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文化祭の君  作者: 獅堂最
side 駒野凜 『凜と花咲き、君思ふ』
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第22話 『解呪』

 *****


 舞台はクライマックスを迎えていた。


 初めは噛み合わず、居丈高いたけだかな野獣に、姫が怯えて逃げ回るような、ちぐはぐな二人だった。

 しかし、魔女が繰り出す様々な試練を、共に乗り越えてきた姫と野獣は、時に笑い合い、時に反発し合いながらも、少しずつ互いを理解していった。


 そんな二人に、魔女の使い魔が変じた、巨大な竜の影が、襲いかかる。


 剣を手に、勇敢に戦う野獣と、それを祈るように見つめる姫。

 しかし野獣は、巨大な竜の攻撃に、徐々に圧倒されていく。

 そして、竜の口から、灼熱の業火が放たれる。


「姫!」


 覆いかぶさるように、野獣が姫を庇う。


「ぐぁあああああ!」


 苦悶の咆哮をあげ、倒れ伏す野獣。

 そこに、とどめを刺さんとする竜の爪が、襲いかかる。


「もうやめてっ!止まりなさい!」


 竜の目の前におどり出て、両腕を広げて立ちふさがる姫。


「ここは、私の夢の中!だから、これ以上勝手なことは、させないわ!」


 声を震わせながらも、力強く宣言する姫。


「あなたなんて、ちっとも怖くないんだから!」


 野獣が落とした重たい剣を、両手で持ち上げ、振りかぶる。


「これ以上この人を傷付けることは、この私が許しません!」


 そう言って、頭上に掲げた剣を、でたらめに振り下ろした。その瞬間――


 ぽんっ


 間抜けな音と煙とともに、竜の影は消え去り、黄色い目をキラキラと輝かせた黒猫だけが、スポットライトの中に残る。


「にゃあん」


 可愛らしい鳴き声が上がったところで――


 ぱちぱちぱち


 場違いにも思える軽やかな拍手とともに、ライトの中に進み出る魔女。


「なかなかやるじゃないか、お姫様。それに王子も、ずいぶんと男ぶりを上げたようだね」


 黒猫を抱き上げ、紫の石が輝く杖を、指揮棒のように一振り、二振り。すると――


 シャララン


 涼やかな音とともに、またたく間に野獣の鎧が、引き剥がされる。


 人間の姿に戻った王子は、ゆっくりと起き上がり、あたりを見回す。

 そして、驚きもあらわに見つめる姫を認めると、安堵のため息を吐いた。


「姫……無事で、よかった……」


 その言葉を聞いた魔女は、高らかに笑い声を上げる。

 そして、もう一度その魔法の杖を、振りかざした。


 シャララン


 今度は、姫が着ていた鈍色のドレスが、重たいカーテンを引くように、硬い蕾が開くように、取り払われた。

 緞帳どんちょうのような布の間から現れたのは、菫色の華やかなドレス。


「今のお前さんには、そっちの方がお似合いだね」


 そう言ってもう一度、楽しそうな笑い声を上げると、魔女は煙とともに消え去った。


 *****

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