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無能? か 有能?


 俺は一人ぱっつんの後ろを走りながら申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「あの冷血、いつの間にあんな耐性を持ってたんだ」


(すみません・・・それ多分俺なんだ)


 あの寄生ディザスター戦の俺の嫌がらせがなんでこんなところまで響いてるんだよ、もう俺への嫌がらせだろこんなの。


「急いで、研究所へ向いましょう」


「はい」


 こっちの女性陣はなんとも逞しい。

 ルートは決まっているらしい、作戦詳細は一切聞いてないがぱっつんの言うことを聞いていればとりあえずいいだろうという感じで基本的に流れに身を任せている。 


 とにかく外周を回り主戦場から目的地である研究所に向かう。




 ぱっつんの作戦通りというやつなのか、俺達は何事も無く研究所に到着していたのだった。

 当然研究所内は正義者さん達の襲撃で混乱していた。

 情報の飛び交いで本当の情報が不明瞭だった。主戦場の状況はどうなってるのか、敵の数はどれくらいなのか、敵の目的は何のか。


 研究所に侵入されてるのかどうなのか。


 個人的にはこんなあっさりと侵入出来たことにビックリだったが、研究所内を見ていたらそれも頷けた。

 あれだけ大きな襲撃を受けているのにも関わらず指示系統がめちゃくちゃだ、俺なんか思うくらいだから相当酷い気がする。

 

「研究資料はどうすれば!!!?」


「護衛騎士団達は何をやってるんだ!!!」


 研究員達も研究員達で右往左往している。こんな状況でも動けるような避難訓練的なのはしていないのか、まだ煮詰めていないだけなのか。

 あまりにももろ過ぎるような印象を受ける。


 王国が重い腰を上げたとは言ったがただ上げただけなんじゃないかと疑ってしまう。


「急ぎましょう、敵が混乱してる間に」


 敵が混乱ねー・・・。

 勝手に自爆してるようにも見えるけど、とりあえずはいいか。

 ここは一つぱっつんの言うことを聞いて、その研究資料とやらを少しでも拝見できればそれでいいか。


 とにかく俺達は敵にバレないように前へと進んだ。

 ぱっつんの動きを見ている限りは内部構造は把握しているのだろう。

 勝手な推測だが、魔法騎士団とかの特権を使って視察と銘打って構造の把握でもしたのだろうか。

 

「着きました、あの扉です」

 

 ぱっつんが指差す扉は他の普通の扉よりも大きな扉だった。色も黒く鉄よりも硬そうな素材で出来ているような気がする。けれど監視が一人も居ないのは何故なのか、この騒ぎに出払ったとでもいうのか? どんだけ酷い警備なんだよ。

 結局誰にも見つからずに扉の前に来たわけだが。


 で、あの扉をどうやって開けるの?


「どうやって入るのあれ?」


「これで開きます」


 右手を広げて見せられた。

 うん、わからないんだごめんねごめんね! 手があれば開く扉ってなんだよ。


ガチャンッ!!!


 ゴゴゴと音を上げゆっくりと扉が開く。

 ぱっつんが扉に手をかざした瞬間に開く扉ってどんなんだよ、当然なのか? 当然の流れなのかこれ?


「では、行きましょう」


 俺は一人状況を全く理解できずにいた。それはまあ流れに身を任せるとは言ったけどもここまで置いてけぼりにされるのもどうかと思うんだが。


 そんな俺の心情なんか関係無くぱっつんは先へと進む。

 もちろん俺もただ身を任せるしか出来ないんだが。


「・・・っ! ここは!?」


 扉を抜けた俺達は・・・何故か異質な場所にいた。

 さっきまで建物の中に居たはず、なのに今は紫の空が見える。


 周囲に広がるのは荒野。完全な屋外。


 二人は慌てふためいてるが、もう逆に俺は冷静にボケっとした顔でその光景を受け入れていた。もう何が来てもいいや感が俺の心を侵食していた。


「というかこれ完全に罠だと思うんですが」


 それ以外の何ものでもないだろう。そう考えた方が色々と辻褄が合う。

 一切敵と遭遇しない、扉前の警備も居ない、ぱっつんが簡単に扉を開けれた。

 俺もだけど、どうして気が付かなかったのかねぇー。



 そんな事ばかり考えてると、俺達の目の前に魔方陣が複数形成され始めた。

 地面だけでは無く何も無い空中にも魔方陣が形成されていた。

 そしてその魔方陣からはゆっくりとモンスターが姿を現した。


「どう考えても俺達を狙ってるよな」


グォォオォォオオオオオオ!!!!


 現れたモンスター達の咆哮が響く。

 パッと見は人型なのだが、手足や口が長く伸びて、大きな翼を生やしている。


 なんだこの気味の悪いモンスター共は、普通にそこ等にいるようなもんじゃないのはすぐにわかるけど、こんなのも世界にはいるってことなのか。


「前衛を頼む! 魔法詠唱の邪魔をさせるな!」


 前衛って言われても・・・。

 まあここで駄々を捏ねたって仕方無い。


 すぐにソードを展開しぱっつんと羽付きモンスターに間に入る。


「・・・なんだこいつ」


 動きがとてつもなく遅い。せっかくの翼は大きく広がっているのにも関わらず一切飛ぶ気配が無い、四足歩行でしかもずりずりと自らの身体を地面に擦りながらこちらに近づいてくる。


グアァアアアアアアアアア!!!


 近付いてこないなら、そんな事を考えていると大きな口が開き見えない何かが吐き出された。


「ぐぅう!!」


 吹き飛ばされた!?

 俺は何かに衝撃を与えられ吹き飛ばされていた。

 これが羽付きの野郎共の攻撃ってことか?


「ちっ、シールド!!」


 体勢を整え左手に魔力の盾を形成し、一気に距離を詰める。


 再び羽付き達の口が開き、また同じ攻撃が来る。 

 すぐにシールドで防ごうと左手を前に出すが。


「くっ・・・! どれだけ撃ってくるんだ!」


 羽付きの攻撃一発だけなら何とかなるが、目に入ってるだけでも10匹近くはいる。その大半が一斉に俺に向けて同じ攻撃をしてきたとなると、その場で踏ん張るのでやっとだ。


「一回離れなさい! アクアストリーム!!」


 ぱっつんの指示に従い一度距離を取った途端、羽付き共の最前全体に水の渦が現れた。

 これがぱっつんの魔法か、魔法騎士団って言うくらいだからどんな魔法を使うかと少しだけ興味はあった。なんて言っていいのかわからないがまさか水属性の魔法とは思いもしなかった。


 水の渦は羽付き達を巻き込みながら範囲を広げていく。

 広がっていくのだが・・・。


「・・・おい、効いてる感じしないぞ」


 確かに前進しようとする動きは止まってる。

 けれど、その渦の見た目からしてかなりの高等魔法だということもわかる。

 

グァアアアアアア!!!!


 またしても俺に目掛けて見えない衝撃波を放ってきた。

 両手にシールドを展開し攻撃を防ぐ。

 一切の衰えもない攻撃にまたしても俺は踏ん張る事しか出来ないでいた。


「そのまま敵の攻撃を引き受けて」


「馬鹿言うな!! お前の攻撃効いてないんだぞ!!」


 こいつ! 戦況が見えてないのかよ! お前の攻撃は確かにそこらの魔法使いよりも数段に強いかも知れないけど、この羽付き相手には全く効いてないんだぞ。


「くそっ!!」


 このまま防戦一方はごめんだ。

 水の渦が消えた途端に再び距離を詰める。


 見えない攻撃は感覚で避けるしかない。幸いにも敵はまだ正面だけだ。


 地面を蹴り飛び出す。またも馬鹿の一つ覚えかのように大口を開き出した。


「アロー」


 口を開いた瞬間に魔力の矢を放つ。

 顔面に直撃、羽付きからの攻撃をされる前に止めれた。

 

 よかった。魔法攻撃が一切効かないってことじゃないなら勝機はある。

 距離を縮めながら魔力矢を当て続ける。

 

「固いな」


 3、4発じゃあ倒せない。なら一気にソードで斬り付けて倒せるか・・・。


「レーグ様! 右!」


「っ!?」


 反射的に右にシールドを張った。

 言われた通り視界外から俺目掛けて衝撃波が飛んできた。すぐにシールドを展開して助かった。


「くっそ!」


 助かりはしたがすぐに一度後退した。

 ここまで距離を詰めても一打与えることも出来なかったか。

 

「私に考えがあります、お手を」


「あ? こんな時に・・・わかった」


 急に何を言い出すのかと思ったが、真剣な顔で俺を見るもんだからつい承諾してしまった。

 そして左手を差し出した瞬間。


「おぉおぉおおぉおぉ!!?!??!」


 何かに引っ張られるかのように俺は物凄い速度で前進していた。

 だが、これなら。


「こん・・・のぉお!!!」


 ソードをすぐに展開し一匹の羽付き目掛けて斬り抜けた。

 すぐに後ろを振り向き確認した。


 綺麗に真っ二つに斬れていた。当然その場で動きを止め大量の血を吹き出し羽付きは倒れた。

 ようやく一匹倒す事が出来たと一息付く暇は与えられない。

 斬り抜けた先は完全に敵の群れのド真ん中。

 いくらシールドで防ぎ切れるとはいえこのままじゃ・・・。

 

「おぉぉおぉぉお!!?!?!」


 どうしようか考えている内に俺は再び何かに引っ張られた。

 今度は後退するように元の位置、手を合わせた場所にまで戻された。


「よかった、何とか上手くいきました」


「上手く? こうするなら早めに言えよな!」


 説明義務というのは無いのかコイツは。

 急に突撃行ってこーいからの後退戻ってこーいって馬鹿じゃねーの。


 おかげで一匹倒して戻ってこれはしたが。


「レーグ様なら大丈夫だと思いましたので、では、次よろしくお願いします!」


「だから!俺のタイミン・・ぐぅううううううううううう」


 今度は勝手に俺の手に触れて同じように高速で前進させられた。

 一体どうゆう原理だよこれ! 何かしらの魔法なのはわかるが身体強化じゃないのは間違いない。

 強いて言うなら何かに吹き飛ばされてるだけだろ!


「二匹・・・目!! ぁああああああ!!!?!!」


 完全におもちゃの様に扱われてないか俺?

 本当に息を付く暇も無く次々と飛ばされ引っ張り戻され飛ばされを繰り返してる。


「ストップ!! ストップ!! ミミナ!!!」


「え?」


ゴオォオォォォォオォンッ!!!


 俺は地面に顔を突き刺さるように激突した。

 え? じゃねーよこのアマ! 絶対に力加減間違えただろ。俺じゃなかったら絶対に死んでるぞ。


「あの・・・今なんて・・・」


 気持ち悪いな。本当なら是が非でもこいつの名前なんて呼んでやるもんかと強い意志で臨んでいたのに身の危険を感じて口走ってしまった。

 予想通り気持ち悪く赤面して恥ずかしがってるし。


「いいから、俺のタイミングで行かせて頂けませんかね? ミ・・・ミミナさん?」


「そこまで仰るのでしたら・・・や、やぶさかでは・・・」


 本当に気持ち悪いなーコイツ。右手だけ出して全身くねくねと気持ち悪い。

 まあいい、ただその手に触るだけであんな超人的な速度が出せるならいい。

 羽付きも高速で近付く俺に対して衝撃波を当てる術は無いみたいだし。このまま行ったり来たりを繰り返していれば。


「な・・・まだ増えるのかよ」


 改めて攻勢に出ようとした時再び魔方陣が出現する。

 ご丁寧に俺が倒した数出現してやがる、まさか無限に出してくるんじゃないだろうな。


「おい! ぱっつん!」


「ぱっつん!?」


「どうすりゃいいんだ! このままだと流石にこっちが持たないぞ。何とかならないのかよ!」


 一匹一匹はミミナの糞アマの力を利用すればなんとか倒す事は出来るが。

 このままじゃこっちの魔力が尽きて終わる可能性が高い。

 その前にこの打開策を見つけないと。


「そんなの・・・この結界を破壊するくらいしか思いつかないわよ」


「あぁあ!? 聞こえないですけど!!?」


「この空間を壊すくらいしかわからないって言ったのよ!!」


 なんだコイツ、自分の魔法が効かない事にいじけてたのかよ。使えないな。

 おまけに打開策も無いとか本当に使えないな。こんなんが魔法騎士団の一つを任せられてる団長かよ。


(愚痴っても仕方ないか・・・。で、この空間から出る方法か・・・俺がわかるわけねぇーーよな???)


 何かのオブジェを破壊すれば出れるとか? いやいや見渡す限り荒野なんですが。

 気が付いたらここへ来てたんだから奇妙な物なんてねぇーけど。



グァアアアアアア!!!!


「くそ、考える時間くらいくれよな!」


 羽付きの口が再び開かれる。

 ミミナ達を守るようにシールドを全面に展開し防御体勢に入り攻撃を防ぐ。

 見えない衝撃波がシールドをガタガタと振るわせる、一体どんな馬鹿力なんだ。


 くそ面倒だ。すぐにシールドを払い、衝撃波の起動をずらし上空へと逸らした。




バリンッ・・・。




「あ・・・?」


 つい俺は不思議な音がした方向に目を向けた。

 今・・・なんかガラスが割れるような音? みたいなのが聞こえた気がするんだけど。

 

 まさかー・・・。この空間を覆ってる何かが割れたのか??


「おいぱっつん!! こうゆう空間魔法って内部から全体を壊せる物なのか!?」


「出来なくは無いと思うけど・・・けどそれにはそれ相応の力、魔力とかないと無理よ!」


 それ相応の力・・・魔力・・・あるじゃん。

 目の前に大量に。


 だが待て俺。

 仮に奴らの攻撃を全て払い除けて上空に飛ばせたとしてもキツイ。俺一人でそれをやるのは困難。当然この二人がそれを出来るとは考え難い。


 だとすると・・・一番いいのは俺達が空を舞う事・・・。方法さえあれば


(そんなのあるわけ・・・)


 ストレージを開き何か無いかなと見てもモンスターの素材や薬草に薬とそんな空を飛べるアイテムなんて・・・。


「あったわ・・・!」


 空飛べる奴あるじゃん。

 いや飛べるかこれ?


 でも、やってみる価値はあるか。


 俺は一つのアイテム、いや装備を取り出した。




- 硬鋼のつる 装備 - 




 左腕に灰色のガントレットが装備された。ただのガントレットではない、裏の前腕と手首の間に突起物が付いてる。

  

 一か八か。


 俺は装備した物を早速使用した。名前の通り鋼のつるが突起物の部分だ。


 それを俺は・・・上空へと撃ち込んだ。

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