結託 に 錯覚 前編
「うひょぉーーありゃすげぇーな、もう駄目じゃねグインズ」
「どうします? 下手したら街もめちゃくちゃになってしまい兼ねないですよ」
大丈夫だろ。確証なんて一切ないけど大丈夫だろ。
それに西門にはまだ部隊が居たはずだし、逆に街に少し被害が出るくらいが丁度いいんじゃないかな。
と言う事で一先ず街の事は置いておいて。
この奇襲は凄いな、ここまで綺麗に決まるなんてな。
神災陣営の作戦勝ちという感じで拍手を送りたい。
「街は放置。それよりも」
「・・・はい、奇妙にもほどがあります。あの時のゴブリンジャックのように小型のモンスターに指示を出す程度は出来るとは思いますが・・・」
つまりはこんな大掛かりな作戦なんてものを本能的に動くモンスターが提案出来る訳がない。
ましてやそれが出来たとしても、小型のモンスター達がそれを実行できるとは思えない。
だとしたら、モンスター達全てをコントロールする事が出来る何か。
「決まりだな、ディザスターはもういる」
「はい」
後はそのディザスターだが・・・。
西門とは正反対の広がる草原を見渡す。赤い空の下何も変わらずにいる草原は神災から現れたモンスターで埋め尽くされている。
モンスターだけ、俺の目当ての存在が見当たらない。
ギィィィイィィイイイィイ!!!!
「またか・・・」
ゴブリンがまた俺達に襲いかかってくる。すぐさまソードで片付ける。
定期的に現れる小型のゴブリン。これも何かしらの作戦の一つか。
たった数匹を送りこんでいる。消滅からコイツ等は神災から現れるモンスターだとゆうのは間違いない。
偵察・・・だとしたらやはりディザスターはほぼ全てのモンスターを掌握、操作していると見ると納得もいく。
ギィィ・・・ギギ。
襲撃してきたゴブリンが一匹まだ息の根が残っていたか。
「いや・・・これなら」
まだ消滅しないゴブリンの頭を掴む。
俺はそれをミミナに投げた。
・ ・ ・
レーグ達が情勢に笑みを浮かべている西門は今も混沌と化していた。
指示の統一化は一切無く、陣形も整ってない。
各自でモンスターの迎撃をするしか無い状況だった。
「ぐぁぁああ!!」
「命令は!? 陣形は!!? 戦況は・・・うあぁあああ!」
聖天騎士団の迎撃部隊は真逆、敵の襲撃に会ってからすぐに死者を多数出していた。
どれだけ多くの騎士を揃えようと、どれだけ強い装備を整えようと、自陣よりも多勢、モンスターの大群相手にはほぼ無力に等しかった。
「コンザー団長! このままだと街にモンスターが」
「構わん! それよりも早く防衛陣形を整えろ! 迎撃部隊の後退は・・・!」
コンザーがその場から遠ざかろうと動き出す。
西門を背にモンスターの迎撃を行うはずだった。だがそれは叶わない。
奇襲部隊の軍勢相手に一切の抵抗已むなく崩壊していた。孤立した人間達は次々と群れに囲まれ無抵抗で死んでいく。
その惨状に腰を抜かした者から殺されていく。
コンザーもまた同じだった。
次々と保身の為の指示を飛ばし少しでも自分の命を守ろうと必死だった。
もはや西門を防ぎきることは・・・。
「アクアストリーム!」
水の渦が草原に広く展開され、進行するモンスター達を溺れ殺していった。
水魔法が発動してと同時に次々とモンスターの群れへと火球、雷撃、強風と多くの魔法がモンスターを吹き飛ばしていた。
絶対絶命に近い状況に現れた増援は、正義者だった。
「魔法部隊はこのまま攻撃を、弓兵隊は門に近付く者を優先的に仕留めるんだ!」
ファインが先導し指示を飛ばし次々と西門から正義者達が姿を現していく。
覇気のある声を上げながらモンスターの迎撃に当たる。無数のモンスターを少ない動きで次々と撃退していく。
正義者のおかげでモンスター達に西門の接触を食い止める事は出来た。
「なんだなんだ、戻ってきたと思ったらなんだこれ!?」
「あれってもしかして正義者・・・?」
ついに聖天騎士団が最前線から戻ってきた。
同時に最前線のモンスターも一緒にユリス達迎撃部隊が下がるのと同時に進行させてしまっていた。
(聖天騎士団が戻ってきた? 何を考えてるのよ、あれじゃあ火に油を注ぐだけじゃない)
眉間に皺が寄る。
奇襲してきたモンスター達だけならまだ何とか出来たかも知れないのに、敵の主力まで相手にしなくてはならないとなると悩まされていた。
迎撃部隊の聖天騎士も痛手を負っていた。ファインがわかるほどには無理をして撤退してきた。
ファインの率いる正義者と聖天騎士団が防衛線の主力。
本来の防衛部隊はもうその場には居ない。誰よりも先に戦場から退避していた。
「ユリス、敵を間違えるんじゃないよ」
「うん、わかった」
フォルトに返事をしてすぐにモンスターの群れに再び身を投じた。
敵は神災のモンスター。当然今は正義者達の相手をする余裕なんてない。
もうなりふり構ってる場合じゃない。
少し前まで二つの陣営がいがみ合っていたはずなのにも関わらず今は手を取り合ってグインズを守ろうとしている。
それは本来の姿、本来あるべき。
戦える者が一つの脅威にみなで手を取り合い立ち向う。
それが・・・本来の姿・・・。
・ ・ ・
「んーーーー・・・いない」
ディザスターの姿が全く見えない。
あれから崖の高所を取って辺りを見渡す。
それなりに良い見渡しなのに、影も形もない・・・。
「あのレーグ様・・・その、申し上げ難いのですが」
なんだ急に目を逸らし出して。
何か不都合があったか? 今の所はこいつの作戦は順調だと思うが。
「私、ディザスターを見たこと無いのですが・・・」
「死ね、勝手に死んどけ」
ついさっきまで一緒に目を凝らしてディザスターを探してたのは一体なんだったんこいつ。
だからそのモジモジやめろ気持ち悪い。
「いや別に騙すつもりは微塵もなかったんです! 私、神災の時はいつもすぐに避難していたので・・・申し訳ありません」
なんだその騙すつもりはないけれどみたいな。
これじゃあなんの意味もねーじゃねーか、どれだけ時間を費やしても意味ないじゃん。
見えていたってわからないんじゃ・・・。
「あ・・・そうか」
崖から飛び降りる。
俺を追うようにミミナも呼び掛けながらも軽々と降りてきた。
というかそんな事はどうでもいい。今はそれよりも早くしないと。
「ど、何処へ向うのですか!?」
「群れ、モンスターの」
それだけを伝え俺は走った。
最悪の場合・・・ディザスターが倒される
「まさか、あの軍勢の中ですか!?」
「可能性の話だ」
これだけ待ってもあの巨体のディザスターの姿が見えない。
いや巨体だと錯覚していた。騙された。
勝手にディザスターは巨大な化け物だと思い込んでいた。
俺の経験不足、知識不足だ。
ディザスターが必ず巨体の姿をしているとは限らないじゃないか。
「仮に今回のディザスターが考えてる通りだったらある程度納得もする。あのゴブリン共、俺達を襲った奴だ。あれはきっとあぶれたんだ」
あのゴブリンも偵察だと勘違いしていた。だがあれは偵察なんかじゃない。
もしそうならもっと俺達相手に増援を送ってもおかしくないはずだ。
なのに全く送られてこなかった。奴らに俺達の存在、司令塔のディザスターには知られていないのは間違いない。
だとするとやっぱり、ディザスターはもういる。
あの軍勢のほぼ中央に。
「ですが・・・どうしましょう」
俺達は走りながら会話を続ける。
「西門・・・恐らくもう突破されると思います」
ゴォオオオオオオオンッ!!!
強烈な爆音。何かが決壊する音。
「あぁーあ、いったなありゃ」
遠くからでもわかる。西門が堕ちた。
防衛部隊が居たはずだが、それも全て死んだか。
何にせよ、面倒な事になったな。
狙うはディザスター、だが敵が街の中に入ったとなるとどんでも無く面倒だ。
「レーグ様、やっぱり」
「完全に落ちてるなあれ」
グインズは崩壊。
綺麗に整った巨大な西門は跡形も無く消し飛んでいた。
大きく開いた穴にはモンスターの行列が出来ていた。
それを見るとすぐに街の様子を想像してしまう。
あの時と同じ・・・俺が初めて神災と出くわした時と。
脳内が侵食されるように記憶が蘇る。
赤い大空の下でモンスターが人を追い人を殺していく。
抵抗も出来ず、血を流し、その身を食らわれる。
今もまたグインズではそんな地獄絵図が繰り広げられてるなんて・・・。
パンッ!!
俺は自分の頬を両手で思いっきり叩く。
こんなのじゃ駄目だ、何を考えてるんだ俺は。そんな何の得にもならない事を考えたってしょうがない。
「っ!!!」
左手に巨大なアローを形成させモンスターの軍勢に撃ち込む。
綺麗に入ったのか、面白いくらいにモンスター共が吹き飛んだ。
街がどうなろうと関係ない、チャンスを逃しちゃいけないんだ。
「掴まれ、一気に飛ぶ」
「はい!」
鋼のつるを装備しグインズの外壁へ向けて撃ち込みミミナを抱え一緒に飛ぶ。
少し届くかどうか不安だったが、無事にグインズへ帰れそうだ。
飛行中、下を見る。
モンスターが気持ち悪いほどうじゃうじゃいる。
この何かにディザスターがいるのか。
無事に外壁の上に到着する。
ここは本来の境界線、モンスターが居る草原と人々がいる街との。それが今はもうない。
「離れろ、少し大きめのをぶつける」
街がどうなろうと俺には関係ない。
そう関係ない・・・。今はディザスターを探して倒すのが最優先だ。
それが今の目的。
左手に巨大なアローを再び形成させる。
右手には巨大なメイスをイメージした物を形成する、一撃必殺。破壊力を重点に魔力を集約させる。
狙いを定めて、放つ。
俺の攻撃は思った以上の成果を上げた。
一撃で軍勢は散り散りに吹き飛びほとんどのモンスターを消し飛ばした。
こんな簡単にも敵の主力部隊を片付ける片付ける事が出来たなんて、普通なら信じられないだろうが。俺のスキルなら難なくこなせる。
スキル様様だな。
モンスターの死骸の山を見ていると、突然奴隷紋が反応した。
「お見事です!流石レーグ様!」
純粋に喜ぶミミナの言葉が耳に入らない。
驚き・・・いや、これは違う。
俺は一人言葉が出なかった。
居た。
俺の目的であるディザスターが・・・そこにいたんだ。姿はわからない、わからないけど確実にそこに居たんだ。
- 騙りせし双顔の素材 ×5 取得 -
居たのか・・・あそこに。
拍子抜け、こんな簡単に手に入るなんて思ってもみなかった。
もうなんか嫌になるな、ここまで呆気ないと・・・。
「ん・・・?」
あれ・・・。
俺は空を見上げる。
空はまだ・・・赤い。
ディザスターを倒せば神災は終わる・・・なのに・・・。
「まさか・・・まだ・・・いるか」
俺は改めて街に視線を向けた。
呆気ない、その言葉は訂正する。
ディザスターは巨体、ディザスターは一体だけ。
そんな事を考えてしまっていたのが俺の失敗だった。
「もう一体・・・いる、この街の何処かに」




