表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文化祭の君  作者: 獅堂最
side 駒野凜 『凜と花咲き、君思ふ』
40/49

第15話 『探索』

 *****


 ――春。


 私立青葉学園男子高等部に入学した詩郎は、放課後の広い校内を、一人彷徨い歩いていた。


(どこに行っても、人がいる)


 青葉学園は、首都圏でも有数のマンモス校で、男女中高合わせると、五千人規模の生徒数を誇る。一人でゆっくりできるような、隠れ家スペースを探して校内を探索するのが、ここ最近の詩郎の日課だった。


 小さな山をまるまるひとつ切り開いた、巨大な学園。

 これだけ大きな学校なのだから、詩郎が求める憩いの場など、たくさん見つかると思っていた。

 しかし、そう簡単な話でもないらしい。


 体育館裏のベンチにも、食堂脇の中庭にも、非常口から続く外階段の裏側にも、だいたい誰かしら先客がいる。


(マンモス校、舐めてた……。まぁでも、まだまだ探してないところは、たくさんあるし)


 人は多いが敷地も広い。そして詩郎はまだ入学したばかりだ。少しずつ探索エリアを広げていくのも、それはそれで楽しみだ。


 今日の探索は切り上げて、詩郎は共用エリアにある大図書館に向かうことにした。


 新年度が始まり、試験期間まで間がある今の時期は、図書館の中なら人はあまり多くない。


 専任の司書が常駐するカウンターの前を通り、吹き抜けの階段を上がって、窓際の角席。

 ――そこが、ここ最近の詩郎の居場所だ。


 よく磨かれて木目が鮮やかな木のテーブルにスクールバッグを置き、お気に入りの席に腰を落ち着けると、高校生にしては少し贅沢な気分になれる。


(ハリボテじゃないところが、さすが学費の高い私立だよね……)


 こういうときは、お金をかけることがイコール愛情であると信じているような両親に、感謝をしてもいい気がしてくる。

 そんなことを思いながら、スクールバッグからルーズリーフとペンケースを取り出す。


 そして、一度ふーっと大きく息を吐くと、詩郎は自分だけの物語の世界に、ゆっくりと漕ぎ出した。


 *****


「もうすぐ閉館だけど、大丈夫かい?」


 突然そう声をかけられ、詩郎は飛び上がるくらいに驚いた。反射的に頭を上げた拍子に、ずっと丸めていた背中がバキバキと不満の声を上げる。しかし、心臓のほうが、その比ではないくらいの抗議を表明している。


 口から飛び出そうな心臓を右手で押さえつけつつ、詩郎は後ろから声をかけてきた女子生徒を、勢いよく振り返った。


「だいぶ集中しているようだったから、驚かせてしまったならすまない。もうすぐ閉館の時間なんだ」


 穏やかにそう告げた生徒は、恐らく当番の図書委員と思われる。

 咄嗟に傍らの窓に目をやると、すでに夕方を過ぎて、黄昏時と言っても良い空の暗さだった。


「ごめんなさい、すぐに出ます」


 詩郎は大慌てで立ち上がり、机の上のものをスクールバッグに突っ込むべく、かき集め始めた。

 その時――


「待って」


 突然、彼女に腕を取られた。


「え……」


 事態を理解できない詩郎をよそに、彼女の視線が素早く机の上を駆け回る。


「君、時間ある?」

「へ……」

「5分でいい。私の話を聞いてほしい」


(今、もうすぐ閉館って言わなかったっけ?この人)


 頭を疑問符でいっぱいにした詩郎は、否やを言う暇もなく、にこやかなのにやたらと圧が強いその生徒によって、強引に椅子に逆戻りさせられたのだった。


 *****

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ