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第十四話

 保育園の時からよく遊んでいた公園。住宅街の一角にある、今思えばちっぽけな場所だったここも、当時の私達からすれば一日中遊んでも飽き足りない最高な場所だった。落ち始めた日は空を赤く染め上げ、家々の隙間から漏れ出す暖かい光が、かつての記憶を蘇らせる。いつ頃からだろう、あんなに一緒だったのに部活も忙しいからか、あまり一緒に帰ることも遊ぶこともしなかった。中学生だし当然なのかもしれないけど、どこか寂しさを感じてしまう時もある。


「ほいよ、これ好きだったよね」

「あ、ありがとう」


 ベンチに座っている私に、冷たいペットボトルを渡してきた。確かに、中には私の好きなミルクティーが入っている。当の本人はグレープ風味の炭酸飲料。隣に座ってくると、二酸化炭素の抜ける音が聞こえる。一口飲んだ後、話しかけてくる。


「ここ、久しぶりだね」

「……うん」

「こんなに小さかったっけ」

「私達が大きくなったんだよ」

「まあ、そうだよね」

「……ねえ、そろそろ話してよ」

「わかったよ。話せばいいんだよね」


 そう言うと、また一口飲んだ。


「顧問から休んでろって言われたの……あれ、嘘なんだろ?」

「え、どうして……?」

「全国が終わった後、顔を出さなくなったでしょ?学校は普通に来てるのに、どうして急に来なくなったのか心配だって、この前、咲希が俺に聞いてきたんだ」

「咲希ちゃんが?」

「うん。もし、那月の言ってることが本当なら、部員である彼女は当然知ってるはず。でもそれを知らないってことはさ……そういうことなんだなって思って」


 司君の言うように咲希ちゃんは部活の友達。種目は違えど、昔から同じクラスになることが多かったから中は部員の中でも良い方だった。そっか、私のこと心配してくれたんだ。


「先に言っておくけど、俺は嘘をつかれたことに何も思ってないよ。誰だって秘密にしたいことはあるし、もちろん俺だって秘密にしたいことはあるさ。ただ、俺に嘘をついてでも部活に行かなくなった理由を知りたい。よく話ししてたじゃん、部活が楽しいって」


 司君の問いかけに私は黙ってしまう。部活を辞めたいから、ただそれを言うだけなのに、声に出すのを拒む。何かが喉を詰まらせるかのように。それは少しずつ呼吸を荒くさせた。こんなにも苦しいものなのかと困惑していくのを覚えた。


「うまく話せないか?」


 彼が私の顔を覗き込む。心なしか不安げな表情を浮かべている。


「違うの……私、私ね……本当は……」


 ようやく言葉を発音することができたけれど、またあの単語でせき止められる。もう、私の体がどうなってるのか分からない。そのうち、一瞬だけ視界が真っ白になったかと思うと、全身の毛が逆だったような感覚に浸る。他の人に話すだけなのにこん何も怖いと思ってしまう私への驚きと、その勇気の一歩を出すことのできない愚かさで頭がぐちゃぐちゃになってしまう。


「那月、大丈夫?」


 肩に司君の手が触れる。優しく背中をさすってくれた。なぜだか、涙が出てきた。あの会場では一滴も出なかったのに。

 

「わかんないよ……私、何をすれば良いかわかんないよ……」

「那月……」


 泣き続ける間も「落ち着いたらまた話そう」とだけ言い残して、変わらず私のそばにいてくれる。それが余計に、これまで我慢した、辛かった思い出も、水滴として流れ出ていくように溢れて止まらない。司君は、私のことをどう見てくれてるんだろう。この時は考えることもできなかった。


作者の瑠璃です。

まずは読んでくださりありがとうございます。

この作品はタイトル通り、それぞれの視点で描かれる異世界物語です。人族サイドのお話もあるのでもしよろしければその作品も読んでいただけると嬉しいです。また不定期投稿なので気長に待っていただければと思います。ブクマ、評価等していただけるとめっちゃ喜びます!!

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