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戦後 と 迎撃


 平和な日常。

 それはここグインズでも同じ。

 人々が行き交い、声が聞こえ、言葉を交わし合っていた。


 喜びも有り、時には悲しみ、怒り。

 様々な出来事が街を賑やかせていた。


「まさか・・・ここにくるのか、あれは・・・」


 その街、グインズは今・・・静寂が包んでいた。


 誰もが街の外の空を見上げていた。

 深夜の闇夜、それでも街に人間はいる。けれど挙ってみな空を見上げていた。


 街から見える夜空を、侵食する赤い空を。



「避難勧告!!!!」



 一人の警備兵が声を上げた。

 その瞬間に静寂は終わりを告げた。


 次々と人々は赤い空と反対側へと逃げ惑う。

 家族がいる者は自宅へと駆け寄り、警備兵達は武器を手に走る。


 街は一変して大騒ぎなっていた。


「伝令! 西方に神災! 繰り返す西方に神災!!」


「特別指令部にも連絡だ!」


「馬鹿! そんなの連絡してどうするんだよ、もう知ってるだろ普通!」


 街の警備団体の指示が飛び交っているが、統一感がなかった。

 これはもはや言うまでも無く、レーグ達が行った研究所と同じだ。

 このような場合の事前準備などが一切ない。いざ起きなくては動かない。


 だから今も統率の取れない動きを全ての兵達がしている。

 右往左往しているのは街の住人だけではないの、戦う力を持ってる兵士達もみな、神災の恐怖に思考が纏まらずに冷静な判断が出来ないでいた。


「うろたえるな! それでもこの街を守る警備兵ですか!」


 そんな中に一人声を上げ沈静化させた。

 声を上げたのは聖天騎士団のフォルトだった。


「私は聖天騎士団のフォルトです!上層部からみなさん警備団をまとめ上げるよう伝達を受けここへ来ました、すぐさま西門に集結をお願い致します!」


 時はあまり無い、危機的状況であることを認識してもらいたい。

 フォルトはその想い一心で呼びかける。

 それに応えたのか恐怖心から来ているものなのかわからないが、フォルトの声を聞いた者は次々と指示した西門へと走っていった。


「隊長、大丈夫なんですか?研究所の方は」


「って言ってもお上が良いって言うからさぁ、でもまあ正義者の連中もなんでか撤退したみたいだし大丈夫だと思いたいけどさ」


 研究所の襲撃はまるで神災が起きた事で終わりを告げた。

 それはファレンの作戦が成功した事と現在進行形で起きた神災が原因。


 正義者達も神災が今のタイミングで起きるということは想定外だった。

 逃げるように撤退をしていった。


「ひとまず神災ね、ユリス!」


「ん、います」


 ぬるっとフォルトの後ろから顔を出すユリス。

 他の団員達は正義者達の戦いからここまで無休で来ているのに、唯一ユリスだけはいつもの表情、疲労を感じさせない顔でその場に立っていた。


「モンスターが西門に襲撃してくると思うから、その迎撃。いいわね?」


「ディザスターは?」


「それは出てきてから。それまでとにかく防衛を・・・モンスターを片っ端から倒していってわかった?」


 コクリとユリスは頷き、警備兵達と同じ方向へと走って行った。


 フォルトは目を閉じ冷静に状況を整理する。

  

 神災が起きて間もないが、報告には神災から現れたモンスターの大群が西門に向けて進軍しているとある。

 そして自分達が警護していた神災の特殊対策部は現在襲撃が合った為に活動不能状態となった。

 真偽のほどはフォルトにはわからない、ただそう言われた。お上から言われた。


 聖天騎士団は増援が到着するまでグインズを守れ。


 ただそれだけを言われたのだった。


(こんな時にあの旅人さんが居てくれたらな・・・)


 フォルトの願い、それはあの寄生ディザスターを一撃で倒し、ユリスとほぼ互角に戦ったレーグがこのグインズに居ないかという物。


 彼はいる、だが・・・フォルトの思っている願いとはかけ離れていることは、本人が知る由もなかった。







・   ・   ・






「ふーーーん、いいじゃんいいじゃん」


 俺とミミナは高い場所、ほぼ誰も居ないグインズの北西の壁の上から状況を見ていた。


 次々と西門の外と内側に警備兵と騎士団の方々が集まってくるのは中々絶景だった。

 逆に草原側、グインズへと向けて進軍しているモンスター達も物凄い量だった。

 普通ならモンスターの素材だやっほーーいと喜ぶところではあるが、とても残念なことに出てくるモンスターはその場で霧のように消滅してしまい死体を回収することが出来ない本当に残念だ。


「あの・・・レーグ様」


「ん? どうしたミミナ」


「えっと・・・その、し、神災ですね」


「あぁそうだな、物凄く嬉しい限りだ。この瞬間だけが祝福だ、最高に気分が良い」


 俺の応えに苦笑いを浮かべる。俺に気を使ってるのはよくわかる。

 あの研究所の一件から今だ。

 ミミナ自身思うところの一つや二つあるだろうに人の心配なんて。


 よっぽど俺を殺したいのか。お前に殺してくれと俺が哀願するまでやめない姿勢には感服するよ。


「・・・・・・」


 だからそんな切ない顔で見ても何もでねぇよ。

 ったく調子が少し狂うな。わけわからん妄想を繰り広げてくれていた方が気が紛れるというか・・・今だけは考えなくて済むというか。


「いいかミミナ、改めて伝えておくよく聞け」


 こいつには前もって簡単に説明はした、俺の目的やあ方向性を。

 だが今回の一件、自分でもまだはっきりしていない部分は多いけど。感情、俺の気持ちが少し見えてきたようにも感じた。


「俺の目的は神災、ディザスターだ。その情報、アイテム何でもいい。何でもいいから手に入れたい。だから・・・だかその邪魔をする奴は、誰であろうと容赦しない。それはお前でもだ」


 今までふわふわとしていた感覚、どうすればいいのかわからない。けれど出来るだけバレないように我が身を大事に動いていた。

 体だけじゃない、考え方も、関わり方も全部。


 甘えてはいけない、容赦してはいけない。

 敵は、手加減なんてしてくれないんだから。


「レーグ様」


 ミミナがその場で俺に跪く。

 自分の胸に手を当て、忠誠を誓うように目を閉じる。


「私は何時如何なる時もあなた様のお力になることをお誓いします。どうか私を、あなたの思うままこの身全てをどうぞお使い下さい。 全身全霊を持ってお応え致します」


「ふん、期待しないでおく」


 こいつの言葉は信用できないというか、今までのご主人様にも同じ事を言っている。どうしてもこいつの言葉はそう思ってしまう。

 でもまあ、自分で言った通り期待しないでおくのが一番。

 いつ誰が敵になるのかなんてわからない、無知だからこそしっかりと考える必要がある。


 保身の為じゃない、目的の為に、妨げを排除する為に。


「では早速ですが、レーグ様の今の目的はディザスターということでよろしいでしょうか」


「あぁ、ディザスターさえ殺せれば街がどうなろうと知らない」


「わかりました」


 確認ということだろう。

 改めて俺の考えを聞いてその目的の為の行動を決めたいのか、ミミナは口に手を当て考えていた。

 

 まあこいつは馬鹿だけど、俺よりも学や経験もあるだろうから興味は十分ある。

 聞くだけなら問題ない、今までなら邪険に扱う必要もない・・・はず。


「今後は何か思いついたら適当に話せ、耳だけは動いてるはずだから」


「はい、わかりました」


 目的の為、目的の為。

 

 そう・・・それだけだ、今はもうそれだけで十分なんだ。







・   ・   ・







「来たぞー!! 12時正面! 敵総数不明! 師団クラス!」


 先行した偵察部隊が声を上げ、陣形を整えた部隊に伝令を告げる。

 敵の数は待ち構えてる迎撃部隊の10倍近く。1人10人殺せば行けるとかそんなレベル。


 迎撃部隊の影から俺とミミナはその様子を伺っていた。


「魔法部隊! 先制攻撃! 撃てーー!!!」


 ついに戦闘が始まった。

 神災から現れたモンスターは見たことのあるようなタイプばかり、だがその数が異常だ。

 いくら魔法で吹き飛ばさそうといくら一人で多くを倒しても敵の進軍は止まらない。


 グインズからの迎撃部隊をよく見てもあまり一騎当千の人間が多くいるようにも思えない。

 それこそ・・・。


「・・・・・・」


 今も無心で、かはわからないけども、たった一人で敵陣に突っ込み次々と蹂躙しているのは、あのイノシシだけだ。

 斬り付けては投げ、斬り付けては投げを繰り返している。


 相変わらず素晴らしい速度だかと・・・。

 

「ん?」


「あん?」


 今一瞬イノシシがこっちを見た。

 また匂いって奴か? 本当にふざけてるな。


「どうかしましたか?」


「いやなんでも無い、とりあえず行くぞ」


 今はとりあえずいい、あいつ等はあいつ等で勝手にやり合ってくれればそれだけでいい。

 こっちの思惑通りにしてくれればそれでいい。


「ですが、思った以上に戦えてますね。予想よりも敵の進軍が遅れているようですね」


「一番の理想はあのイノシシを殺せればいいんだけど。今はそれよりもディザスターを探すのが先決だ」


 ミミナの提案は単純だが思った以上によかった。

 俺達はモンスターの進軍に一切手を付けない。それで迎撃部隊ならびに騎士団関係の消耗も一つの狙い。

 出来るだけ大きな損害などを出してくれればそれに越したことは無い。


 その為にもディザスターが現れたてもすぐには倒さない。


 出来るだけ時間を使って迎撃部隊の損耗を狙い、最終的にディザスターを俺の手で倒す。

 ミミナ曰く、損耗が激しければ神災後の騎士団はガタガタになるだろうからそこを潜入して情報収集。

 神災から出たモンスターに手を出さない事でそこまで進言した。いやはや、モンスターに手を出さないまでは俺もそのつもりだったけど、その後ってのはあまり考えて無かった。


「ミミナ、お前の考えでいい。もうディザスターは出ていると思うか?」


「それを聞くという事はレーグ様、何か感じてるのですか?」


 感じてる? そうなのかもしれない。

 無意識の内に何かを感じてるから俺はミミナに聞いたのか。

 そう、変な気分だった。それは無駄にあのビッチのミミナが糞真面目な面をしているからなんてのは当然違う。

 気配とかじゃない。神災特有の空気・・・な、わけも無い・・・。


ギィイィィイイイー!!!


 モンスターが一匹突然現れた。一匹だけだ。

 すぐさま、ソードで真っ二つにして迎撃をする。


「大丈夫ですか!?」


 ミミナが心配して駆け寄ってくるが、当然ダメージなんて受けていない。

 ゴブリンだ、小さい子鬼。普通に洞窟とか見掛けるような奴だ。

 武器も持たずにほぼ裸一貫で襲いかかってくるなんてな。


「・・・・・・」


 殺した死体、徐々に消滅していく姿を見る。

 神災なら特別不思議なことではない、ただ何か違和感を感じた。


 さっきから感じる違和感・・・。


「戦況は?」


「えっと・・・今だ変わらずです」


 迎撃部隊と神災モンスターの戦いは均衡してるという所か。その名の通り迎撃するだけで良い、下手に攻める必要性が無いから楽なのか。


 それにこのゴブリン・・・どうして単騎で居た?

 それだけが気がかりだ、一体こいつは・・・。


「ひとまず様子見だ、この場に留まろう」


「かしこまりました」


 しゃがめば隠れるほどの高さがある茂みに二人で身を隠す。

 ミミナは周囲の警戒している。そして俺はその違和感を正体を探る。


 何か見落としている、いや今までのような考えはやめよう無意味だ。


 常識、普通、当たり前、そんな物無い。捨てるんだ。





ボォォオォオオオオンッ!!!!





 爆発音?

 方角は・・・。


「街か」





・   ・   ・






「敵襲! 敵襲!」


「コンザー騎士団長! 西門に敵が・・・奇襲です!」


 ユリス達迎撃部隊から更に後方には多くの騎士団達が居る。その指揮を取っているのがコンザーだ。

 金髪で高価な甲冑を纏っている男だ。

 ついさっきまで敵の気配など微塵も無く、騎士団によっては優雅に過ごしている者達も居た。

 そんな中に神災のモンスター達が突如として現れた。


「ふざけるな!! 迎撃部隊は一体何をしている!!」


「それが、こちらの索敵範囲外から迂回してきたようでして」


「すぐに迎撃部隊を撤退させろ! 挟撃させるんだ!」


 迎撃部隊が撤退、つまりは目の前の敵に背を向けるということ。

 せっかく維持していた戦線ラインを一気に下げる事になる。


「しかしそれでは!」


「いいからすぐにやらせろ!! これは命令だぞ!!」


 怒鳴り散らすように命令するコンザー。脱兎の如く逃げる団員はすぐさま伝令を飛ばす。

 同時に西門防衛隊にすぐさま迎撃するように伝える。


 一気に慌ただしくなった。自分達は高見の見物を決めているはずだった物が一変してしまったのだ。


 迎撃部隊はフォルト率いる聖天騎士団が統制を上手く取っていたが、こちらのコンザー率いる部隊は真逆だった。

 騎士だと言うのに怯える者が多かった。

 自分は前線に行こうとせずに他の人間を迎撃に向かわせようとまるで伝言ゲームのように殆どの人間が前線へ向うのを拒んでいた。






 そんな中でも迎撃部隊は戦っている。そして戦っている最中にコンザーからの指示が最前線で指揮をしているフォルトの耳に入る。


「撤退!?」


 それは誰しもが耳を疑った。

 状況は理解出来ている、敵の奇襲で対応しなくてはならないこと。

 だがコンザーの指示には納得できるはずもなかった。


「なんだよその指示、ふざけてるのか」


「こんな所で撤退なんかしたら俺達が挟まれるじゃねーかよ」


 前線維持は出来ても目の前の軍勢は勢いを止める事はない。

 気を許せば一気に雪崩れ込んでくるのは必然。死傷者が出るのは間違いない。


 苦渋の決断。


 このグインズで一番の命令権を持っているコンザーの指示には従わないといけない。

 撤退しては今共に戦っている者を危機的状況に追いやることになる。


 時間は待ってくれない、むしろ急かしている。


 フォルトに、考える時間は無かった。




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