表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文化祭の君  作者: 獅堂最
side 駒野凜 『凜と花咲き、君思ふ』
42/51

第17話 『羨望』

 *****


「こちら、お納めください」


 工芸部の佐々木が、真面目くさった顔でそう言って、白い緩衝材に包まれた二本の棒を差し出した。


「拝見します」


 凜が調子を合わせて恭しく受け取ると、佐々木は途端にぱっと手を引っ込めて、照れくさそうに笑う。そして、凜が緩衝材を解く様子を、わくわくした目で見守る。


(……褒められ待ちの犬みたいだな)


 そんな若干失礼なことをぼんやりと考えながら、詩郎も、佐々木の隣から一緒になって、凜の手元を覗き込む。向かい側では、菊田先輩と柏木先輩も、期待を隠しきれないきらきらとした目で見守っている。


 今日は夏希先輩とみなみは、それぞれ委員会があると言って不在だ。四人が固唾を呑んで見守る中、凜は緩衝材を丁寧に剥がし、中のものを取り出す。


「おお、魔女の杖!野獣の剣も!すごいすごい!!ちゃんとすみれが作ったアメジストが、嵌め込んである!」


 凜が思わずはしゃいだ声を上げる。


「良いじゃないか。この中二感。たまらないね」

「キクタン、この素晴らしい作品にその言い方は、失礼じゃないかな?」

「とか言って、早く振ってみたくて仕方ないのはカッシーの方だろう?……私はこの杖だね。いや、本当に素晴らしい。これは、舞台の上で、とんでもなく映えるよ」


 杖と剣、それぞれの持ち主たちも、満足げに頷きあっている。

 そんな会話を聞きながら、詩郎は魔女の杖を手に取ってみる。


 詩郎の前腕よりも少し短いその杖の先端には、ピンポン玉よりもひと回り大きい紫色の透明な球が、取り付けられていた。角度を変えると、青っぽくも赤っぽくも見える不思議な色合いで、中には細かな金粉も封入されている。窓から差し込む陽光を受けて、床に柔らかなグラデーションを映し出す様子が、なんとも美しい。


 持ち手の部分も、古びた大樹の枝から作り出されたような、荘厳な雰囲気を纏いながらも、思ったよりも軽く、しっくりと手になじむ。

 軽音部から譲り受けた使い古しのドラムスティックをベースに、加工と飾り付けを施したと聞いていたが、言われなければまったくわからない。


「すごい……高校生でも、こんなものが作れるんだ……」


 思わずこぼれ出た詩郎の呟きに、佐々木がにかっと笑顔を向ける。


「高校生とか、中学生とか、関係ねぇよ。皆で考えて、皆で力を合わせれば、これくらいどうってことない」


 明るく言う佐々木の言葉に、凜もうんうんと頷いている。


「ね、詩郎くん、見てみて。この杖はね、演劇部の小道具チームと一緒に、デザインを考えたんだよ。魔法の石を作ったのは、私の手芸部の親友。最後に形にしてくれたのは、工芸部の佐々木くんたち。すごいでしょ。こっちの剣の柄頭にも、同じ石が嵌め込んであるし、おそろいのモチーフで、姫のブローチも作る予定なんだ。ねぇ、本当に、すごいよね」


 我がことのように自慢げな凜に、詩郎は言葉もなく大きく頷く。


(これが、駒野さんが言っていた本物の、『創る人』たち)


 羨ましい。


 何がとも、誰がともつかない、そんな思いが詩郎の中に湧き上がった、その時――


 ガタン!


 大きな音ともに扉が開き、一人の女子生徒が部屋に入ってきた。


「ちょっとあんたたち!どういうつもりなの?!」


 *****

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ