団結 に 駆け引き
「防御陣形!! 遊撃隊も撹乱を!」
「迎撃態勢! 敵の攻撃を何としても防いで」
「「「「「了解!!!!!」」」」」
なんだよこの状況。二人の隊長が部下達に支持を飛ばし始めた。
もうやめますって言えないんだけど・・・。
ギュッ!!
「ではやりましょう、私達の力で」
ミミナが俺の背後に回り腰に抱き付きその場で固定されたのがわかる。
なんでお前はこんなにもやる気なんだよ。逃げる準備ちゃんと出来てるんだろうな?
コイツ自分も一番危ない所にいるってわかってるのか!?
もう駄目だ、完全に逃げ場が無くなった。
確かにどんなことをしてでもなんて啖呵切ったけど、こんなリスクがデカ過ぎることなんて望んでねぇよ。
話しが勝手に進み過ぎなんだよ。
「やるしか・・・ない・・・のか?」
左手のガントレットを眺める。
本当にこれしかないのかなー・・・駄目だなんも浮かばねぇ。
いいからもうやれ、諦めろ。
そう誰かが言ってるようにか思えない。
「ちっ、くそがぁ!」
もういい、やるよ。
ガントレットを付けた左手を思いっきり突き出す。
目標の中心に狙いを定め、ワイヤーを放つ。
もはや俺に退路はない、組まれた作戦が思うように上手くいくことを信じるしかない。
まずは俺のワイヤーが球体に入れば・・・。
グチャァァァア!!!!
よし、ひとまず入った!
「なっ!? くそ!」
ワイヤーは入った、だが進まない。
魔力でほぼ棒状のように固くした俺のワイヤーが妨げられている。
駄目だ、このまま続けてたら俺の腕が折れる・・・。
「大丈夫です、私が支えになりますから」
俺の腰に回していた片方の手を俺の左の二の腕に添える。
「ヴァージスアトラクト!!」
ミミナのスキルか。
俺に触れている場所からワイヤーへと魔力が浸透していくのがわかる。
スキルの力か、少しずつ折られそうだった腕が楽になっていく。それどころか、あれだけ進まなかったワイヤーが球体の中に進み出した。
フアァアアアアアアアー!?!!??!?
悲鳴声。
ディザスターが怯える声、という事は作戦通りだ。
間違いなく俺のワイヤーが届こうとしてるんだ。
行ける。このまま行けば・・・。
「ぐぅう!!? なんだ!?」
今度は・・・引っ張られてる!?
押し込めないなら引っ張るってか。巨大な球体が動き出した。
ふざけやがって!
「このぉおぉおおぉお!!!」
ミミナのスキルのおかげで俺の足は地面に突き刺さっているかのように固定されている。
踏ん張れる。踏ん張り易い。
全力で集中できる、ワイヤーを伸ばし貫く事に意識を注げる。
距離を離そうと逃げるディザスター。動きはゆっくりではあるが少しずつ俺から離れようと必死だ。
その必死さで更に確信できる、確実に届こうとしている事が。
ァァアアアアアアアアアアア!!!
ついに俺へと向け攻撃をしてくるか。球体からこちらへ向けて大量の槍に似た物が飛んでくる。
俺はこの状態じゃ動けない、防ぐことさえ出来ない。
「ファースブロック!!」
「パワードシールド!」
「ハイバリア!」
ディザスターの攻撃は俺に届かなかった。
騎士団、正義者。双方の防御魔法が俺を守った。よかった本当に守ってくれて。
「側面から魔法攻撃! 少しでも注意を引きつけろ!」
「遊撃部隊、背後から押し出して!!」
またも支持が飛んだ。
その瞬間両サイドから大量の魔法がディザスターへ向け撃ち込まれていく。
そして俺のワイヤーが刺さっている逆側、背後には騎士団が一斉に攻撃を仕掛ける。
お互い自分の攻撃が通らない事は承知しているのだろう。だが狙いはそこでは無い、狙いは誘導。
恐らくこの球体は力こそ大量のモンスターの集めて出来た物ではあるが、意識まではモンスターの数持っているわけでは無い。
つまりこれはディザスター一体だけで動かしているのだろう。
動きが遅いのがその証拠だ。
ある意味で諸刃の剣だ、自分の長所である大量のモンスターを戦略的に動かす事がこのディザスターの長所なのにも関わらずそれを捨て自らが敵を倒すという戦術へ切り替えた。
自分の特殊能力を過信した結果とでも言うのだろう。
他の者達の攻撃もあり、一気に俺のワイヤーの進みが良くなる。
このまま行けば本体へと突き当るのも時間の問題だ。
「っ・・・今度はなんだ」
「上です!!」
まさか、増援か!?
コウモリ型のモンスターが次々と俺達の上空に姿を現し出した。
今呼んだのか元々呼んでいたのか知らんが、少ないわけじゃない。
全員が現状で手一杯のこの状態、どうするんだよ。
「降り貫け水槍、アクアレインフォール!!」
ぱっつんの魔法スキルか? あまりこいつの魔法は良い印象がないが。
無数の光輝く雨が降り注ぐ。増援に駆け付けたコウモリ型は次々と翼を撃ち貫かれ飛行することができずに地面に落ちていった。
俺達もその雨に当たるも少し冷たい、普通の雨に当たっているのと変わりない。
これが噂に聞く味方判別の出来る魔法って奴か。ダメージを与える者を限定し味方には当たらないようにする物。
一応味方の数が多ければ多い程に難しく高度な魔法って話だったはずだが、そこは魔法士団の団長って所か。
ぱっつんの魔法によって増援の妨害、そして同時に正義者だけでは無くこの場にいる全員の士気が一気に向上した。
全方位からの攻撃に拍車が掛かる。当然俺のワイヤーの進みが更に早くなるのを感じる。
アァァア!!ァァアア!!
「来た」
ついに捉えたぞ。
わかる、今目の前に・・・ディザスターがいる。
フアァアアアアアアアアアアアア!!!!
俺がずっと進ませていたワイヤーの先端がディザスターを貫き届き一番の悲鳴を上げた。
「あとは・・・引きずり出すだけ、っ!!?」
空に・・・飛ぶ?
嘘だろ。まさかこいつ増援を呼んだのは妨害する為だけじゃなくて・・・飛行能力を付与する気だったのか。
ヤバい、思った以上に上昇速度が速い。
陸地から攻撃を仕掛けていた騎士団の連中の攻撃が届かない程にまで上昇し始めた。
完全に逃げ切られる前に本体を引っ張り出さないと。
「さっさと!! 出てきやがれぇええええ!!!」
添えているだけだった右手でワイヤーを引っ張るが、抵抗力がとんでもない。
これ以上長引かせたら魔力が無くなるのがヒシヒシと伝わる。これじゃあ最悪こいつをぶっ倒す力を残すことも考えると不味い。
なら。
「ミミナ! 離せ!!」
「え、でも!」
ここでディザスターを出すわけにはいかない。
俺の魔力が枯渇して取り出したんじゃあ他の連中に倒されかねない。ならいっそ空中で雌雄を決する方が良い。
優先順位を間違えるな、俺がディザスターを倒さないと意味がないんだ。
「・・・わかりました」
ミミナが俺から手を離した瞬間、同時にディザスターも急上昇を始めた。
俺は引っ張られるように上空へと飛んだ。
「痛っ!」
なんだ? 何かにぶつかった?
ディザスターに目を向けると、どうやら奴も消耗が激しいのがわかった。
次々と球体からモンスターが剥ぎ取られている。収束する力すら残されてないってことか。
これならいける。
「お前が何処まで逃げようと俺はコイツを絶対に離さないからな」
左手のガントレット、そしてワイヤーに意識を向ける。
大きく揺らされ様と俺はコイツを離すつもりはない。
もう10メートル近くまで上がってきている、そんな中でモンスターが地上に落ちていく量も目に見えて多くなっている。
出来れば早めにギブアップして欲しいもんだ。
ここまでは思惑通りではあるけど、ぶっちゃけ倒した後の事は考えてないんだ。空に上がれば上がるほど正直怖いんですが。
そんな俺の願いなんて無視して高度をぐんぐんと上げていく。
このままだと本当に俺の命がヤバいんですけど。
考えろ、魔力で上手く着地すれば・・・いけるはず。
だったら、早めに決着を付けた方が良い
「アロー!!」
もうモンスターも少ない。
ここで一発デカイのをぶち込めば残りのモンスターも吹き飛ばせるはずだ。
今ならきっといける、最初の一撃はディザスターも万全だったから通用しなかったはずだ。今は疲弊しダメージを負い、魔力も残り僅かなはずだ!
出血大サービスだ、メイス状の矢を3本を形成する。
「さっさと面見せろやぁあああ!!!」
俺は3本の矢を放った。
フアァア!??!アァアアアアアアア!!!!!
強烈な大爆発。
巨大な煙と同時にモンスター達が一気に吹き飛んだ。
ディザスターは・・・。
奴隷紋に反応はない。
欲を言えば今の一撃で死んでくれたら助かったのに。
ワイヤーに意識を向ける。
いない!?まさか・・・今の爆発の衝撃で離れたのか!?
「くそっ! 何処だ!」
右手を払い強風を起こし煙を掻き消す。
ダメだ、モンスターが多すぎる。
俺を含めた全てのものが落下している、モンスターだけじゃなくてただの瓦礫までもこいつは飲み込んでいた。おかげでディザスターを見つける事が出来ない。
というか最悪だ、ただでさえ俺は元々の姿を知らない。
ゴブリン位ならわかるが、それ以外の知らない種類のモンスターも混ざってる。
「これか! こいつか!?」
もう我武者羅にアローで撃ち込んでいくしか出来なかった。
落下しながら目に映る物全てに撃ち込む。
なんでこんな時にだけこいつ等消滅しないんだ!
まさかこれが最後の最後のディザスターの抵抗とでも言うのか?
どんだけ面倒なんだよぉぉおおお!!!
「くそがぁあああああ!!!!」
「私、わかる」
「は?」
俺の隣に・・・イノシシが現れた。
こいつ・・・どうやってここまで来たんだ?????
俺の疑問を解消させるようにイノシシは空中で更に飛んだ。
ディザスターの球体から剥ぎ落ちたモンスターの死体を踏み台に・・・イノシシは飛んでる。
(嘘だろこいつ・・・!)
もはや人間業じゃないだろ、え?出来るの? スキルか何かで? 嘘だろおい・・・。
呆気に取られている俺を無視しイノシシは次々と死体を蹴り飛んでいく。
そして・・・。
「居た」
「待ってぇええええええええええええええ!!!!」
俺の声は、言葉は、要求は、望みは、願いは。
儚く散ったのだった・・・。




