第21話 『舞台と魔物』
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物語は進む。
嘆きの姫は、千年の眠りに就き、夢の世界を彷徨い歩く。
夢の中で、自らの国が滅ぶ様子を繰り返し見ては、己の無力を責め続ける。
傲慢の王子は、醜い野獣へと姿を変え、禁足地の森に囚われる。
野獣は怒り狂い、呪いの主を見つけ出そうと、鼻息も荒く、森の中で暴れまわる。
いつしか、野獣は姫の夢の世界に、迷い込む。
呪いの魔女と間違われ、詰め寄る野獣と、泣き出す姫。
そこに、再び現れる魔女。
呪いを解けと、声高に吠える野獣。争いを厭う姫。
魔女は二人に、己の姿を見つめ直すように告げる。それこそが、呪いを解く鍵となる、と。
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詩郎は、薄暗い舞台の袖で、輝かしい舞台上を見つめていた。
――自分が考えた世界が、役者たちによって現実になる。その尊さは、俺にもわかります。
怒れる鞆野先輩に、自分が言い放った言葉の意味を、本当にはわかっていなかった。そう思い知りながら。
詩郎が綴ったセリフが、確かな体温を持って役者の口から語られる。
詩郎自身が気付いていなかった物語の意味が、キャラクターの思いが、世界の形が。
役者や衣装、舞台装置、演出――そのすべての力をかけ合わせて、凄まじい熱量でもって観客へと叩きつけられている。
なんて恐ろしくて、なんて甘美な体験だろう。
鞆野先輩が吐露した激しい怒り。それだけの想いを込めて守りたかったものが、ここにある。
素直にそう思えた。
舞台には魔物が棲むという。
人口に膾炙する本来の意味とは異なることを百も承知で、詩郎はこの魔物が持つ魅力に、すっかりと囚われてしまった自分を、自覚した。
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