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都立 成増航空高等学校  作者: 秋津ネオ


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旭町の聖域を貫く白銀の遠隔一閃、仲間たちの待つ社務所へ光の雨を降らせろ

 成増基地の上空でピタリと静止したままの中枢母機【零二】の操縦席では、副座の相羽みなみの前方の立体表示盤が激しく赤色に点滅していた。


 『上宮くん、すぐ隣の一キロ先にある旭町の成増神社で、応為さんの結界出力が急激に低下しているわ! 基地の周辺が綺麗になったことで、残存する敵の群れが一斉にマナちゃんたちへ雪崩れ込んでいる!』


 表示盤には、わずか一キロほどしか離れていない成増神社の森が、禍々しい黒紫色の人型霊体と中型多面体の群れに完全に埋め尽くされようとしている様子がリアルタイムで映し出されていた。


 『一キロ先か。なら移動する必要すらない。陣内、神社の境内に潜む全敵影の座標を即座にロックしろ!』


 主座の上宮多朗が鋭く命じる。一キロの距離など、今の月読炉心を宿した【零二】の火器管制からすればゼロ距離に等しい。


 『了解です。神社の鳥居内および社務所周辺の敵性反応、一括ロック完了!』


 後方の演算防壁席で、陣内竜太郎が鍵盤を叩き、瞬時に神社の全方位の敵座標をはじき出した。


 『マナとレプティリアンのオジサンを援護するぞ! 剛田、機首を動かすな、その位置のまま神社の森へ主砲の照準を合わせろ!』


 『おう、任せとけ! 動かなくても、一キロ先のオッサンの頭越しに蝿を叩き落してやるぜ!』


 飛行操縦席の剛田猛が機体の姿勢を微動だにさせず固定する。


 社務所の屋根の上では、レプティリアンの将であるザルクスが異形の大柄な体を大きく反らせて咆哮を上げていた。


 『小賢しい霊体の群れめ、我が重粒子銃の錆びとしたいか!』


 ザルクスの手元で二連装の銃口が火を吹き、神域を侵そうとする人型霊体の群れをまとめて焼き尽くす。しかし、その緑色の鱗に覆われた腕や肩にはいくつもの深い亀裂が走り、圧倒的な物量に押し切られそうな疲弊の色が濃く滲んでいた。


 そのすぐ足元、崩れかけた社務所の内部では、未来から来た少女のマナが球体通信機を両手で強く抱きしめ、必死に黄金の誘導波を送り続けていた。


 『多朗さん、相羽さん、早く来て! 応為姉さんの結界が割れちゃう!』


 『あたしの描く線だって、まだ折れちゃいないよ!』


 境内の土埃の中で、葛飾北斎の娘である応為が、自分の背丈の何倍もある巨大な霊筆を血まみれの手に握り締め、地面のあちこちに極彩色の護符を叩きつけていた。彼女が筆を振るうたびに淡い光の壁が立ち上がるが、押し寄せる敵の怨念はそれを上回る勢いで亀裂を広げていく。


 まさに神社の結界が砕け散ろうとしたその瞬間、成増基地の上空で静止したままの【零二】から、眩い白銀の光条が放たれた。


 移動などしない。一キロの距離を光速のエネルギー弾が一瞬で飛び越え、神社の鳥居の真上から境内の外縁を取り囲んでいた中型多面体と人型霊体の群れを、まるで焼き払うように一網打尽で消し去った。


 『上宮くん、神社の結界外縁に全方位防壁を展開! これ以上の侵入を完全に遮断するわ!』


 みなみが両手を立体表示盤の上で滑らせ、神社を取り囲むように青白い幾何学の障壁を張り巡らせる。敵の残党がその障壁に激突し、次々と光の粒子となって砕け散った。


 『地上の退路を完全に確保しました。マナ、応為さん、無事ですか!』


 陣内の声に、社務所の中からマナが顔を出し、満面の笑みで手を振った。


 『うん、無事だよ! 多朗さんたち、すごい遠隔射撃だったね!』


 応為も霊筆を地面に突き立てて荒い息を整えながら、ふっと不敵な笑みを浮かべた。


 『遠くからよく狙ったもんだねえ。だが、いいタイミングで神社の周りのゴミを綺麗に掃除してくれたよ』


 境内の一番高い場所で息を弾ませていたザルクスが、大きな銃身を肩に担ぎ直しながら鼻を鳴らした。


 『ほう、月の秘儀を纏ったその機体、なかなかの見栄えではないか。だが、まだ神社のすぐ裏手や隣接する住宅街の陰には、しつこい残存霊体が潜んでいるぞ。そこから動かぬまま、根こそぎ刈り取ってやれ』


 ザルクスの言葉に、多朗は深く頷いた。


 『了解した。オジサン、応為さん、マナ、ここからは完全な反撃のターンだ。陣内、成増神社から基地に至る一キロ圏内の全領域に高次元探査波を照射、隠れているすべての敵の居場所を暴け!』


 『お任せを。これより成増一帯の空間を完全に掌握します』


 陣内の手によって【零二】の機体から周辺の街並みへ向けて波長探査の光が放たれ、これまで神社の霊気に紛れて隠れていた無数の敵の影が次々と赤く浮かび上がった。


 地上と空が完全に一つに結ばれ、侵略者たちを逆包囲する完璧な布陣が整った。


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