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二度も断罪されましたが死に戻りましたので、今度は愛する人を守ってみせます  作者: 今尾曜
第二章 二度目の人生

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 一時は混乱していた王宮も、回復した国王と新たに王太子となったユリウスが中心となって立て直しを図り、徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。


 例年よりもひと月遅れだが夜会の開催も決まり、ようやく社交シーズンが本格的に始まろうとしている。


 よく晴れた日の昼下がり、クリスティアはルーファスに誘われ、神殿の薬草園に来ていた。


 花壇ではずっと咲いていなかった雪月草が、白い花をつけている。


「ここでも雪月草が咲いたのですね」


「ああ、庭番のコリン爺さんには世話になったからね。雪月草の花を見せてやりたくて、栽培方法を伝えてネイヴェリルを贈ったんだ」


「良かった、元気に育っていますわ」


「ここで初めてあなたに声を掛けられたな」


「ええ。じつは前世で初めてあなたにお会いしたのもここでしたのよ?」


 クリスティアはいたずらっぽく笑いながら告げたのだが、ルーファスがどこか痛むような苦しげな表情を浮かべたので驚いてしまった。


「ルーファス様?」


「ずっと謝りたいと思っていた、あなたにだけ記憶を残したままにしたことを。本当にすまなかった。たったひとりで抱えていたのだから、さぞ辛かっただろう」


 頭を下げられて、クリスティアは慌てた。


「そんな、謝らないでください。あなたがそのように計らってくださったおかげで、わたしは両親やリリアナに関わることなく、前世より遥かに幸せに暮らすことができました。むしろ感謝しているくらいなのに、ルーファス様はずっとそのことを気にしてくださっていたのですか?」


「ああ。モリスが前世のことを思い出したと聞いた時、ほっとしたよ。誰かと苦しみを共有できれば、きっとあなたが楽になると。それが俺でなくて残念ではあるが」


「モリスと共有することはありませんわ。わたしの味わった苦しみはわたしだけのものですから。でも、それもずいぶんと薄らいでしまいました。完全に忘れ去ることはできなくても、もうほとんど思い出すことはありません。今が幸せですから」


「俺が一緒にいることも、あなたの幸せになる?」


「え? ええ、もちろん」


「良かった。俺もあなたがいてくれてとても幸せだ。だから、ずっと離れたくない」


 ルーファスは懐から小箱を取り出して蓋を開けてみせた。


 そこには繊細な薔薇の細工を施した金の指輪があった。


「これは何代か前に王家から降嫁した女性が愛用していたものだが、それが代々の辺境伯夫人に受け継がれていくようになったんだ。だから、この指輪を君に受け取ってもらいたい」


「ルーファス様?」


「初めて会ったこの場所で、今度は俺からきちんと申し込みたい。俺に記憶は無いけれど、話を聞いただけでわかった。前世からずっとあなたを愛している。どうか俺と結婚して欲しい」


「……はい」


 震えながら、ただうなずくことしかできなかった。知らぬ間にこぼれた涙が頬を伝う。


 ルーファスは微笑み、クリスティアの左手を取って薬指に指輪をはめると、もう一方の手でそっと涙を拭ってくれた。



     ***



 王家の夜会はデビュー以来、二度目だ。


 今夜のドレスは青みがかった緑色で、胸元から裾まで濃い青と金糸で細かな薔薇の刺繍が施されている。ルーファスから贈られた指輪の意匠に合わせたものだ。


 髪飾りも金細工で、ネイヴェリルをあしらっている。仕上げに同じデザインのイヤリングをつけた。


「おお、我が婚約者殿はますます美しくなったな」


 階下で待っていたルーファスは黒い礼服の袖口に、クリスティアの瞳の色に合わせたエメラルドのカフスボタンを着けている。


「やはりあなたにはネイヴェリルがよく似合う」


 ルーファスは満足そうにうなずくと、クリスティアの手を取って馬車に乗り込んだ。



 夜会が始まるに先立って、国王陛下からお言葉があった。


 近いうちにユリウスの立太子の儀式があること、今後も王家を支えて欲しいという簡単なものだったが、その最後に聖水の依存性に気付き治療薬を開発した功績でルーファスとクリスティアが呼ばれ、褒賞が与えられた。


 王都郊外の直轄領の一部を与えるというものだったが、薬草園としてという但し書きがついている。


「これって、雪月草を作れってことか? ネイヴェリルが足りなくなるぞ」


 御前を辞した後、ルーファスが小声でぼやく。


「あら、薬草園ですもの。雪月草でなくても良いのでは? 有用な薬草は他にもありますから、研究のためにもありがたく使わせていただきましょう」


 澄ました顔でクリスティアが言うと、ルーファスもにやりと笑う。


「そうだな。そこまで空気を読む必要は無いな」


 国王から直々に言葉を掛けられ、褒賞まで授けられたことによって、周囲の見る目ががらりと変わる。


 ひそひそとささやく声や蔑むような視線がないと、これほど落ち着いた気分になれるのだとクリスティアは驚いた。


「音楽が始まるな。クリスティア、俺と踊っていただけますか?」


「ええ、喜んで」


 契約ではなく、本当の婚約者として愛する人と踊ることができる。


 クリスティアは心から喜びをかみしめた。






   ――――――――――――――――――――


 明日、最終回です。



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