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文化祭の君  作者: 獅童最
side 佐藤菫 『文化祭の君』
22/32

第20話 高一 十一月 『かける』

 *****


 菫は、走っていた。


 教師が見たら、きっと目を剥くに違いない勢いで。

 階段を駆け上がり、喧騒をすり抜けて。

 すれ違った同級生が、驚いて振り向くのにも気付かない。気にしない。


 そうしてたどり着いた、鵲橋のたもと。


 すー……。ふう。


 一瞬だけ立ち止まり、大きく息を吸い込んで、吐き出す。


 そしてまた、迷いなく駆け出した。


 足音が、やけに響く。

 気持ちがく。

 鼓動が、耳の奥で騒がしい。


 十一月だというのに、鵲橋にはじっとりとした熱気が籠もっている。空気が、菫の身体にまとわりついてくるように感じる。


 でも、そんなの、関係ない。


 ――そう思った瞬間。


 狭まっていた菫の視界のなかで、急に一箇所だけが、鮮やかな色彩を帯びたように浮かび上がった。


 だって、目が、心が、勝手にみつけてしまったのだから。


「せんぱい!」


 今度こそ、菫の声は届いて、蜂須賀先輩が真っ直ぐに菫を見た。


 そして、はっきりと、破顔したのだ。


 *****

次回、菫編最終話『灯す』です。


すれ違い、ねじれ、俯いて――けれど反転し、かけた菫の想いが、どのようなかたちになるのか、ぜひ見届けてください。

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