表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文化祭の君  作者: 獅堂最
side 駒野凜 『凜と花咲き、君思ふ』
46/57

第21話 『舞台と魔物』

 *****


 物語は進む。


 嘆きの姫は、千年の眠りに就き、夢の世界を彷徨さまよい歩く。

 夢の中で、自らの国が滅ぶ様子を繰り返し見ては、己の無力を責め続ける。


 傲慢ごうまんの王子は、醜い野獣へと姿を変え、禁足地の森に囚われる。

 野獣は怒り狂い、呪いの主を見つけ出そうと、鼻息も荒く、森の中で暴れまわる。


 いつしか、野獣は姫の夢の世界に、迷い込む。

 呪いの魔女と間違われ、詰め寄る野獣と、泣き出す姫。


 そこに、再び現れる魔女。


 呪いを解けと、声高に吠える野獣。争いをいとう姫。


 魔女は二人に、己の姿を見つめ直すように告げる。それこそが、呪いを解く鍵となる、と。


 *****


 詩郎は、薄暗い舞台の袖で、輝かしい舞台上を見つめていた。


 ――自分が考えた世界が、役者たちによって現実になる。その尊さは、俺にもわかります。


 怒れる鞆野先輩に、自分が言い放った言葉の意味を、本当にはわかっていなかった。そう思い知りながら。


 詩郎がつづったセリフが、確かな体温を持って役者の口から語られる。

 詩郎自身が気付いていなかった物語の意味が、キャラクターの思いが、世界の形が。

 役者や衣装、舞台装置、演出――そのすべての力をかけ合わせて、凄まじい熱量でもって観客へと叩きつけられている。


 なんて恐ろしくて、なんて甘美な体験だろう。


 鞆野先輩が吐露とろした激しい怒り。それだけの想いを込めて守りたかったものが、ここにある。

 素直にそう思えた。


 舞台には魔物が棲むという。

 人口じんこう膾炙かいしゃする本来の意味とは異なることを百も承知で、詩郎はこの魔物が持つ魅力に、すっかりと囚われてしまった自分を、自覚した。


 *****

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ