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文化祭の君  作者: 獅童最
side 駒野凜 『凜と花咲き、君思ふ』
25/33

序章

ここから、前章(菫編)にも登場した親友の凜の物語がスタートします。

どうぞお楽しみください。

 *****


 >Komano Kotoko 08/22 Fri. 21:57

 >本日のリモートワーク終了します。

 >月曜日は有休不在、次の出社は火曜日です。

 >お疲れ様でした。


 チームチャットに投げた一文に、秒速で上司からの了解サインがつき、駒野こまの琴子ことこは思わず苦笑いした。


 気はいいけれどワーカホリックなところがある上司の顔を思い浮かべながら、琴子はパソコンをシャットダウンする。


(まぁいいや。これで週末のイベントに集中できる!)


 凝り固まった身体を伸ばしながら、頭を切り替えたところで、部屋のドアがコンコンとノックされる。


「はーい?どうぞ。今終わったよ」


 カチャリとドアを開けて顔を覗かせたのは、予想通り、10歳下の妹、りんだ。


「琴ちゃん、遅くまでお仕事お疲れ様。お茶持ってきたけど、飲む?」


 真夏でも、疲れている時はぬるめの玄米茶。

 琴子の好みを知り尽くした妹の気遣いに、自然と目尻が下がる。高校一年生になっても相変わらず小柄な妹を抱き込み、その頭に顎を乗せて、琴子はデレデレだ。


「凜ー、ありがとー。めっちゃ癒されるー」


 一方妹は、そんな姉にも慣れた様子で、お茶を机に置くと、とんとんと背中をさすってくれる。


「琴ちゃん明日からイベントでしょ?すぐお風呂入って寝るよね?そんなときに悪いんだけど、資料いくつか借りて行ってもいい?」

「もちろん、いいよー。何が必要?」

「ええとね、『夢見る悪女じゃいられない』と『ケモミミワンダーランド』の設定資料集。あと、『中世を彩る鎧の世界』も」

「お、なになに?珍しいの借りてくじゃん。何を作るん?」


 琴子は自身のコスプレ衣装用の資料棚から、指定されたムック二冊と分厚い専門書を取り出しつつ、心なしか興奮した様子の妹の顔を見返す。


「手芸部で、今年も演劇部の衣装制作を請け負うから、その下調べ。演劇部からもらった脚本が『眠れる森の美女と野獣』ってタイトルなんだけど、これがめっちゃ奥深くて面白いの!」

「うわ、ええ?もうそんな時期かぁ……学生の時間軸、はやすぎてオネーチャンついてけませんわ」

「とか言って、コスプレイベントでは『年齢不詳、永遠の18歳』とか言われてるくせに」

「それはね、努力で時間を止めてるのよ。汗と涙とお金がかかってるの」

「知ってる。その努力は普通に尊敬する。だからいつも衣装づくり手伝ってるでしょ?……まぁ、言っても楽しいからだけど」

「いつも本当にありがと、凜ちゃん愛してるよー

 ……はい、資料三冊。これでいい?」

「うん!ありがとう!これから楽しくなりそう!またデザイン、相談にのってね。あと、イベントも頑張って」

「おうともよ!今、凜ちゃんパワーを補給した琴子様は無敵なのだ!」

「それはよかった。じゃあ、おやすみなさい」

「はいはい、おやすみなさーい」


 そっと部屋を出る妹を見送ったところで、閉じかけたドアから凜がもう一度顔を出す。


「忘れてた。カズにぃが『明日何時に駅まで送れば良いのか、俺聞いてないんだけど……』ってぼやいてたよ」

「あ、あー、忘れてた!サンクス!話しとく」

「そうしてあげてー、じゃあ、ホントにおやすみ」

「おやすみー」


 そこで直接苦情を申し立てるのではなく、お茶を運ぶ可愛い妹に伝言を頼むあたり、琴子の二つ下の弟――和也かずなりも本当に良くできた男だ。

 共働きで忙しい両親に代わって、たっぷりと可愛がって面倒を見てきた弟妹である。その可愛さに癒されながら、琴子は玄米茶の香ばしい香りを胸いっぱいに吸い込んだ。


 *****

本章『凜と花咲き、君思ふ』についても、別サイトにて完結まで投稿済です。

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