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文化祭の君  作者: 獅堂最
after story 『浴衣の君』
54/56

第4話 『りんご飴の誘惑』

 *****


「七時頃に、橋のたもとね!くま先輩、菫をよろしく!」

「おう」


 そう明るく告げて、賑やかに去っていく凜たちを見送る。


 誠也せいやは一つ息を吐いて、そのごつごつと骨張った大きな手を、すみれに差し出した。


「行くか」

「……はい」


 数カ月ぶりに会った二つ年下の彼女は、数瞬目線を迷わせてから、少し冷えた指先をそっと乗せてくれる。

 誠也はそれを捕まえ、自分の熱を分け与えるように、ぐっと握り込む。


「久しぶり」

「はい。先輩は、その……お元気でしたか」


 思った以上に緊張しているのか、菫は普段ビデオチャットで話すときよりも、一段と口調が固い。それは、出会ったばかりの、まだ中学生だった菫を思い出させる。


 そんな様子すら可愛くて、誠也はつないだ手の親指で、彼女の手の甲をするりと撫ぜた。

 途端、手のなかのぬくもりがびくりと跳ねる。


 その反応に満足した誠也は、口元をふっと綻ばせて、見る間に赤く染まっていく菫の顔を見下ろした。


「元気だよ。受験生の菫サンは、毎日勉強三昧で、疲れてない?」

「だ、大丈夫です!今日のために、ちょっと詰め込んじゃっただけです」


 りんご飴のようになりながらも、ふんす、と力強く答えた彼女の手を引いて、誠也はお祭りの人混みのなかに、ゆっくりと踏み出していった。


 *****

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