表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文化祭の君  作者: 獅童最
side 駒野凜 『凜と花咲き、君思ふ』
30/36

第5話 『真夜中の女子会』

 *****


「でねでね、姫と野獣はだいたいイメージが固まったんだけど……やっぱり魔女の立ち位置がね、まだ迷ってるのよ」

「その、詩郎くん?は、なんて言ってるの?」

「魔女はただの舞台装置だから、深く考えなくていいなんて言って、教えてくれないのー」


 むー、と凜は拗ねたように唸る。

 通話中のスマホ画面の向こうで苦笑しているのは、同じ手芸部に所属する親友の、佐藤(すみれ)だ。


「なるほどねー。でも凜は、納得できないんだね」

「そうなの!だって絶対、ちゃんと深い意味があるよ。そんなにおいがする!私、絶対に読み解きたい!」


 闘志を燃やす凜に、菫は思案顔を浮かべる。


「姫は自己否定型で、野獣は自己中心的……で、その魔女は、この二人に呪いをかけたんだよね?」

「そう!」

「うーん……なんで、呪いなんてかけたんだろう?」

「そこなんだよねぇ……なんとなくだけど、魔女は何かに怒ってる、みたいな感じがするんだよね」

「怒ってる」


 考え考え喋る凜の言葉を、菫はゆったりと繰り返した。その言葉に導かれるように、凜は脚本に描かれた魔女の姿を思い返す。


「そう。呪いたくなるくらい、怒ってる」

「普通に考えたら、呪いをかけた二人に対して、ってなるよね」

「でしょう?でも、二人の何がそんなに気に入らないのか、わかんないの。だって姫も野獣も、こんなに魅力的なのに!私、何かを間違えてるのかなぁ……」


 うーん、と頭を抱える凜の顔を見ながら、菫はポツリとつぶやいた。


「魅力的だから、かも」

「……え?」

「つまり、コンプレックスってこと。魔女は自分にない魅力を持ってる二人が羨ましくて、でも二人がそれを正しく評価してないことに、怒ってる……とか」


 言葉を選ぶように言った菫の顔を、凜はぽかんと見返す。次いでスマホの画面にかぶりつくようにして、叫んだ。


「それだ!えー、そうか、そんな見方があったか!それだよ菫!天才!」

「ふふ、おおげさだよ。凜はいつも、私が『自分なんて』って言うと、怒ってくれるでしょう?だから、魔女もそうなのかなって思っただけだよ」

「わかった!今わかった!完璧に理解した!魔女は、そんな気持ちかぁ。えー、魔女かわいい。そして、ちょっとだけ親近感」


 目からウロコが落ちたような顔で頷いている凜に、菫は淡い微笑みを浮かべた。そこに、凜が畳み掛ける。


「でも私、魔女とは違って菫を呪ったりなんてしないからね!菫が千年も眠ったら、さみしくて私も寝る!」

「ふふふ。私も、凜に会いたくて、すぐに目が覚めちゃう気がする」

「菫の場合は、私だけじゃないでしょ」

「んー、まぁ、そうかな……」


 曖昧に笑う親友に、凜はそれ以上踏み込むのをやめる。かわりに、明るい笑顔で話題を変えた。


「そう言えば、小物班は、どう?今年は念願の後輩が入ったから、二人でチャームを量産してるんでしょ?」

「うん。楽しいよ。香菜実かなみちゃんが毎日本当に楽しそうだから、私も嬉しくって」


 文化祭に向けて、演劇部用の衣装作りに全力を捧げる布もの班に対し、菫たち小物班はレジンアートに取り組んでいる。入部したてで初心者の後輩に、丁寧に技術を教えながら、菫自身もレイヤーアートという新しい技法に挑んでいる様子を、連日被服室で見かけている。


「ふふふ。後輩が楽しそうで嬉しくなるの、わかるなぁ。布もの班(うち)も、中学生たちに針の扱いを一から仕込むの、ホント楽しい」


 画面越しにくすくすと微笑みをかわす二人の手元には、菫が作ったレジンのスマホリングが煌めいている。菫はその名の通りの紫色の可憐な花モチーフで、凜は黄色い大きな目が可愛らしい黒猫だ。


「さて、それじゃあ、そろそろ寝ますか」


 凜が小さくあくびを漏らしたのを見逃さず、菫がそう提案する。


「だね。明日は詩郎くんに、魔女の解釈を聞いてもらう!菫、ありがとう」

「全然だよ。頑張ってね」

「うん!おやすみ!」

「おやすみなさい。また明日ね」


 *****

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ