の素材の内最も増幅効率に優れるものは"オスミウム"であり、次点で"イリジウム"とされている。
これらの点から、オスミウム製のワイヤーや杖が最大の魔術補助具として機能することは容易に想像可能だが、当然ながら高密度素材製の装備品は重く、オスミウム製の杖ともなれば持ち上げるだけでも相応の腕力を求められる。そのためあまり装備重量を重くできない旅の魔術師などは比較的軽量な杖か、もしくは杖の代わりに金属球や小さなブロック、そのほか金属粉末などを使用し、球やブロックの場合は手で握り粉末の場合は手袋の上に粉末をまぶして使用する。
コメント:
触媒魔法と言うと消耗品を使って放つ強力な魔法というようなイメージもありますが、この世界では何らかのマナ導体を介して放つ魔法の総称です。杖以外にも剣や槍の切先から放つ魔法でも同様の効果が得られますが、前述のとおり導体を劣化させるので近接武器でそれをやると寿命を縮めることになるので考え物。ちなみになぜ劣化するのかというと、マナが通過する際に導体の分子や原子を破壊してエネルギーに転化させ回収するからです。プログラマブルエネルギーの類であるため、これはオリジナルの設計者が意図した挙動。高密度のマナを体内に保有すると有毒であるのもこれが理由。
そのほか:
後書きが本文の3分の2くらいあるのはどうなのか。
まあ説明しないと読んでる人(そんなものが存在するかはさておき)分からないだろうし、自分用のメモとしても使ってるのでこんなもんです。




