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守護の記録  作者: ツギハギ
春夏秋冬祭り──閉幕──
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第79神 知らなかった

 気づけば、文化祭は3日目に進んでいたらしい。


 バトルロワイヤルは結局、最後まで生き残った人数が多かった信善寺(しんぜんじ)の勝ちということになった。


 龍の手は危ないので没収…というよりどこかの機関に回収されたらしい。

 代わりに先生たちが出し合って、各高校の食べ物や、物をプレゼントするという運びになった…らしい。


 ──悪魔騒ぎに関してはみんな、知っていたようで蜜柑から呆れた顔をされた。


「蓮くん、本当にそういうことに無頓着だねえ」

「気絶してたから知らなかったんだって」

「七不思議のことも知らなかったもんねえ」


 るんと蜜柑がにやにやしながら言う。ほんとに寝てただけなのに!


「あんな大騒ぎあったのに寝てる方がおかしいって」


 みかんにネチネチと言われる。

 なんでそんなに俺に対して冷たいんだ!


「まぁいいか。今日は最終日!集客目指して、せめて最後は出し物一位を目指すよ!」

「一位になると何もらえんの?」

「最後春夏秋冬(ひととせ)祭りは舞を舞ってくれるでしょ?それを特等席で見れるの」

「えっ」

「誰が踊ってるかわかんないけどすっごい綺麗だって先輩たちが言ってたから!楽しみ〜」


 ニッコニコの蜜柑は、そのまま衣装の手直ししてくると言って裏に引っ込む。

 思わずるんを見れば、るんも固まっていた。

 るんも知らなかったらしい。よかった、俺だけじゃなかった。

 仲間がいたことに対する安堵の息をついていると、朝梨(あさり)桃梛(ももな)がやってくる。

「蓮くん!昨日は声かけてくれてありがとう〜」

「ん???」

「え?蓮くんが悪魔がいるからドームに集まってって言ってくれたじゃんか」

「え?知らない」


 首を振ると2人は驚いた顔で、目をぱちぱちと瞬かせた。


「えー???夢遊病?」

「あんなにはっきりしてたのに?めちゃくちゃ貫禄あったよ」


 朝梨(あさり)桃梛(ももな)に交互に言われて、本当に知らないと首を振った。


「ええ…?」

「俺昨日寝てたって火雷たちに言われたけど…?実際保健室で起きたし」

「…じゃあ、昨日の蓮くん誰?」

「…え、ドッペルゲンガー?鷺沼さん達もいたよね、あとで2人に聞いてみよっか朝梨(あさり)ちゃん」

「そうだね…蓮くん、それならまたあとで夜にね!」

「あ、うん…」


 2人が去っていくのを見送る。

 自分の知らないことが多すぎて不安になってきた。火雷に、思わず問う。


「…なぁ、昨日俺寝てたんだよね?」

『寝てたよ、ぐっすりと』

「じゃあ、本当にドッペルゲンガー?」

『かもねえ』

「貫禄あるドッペルゲンガーってなんなんだよ…」



 俺は貫禄がないってことか…謎のショックを受けつつも、切り替えることにする。

 今日こそ!楽しむ!気合を入れて楽しむことを考える!それでいくぞ!


「よし!」


 と拳を握ったその瞬間。


「じゃあ、蓮くん。はい、着替えね」

「え…」


 文化祭終了まで、宣伝しながら俺はメイド服を着て西城学園内を闊歩したのだった。







 ────日が沈み、月が昇る。

 風が吹き、花が舞う。

 夜は、不思議な引力があるとされていて、神居でも、神無でも『月が昇ると宴が始まるから早く寝るように』と言われている。

 これは、子どもを早く寝かせるための常套句で、宴とはつまりお化けたちが集まること。

 早く寝ない子は宴に連れてかれて食べられちゃうよ。と脅かして寝かせるのだ。

 俺もよく母さんに言われた。


 怖くて泣いて、お父さんとお母さんの布団に潜ったなぁ、懐かしいなぁ。


 さて、そんな懐かしい回想をしたのには理由がある。

 夜になって、渡された衣装に身を包み、舞を舞う舞台を見るとその周りにたくさんの精霊や神、人間、妖怪。なんでもござれとごった返すように集まっていたからだ。



「本当に宴が始まると集まるんだ…」

『見えるようになったことの特権だね』


 火雷に楽しそうに言われる。確かに。


「うぅ、緊張してきたぁ…」

『初披露だからな。しっかりやれよ』

「風伯たちもあの中に混ざりにいくの?」

『そうだよー、あそこにアルバートと玉がいるでしょ?あそこで見てるからね』

「子どもの発表会じゃん…」


 それじゃあね、と2人が言っていたところに向かうのを見届けて自分の衣装を見下ろす。


「…というかこの衣装、やけにヒラヒラしてるなぁ」

「お、似合ってんなぁ蓮」


 (しき)さんが面を顔の横にかけるようにつけてやってくる。


「似合ってても困ります…」


 鎮魂の意味も込められているからか、膝下まである長い羽織は、葬儀と同じで白い和服をメインに、二の腕のあたりに赤色の長いリボンがついている。

 中の着物も白色。

 腰にも、同じく赤色の長いベルトのような紐。

 男はズボンと見せかけて黒の袴、女の子は、膝下までの黒のロングスカート。

 羽織を止める紐も赤い糸で結ばれているので落ちることは大抵ない。派手な動きをしても問題ないということだろう。



「…この裾、長いですね」

「まあヒラヒラしてる方が派手に見えるからだろうなぁ」

「え、なんか意味があるわけじゃないんですね」

「何もかもに意味があるわけないだろ〜」


 わははと豪快に笑う(しき)さんに、確かに、深読みしすぎた…と反省する。


「そら、面かぶって」


 ホイッと投げられる面はただの真っ白な紙だ。


 付けながらこれにも意味があるの?これも深読み?と疑問に出てしまったので聞くことにした。


「あの、これも深読みなのかも?しれないんですけどこの面にも意味あったりします?」

「おっ、コレにはあるぞ」

「あるんだ!全部深読みってわけじゃないんですね!?」

「そりゃなぁ〜この面は、俺たちが守護者であるというのを隠すという目的と、コレは鎮魂の意味もあるから、まぁアレだよ。お化けに連れてかれないように」

「えっ、宴が始まるから?」

「そういうこと」

「あれマジだったんですね…」

「昔、連れてかれた人が…まあ父さんなんだけど」

「本当にあの人神隠しに合うんですね…」

「あなたの舞!気に入った!で連れてかれて、以降は伝統で舞うときに認識阻害の面を被ることになったらしい」

「すごい納得しました」




 ドン

 ドン


 遠くの方で、太鼓の音が聞こえてくる。


「お、そろそろ始まるな…準備はいいか?蓮」

「…っ、はい!」




 ────春夏秋冬祭りの締めには毎年、舞を舞う。

 人々への感謝と、神無(かんな)の鎮魂祭。



ごめんなさい、悩んだんですけど、23時に続けて投稿します。

本当は前日に伝えれたら良かったんですけどギリギリまで悩んで、やっぱり連続投稿にします!

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