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認知 と 想起


バシューンッ!!!


 左手のワイヤーが射出された。長く何処までも伸びるワイヤーを見守る。

 するとガキンと音と共に放ったワイヤーが突き刺さった。そこは何も無い空間、いや目に見えないだけで何かがあるんだ。

 詳しくなんて知らない。だが確実にある。それは羽付きモンスターの攻撃が証明してくれたんだ。

 この空間は見えない何かに覆われていると。


「じゃあ、あとは好きにしろ」


「は!?」


「わかりました、レーグ様。私は出来るだけ遠くに居るように致します」


 二人は異なる反応を見せた。ぱっつんは何が何だかわかっていない反応、ミミナはすぐに理解したように俺に背を向け走り去る。

 ぱっつんの表情を見ると少し笑いが込み上げる。わかるわかる、状況が理解出来ない時って嫌だもんなー。


 そして俺はワイヤーを巻き上げた。


 同時に俺は地面から浮き空中へと向かうのだった。


グァァアア!!?


 思惑通り羽付きが俺に目掛けてバンバンと衝撃波を飛ばしてくる。

 だが俺の上昇速度に追いつけないらしい。強い突風だけが俺の居たであろう場所に次々と放たれていた。


 これなら大丈夫だ。機動力が高い方じゃない俺でも、一人で上手く羽付きの攻撃をかわす事が出来そうだ。


 このまま一気に上昇を続ける。


 ワイヤーが突き刺さってる居る最高高度が目視出来た。ソードを展開し見えない結界へと突き刺す。

 

「くっ・・・駄目か」


 上昇する勢いに合わせ結界を破壊出来ないか試したが上手くはいってくれなかった。

 俺だけの力じゃこの結界を破壊するのは無理か。


「やば・・・」


 感傷に浸ってる場合ではなかった。羽付きの攻撃が目の前まで来ていた。突き刺していたワイヤーを引っこ抜き身体を全力で動かし攻撃を避ける。


バリンッ・・・!!


 当然狙ったわけじゃない。俺はが突き刺したワイヤーの場所に羽付きの攻撃が綺麗に直撃し、ヒビが入った。


 つまりは・・・。


「こうゆうことか」


 落下している俺はすぐさま同じ様に上空へとワイヤーを射出する。

 そして同じ様に巻き上げながら羽付きの攻撃をかわし続ける。


バリンッ・・バリンッ・・・!


 よし、思った通りだ。


 こいつ等の攻撃力は想像以上に高い。それはシールドで受けた身だからこそわかる。

 下手したら俺の全力魔力を費やすよりも強いんじゃないかと思えるくらいに重い一撃をポンポン撃ってくる。


 ならそれを使う手は無い。

 こいつ等の攻撃を利用して、この空間を破壊する!


「危ねっ」


 考えるのは簡単だ。先ほどから俺への攻撃が更に激化したようにも思える。

 当然あんな物が直撃したら堪ったもんじゃないのは言わなくてもわかる。

 さっきから着ているローブが物凄い勢いで靡いてる。

 いつ直撃しても可笑しくない。見えないが魔力の動きを見るんだ。

 視界に囚われず見えない魔力を感じ取ることに集中するんだ。


「あいつ等は・・・逃げきったか」


 恐らくミミナ達は見えない物影に隠れているのだろう。

 少なくても俺の視界に映る羽付き達は全員俺を撃ち落とそうと躍起になっているのはわかる。

 心配をするわけじゃない、ただ俺へと向けてくれないと早く結界が割れない。


 一匹でも多く結界へ向けて攻撃してくれないと意味がない。



バリンッ・・バリンッ!!!!

 


 今まで微かに聞こえていた割れる音も徐々に大きくなっているようにも感じる。

 恐らく順調に破壊出来ているんだろう。このまま猿のように飛び続ければ必ず結界を破壊でき・・・。


グアァアアアアアアアアアアアアア!!!!!


 全ての羽付きが一斉に叫び出した。

 地上を確認した時、怖気が走った。俺のこの作戦は羽付きに知性がほぼ無く本能的に攻撃するのが前提だった。

 だが今の羽付きはまるで意志を持ってるかのうように全員で一斉に攻撃をしようとタイミングを合わせていた。


 大きな口をみなで開きさっきまで見えない衝撃波だった物とは違う白い風を纏っているような巨大な球体を次々と形成させていた。


 大技。


 しかも一気に決めると言わんばかりに全員で同じ動きを見せている。

 あれはヤバい。絶対に・・・ヤバいって!!



ォォォオォオォォォオォォォォオ-!!!




 羽付きの雄叫びと共に一斉に発射された。

 一気に避けきろうとワイヤーを最速で巻き上げる為魔力を注ぎ込む。

 もっと早く。もっと早く移動してくれ。


 振り向かなくてもわかる。とんでも無い俺を殺しに来てる魔力の塊が背後にまで迫ってきているのがわかる。

 こんなとんでも必殺技を隠してるとか冗談も大概にしろ。


 くそ、ワイヤーも火花を散らすほどに高速で巻き上げている。自分でもどれほどの速度が出ているのかわからない。

 もはやフードが吹っ飛んで素顔が見えてしまってるがもうそれどころじゃない。


 このままじゃ・・・。





グンッ・・・。

 



「え・・・?」





 次の瞬間強烈な余波が荒野全体を覆った。

 強風、地震、飛び交う岩や石に砂。

 

 空は・・・大爆発を起こしていた。






バリィィイィィィイインッ!!!!!!





 空間が割れる音と、共に。





・   ・   ・







「んっ・・・ん」


 あぁ・・・頭痛い、一瞬気絶していた。


「お目覚めになられたのですね」


 目が覚めると目の前にミミナの顔、俺は仰向け。

 あぁ、膝枕って奴か。

 

 あの羽付きの最後の攻撃、俺は確実にやられていた。だがこうして生きているのは恐らく目の前のミミナのおかげだろう。

 こいつが魔法で俺の事を思いっきり引っ張ったのだろう、感覚に見覚えがあったからすぐにわかった。こいつの力はいまいちわからん、帰ったら聞いておくか。



「下手くそ」


「え?」


 俺の言葉にポカンとした顔をする。

 当然俺の言っている意味がわからないであろうことはわかる。別にわかってもらおうと思ってない。

 ただ俺が求めている膝枕はこんなムッチムチの物じゃない。


 ただ・・・それだけだ。


「それよりも・・・おい」


「あ、はい」


 俺の言葉にミミナはすぐに行動を起こした。単純な話し少しでも情報をってことだ。


 周囲を見渡すとそこは俺達が居たであろう研究所の中だ。

 戻って来れたんだ。見覚えのある大きな扉を見て確信した、ここは目的の扉の奥だと。


 それにしても散々な目にあったな。

 でも、今も左手に付けている物に目線を送る。

 これは良い。ディザスターから出た武器なんてとか思ってあまり触れないでいたけど、ディザスターを倒せばこんな武器?まで手に入るなら今後も楽しみになるってもんだ。


「レーグ様! これを!」


 ミミナの声が響く。

 辺りには誰も居ないのか? まああの空間転移の罠があれば必要ないって算段なのか。それにしても不用心過ぎるだろう。


 とにかく呼ばれた場所へ俺は足を運んで・・・言葉を失った。



 待て・・・なんだこれ。

 俺達のいる一室から大きなガラス越し一枚、もう一つの部屋があった。


「これが奴らの研究よ」


 俺の後から入ってきたぱっつんが腕を組みながら告げた。

 これが・・・研究。


 つまり・・・。




「ァア・・・グゥア・・・」


「グチャ・・・ガァ」


「ガガ・・ギィ」



 目の前には見たことのある・・・いや、さっきまで見ていた物がそこに"居た"。


 『羽付きのモンスター』


 違う、羽付きになろうとしている物だ。


 片腕だけが長い化け物の手になっている者、片翼だけ飛び出している者、身体の半分が化け物と化してる者。


 グチュグチュと音を立てているのが聞こえる。

 それだけじゃない、言葉にならない声が充満している。


「これが・・・全部・・・奴隷だと」


「・・・そうよ」


 俺の質問に静かに応える。

 これが研究? 神災に対抗する為の術。


 人を・・・化け物にするのが、対策。


 確かに奴の力は桁外れなのはわかる、戦った俺が一番身に染みている。

 だけど、あれが・・・元人間。


 いや・・・奴隷・・・。


 俺と同じ・・・奴隷・・・。


「レーグ様・・・」


 何なんだよこれ・・・非合法の研究って、これがそうなのか。

 俺の想像力が無かった? 元々興味が無かっただけだ、何かしらの情報。神災に関する情報さえ知れればそれでよかったんだ。

 その為にこんな所まで、不服な思いを続けながらここまで来たのに。


 なんで・・・こんなのを見せられなきゃならないんだ。


「助けます」


「は?」


 コイツは・・・何を言ってるんだ。

 助ける? まさか、この奴隷達を?


「おい、待てよ」


 俺はつい前へ進もうとする肩を握った。

 すぐに振り向き、何かと言いたそうな目で俺を睨む。

 待て、本当の本当に待ってくれ。


「時間がありません、早く彼等を助けないと」


 彼等・・・。彼等って、この奴隷達の事を言ってるのか?

 もはや人型の形を留めていない・・・コイツ等を。


 ダメだ・・・。


 もう判別出来ない。


 俺には・・・奴隷達をこんな姿にした奴らと、今目の前にいる奴が。

 判別出来ないでいる。


「なんで・・・助けるんだよ、もうこいつ等は無理だってわかるだろ」


「どうして諦める必要があるんですか、彼等はまだ生きています。こんな姿でも、まだしっかりと生きているんです!」


 嘘だ。

 いや・・・本気で・・・本気で言ってるんだこの魔法騎士様は。

 本気で、本気で正義者様なんだ。


 駄目だ、もう・・・頭が働かない。


 何が良いのか、何が悪いのか。もう判断が出来ない。

 一体何なんだこの世界は。

 めちゃくちゃだろ、神災から人を守ると言っておきながら、人をこんな化け物にする連中。


 そして人を守る為に人に反旗を翻す奴。


 なんで・・・なんでこんな馬鹿げた事を平然とコイツ等は。


「話しは以上です。時間は無いんです。彼等の救助手伝ってください」


 こいつ等は・・・人を。


 人を・・・。


 人・・・?

 




バンッ!


 俺は・・・正義者の足元にアローで撃った。


「何の真似ですか!」


 何の真似。

 それはこっちの台詞だ。

 

 人間が・・・。


 人間様がこれ以上余計な真似をするな。


「・・・俺が殺す」


「は!?」


「俺が・・・彼等を殺す。手出しはさせない」


 俺は自分のフードに手をかけた。

 そして、自分の素顔を正義者へと見せた。


 見えるように、見せつけるように。

 俺の奴隷紋を目に焼き付けてもらう為に。


「あ、あなた・・・」


 俺の顔に驚きを隠せないでいたらしい、動きを止め言葉を失っていた。

 そんな正義者を横目に俺は中へと入る。


 厳重な扉をソードで真っ二つに破壊する。

 その瞬間、久しぶりの感覚を味わった。


 人間の腐った臭いだ。

 腐敗した人肉、垂れ流された排泄物、人間から出る悪臭を詰め込んだ激臭。


 奴隷ならきっと誰しもが味わったことのあるであろう臭いだ。


「ガァッ・・・ァ」


 いや・・・もはや目の前にいる奴らは、奴隷ですらないのかもしれない。

 もう境界を越えている。

 これで、生き続けるなんて・・・出来ない。


「だから!」


 ソードを振るう。

 一人の奴隷が真っ二つになる。悲鳴なんて上がらない。当然他の奴らも声を上げることはなかった。


 ソードを突き刺す。

 ビクンと一瞬動きはする物のすぐに力が抜けそのまま地べたに倒れ込む。


「・・・・・・」


 もはや作業の様に次々と奴隷達を俺は殺していった。

 出来るだけ一撃で、苦しまないように、痛みを感じないように、怖がらないように。

 

 すると目が合った。


「ぁ・・・ぁあ」


 一人の子供の奴隷。

 顔の半分が溶解化し片目で俺の事を見ている。

 俺は立ち止ってしまった。息を飲んでしまった。右手を震わせてしまった。


 子供・・・。


 あの子と同じ・・・。


「っ!!」




 その奴隷は・・・目を閉じて、笑った。 





「うああああああああああああ!!!!!」




 俺は叩き付けた。

 ソードの出力を上げ、木端微塵にした。

 八当たりのように


「あああああああ!!!!」


 もう一つ一つ丁寧殺すことを止めた。

 叫びながら、俺の周囲にいる者を全て殺し続けた。


 当然・・・抵抗なんて無い。


「あぁああ!!! あぁっ!!! あぁあっ!!!」


 念入りに、肉片を残さないように。

 もう殺した死体も、復元できないくらいに。

 何度も何度も、叩きつける。


 人間達にこれ以上・・・。


 利用させない為に。


バリィィイィィィイイーッン!!!!


 たった一枚のガラス、人間との物理的境界も全て壊した。

 もう何もかもここに残しちゃいけないんだ。




「ああああああああああああああ!!!!!」








 俺は・・・怖かったんだと思う。


 これが、奴隷の末路。いや奴隷の可能性だと言う事に。

 もしかしたら、俺はここに居たのかもしれない。何か、たった一つの歯車が合えばきっとここに居た。


 そしてあの正義者に救助され・・・生きていた?

 そんな事を考えるとおぞましくて震える。

 

 人間でも奴隷でも無い存在として生きる。

 人型ですら無いから外になんて出歩けない。奴隷という枷だけどれだけ大変なのかわかってるつもりだ。

 

 それなのに・・・それなのに。





 わかって・・・ないのか。

 俺は何一つ・・・わかってない。


 楽観視していた、想像力が乏しかった、無知だった、何一つ・・・わかってなかった。

 知る必要もないと思っていた、知りたくもないとも思った。


 だから・・・だから俺は・・・。


「へっ・・・へへへへ」


 そうだった。

 また、忘れてしまってた。目移りしていた。


 だからそうだ、俺は全てを捨てようとしたんだった。

 知れば辛くなる、知れば知るほど考えてしまう。

 だから全てを捨てれば問題が無かったんだ。 




 口角が久しぶりに全開で上がる。

 これを、忘れてはいけない。


 また目移りをしてしまうかも知れない。

 

 だけど、忘れちゃ駄目だ。





 知って苦しむのは自分だということを。



 飲み込んでは・・・いけないと。




「へへっ・・・へへへはははははっははは」









- スキル 『懐疑なき結合』 解放 -





 また・・・新たなスキルを手に入れたようだった。













「・・・これは、レーグ様!」


 ミミナが慌てて声をかけてきた。

 誰かが来たわけでは無い。

 

 異変。


 それは俺も気が付いていた。


「なんで・・・このタイミングで」


 ここにいる全員がすぐに感じてとっていた。








 それは、今も戦いが行われている主戦場でも感じられていた。

 むしろ、戦いはその異変によって止まったと言っても過言ではない。


「空が・・・」


 全ての人間が同じ方向の空を見上げていた。

 自分達の頭上に広がる暗い夜空とは違う・・・黒と赤が混じり合った空を。



「神災が・・・起きる・・・」

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