第20話 『開幕』
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――幕が上がる。
遠くから響く剣戟、怒号、馬の蹄。
戦いの音だ。
背景に踊る人影は、甲冑を纏い、剣を打ち合っている。
「ああ、どうして私は、こんなにも無力なの……。こんな私など、消えてしまえばいいのに……」
スポットライトが照らす、舞台上手で、わずかに煌めく鈍色の、不思議な印象のドレスを着た姫が、嘆いている。
――暗転。
打って変わって、鳥の声が行き交う、明るい森の中。
飛ぶように走る鹿の影。
ヒュン……ドシュッ
矢走りの音が聞こえ、続いて大きな生き物が斃れる、ドスンという音が、静かな森に響きわたる。
「やぁ、また大物を仕留めたぞ!我ながら惚れ惚れするほどの腕前だ。……うん?このあたりは、魔女の禁足地だったか?まぁ、関係ないな。俺様の前では、古の魔女ごとき、恐るるに足らず!」
下手側のスポットライトの中で、不自然なほどキラキラと輝く鎧姿の男が、腰に手をあてて、呵々《かか》と笑っている。
――暗転。
シャラランと軽やかな音とともに、舞台の中央に浮かび上がったのは、夜空の如き深い藍色に、小さな金の星を散りばめた、ローブ姿の、一人の魔女。
「ああ、うるさいうるさい。私の大切な縄張りで、騒ぐんじゃないよ!魔女の平穏を脅かす愚か者どもなど、呪われてしまえ!」
そう、高らかに宣言し、紫色の石が煌めく杖を一振りすると――
再び灯った左右のスポットライトの中で、姫は糸が切れた人形のようにぱたりと倒れ込み、男はひび割れたうめき声を上げ、もがき苦しみながら暗闇に消え去る。
「ふん。これでちょっとは、静かになるだろう」
魔女は腰に手をあてて満足げに嘯く。そして、ふわりと煙のごとく、姿を消したのだった。
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