【短編】8p目 鷺沼広大と赤歳色の複雑な想い
「は!?ハチスが戻ってきた!?」
信善寺で、俺と色が店番をしていると、蓮水がウキウキとした顔で近寄ってきたからまた良からぬことを…と思えば、あながち間違いではなかった。
「広大も色も全部は思い出してないけどハチスの記憶は覚えてるでしょー?だからね教えとこうと思って!」
「いやぁここのところマガツヒもおかしくなってるし〜早く思い出させた買ったんだよねえいい機会だったね」
僕天才だわぁ。と余計なことしかしない神様にイラつきつつも、ハチスを思い出す。
暴虐に、傲慢に、けれど仲間思いで人が嫌いな男だった。
マガツヒが生まれてから運命の女神が感染し、あの時すぐに俺たちは動いた。
倒し方もわからない、他の神や妖怪が感染し、人間だけが逃げ惑うのをみて、誰が最初に気づいたのだったか…。
──人には感染しないんじゃないか。
そこからは守護者になり、討伐。
「…ハチス、か」
「会いに行く?」
「本当かどうかわからないし…明日、とりあえず行ってみるか」
「僕は嘘つかないよ!蓮が生まれ変わってきた時も言ったじゃんか!」
蓮水のギャンギャン喚く声に気づく。
……ああ、そうか。
こいつはずっと、狙っていた。
神無蓮が、ハチスを思い出すことを…。いや。
ハチスとして、この世界の英雄になることを。
だから思い出させた。
だから引っ張り出した。
ハチスを。
嬉しいよ、戻ってきてくれて。でもなんだろうな、なんでだろうな。
同時に…文化祭で笑っていた蓮。
朝梨たちと騒いでいた蓮。
くだらないことで落ち込んでいた蓮。
そんな姿を知っているからこそ、
あの無邪気な笑顔が失われるのかと思うと俺は嫌だなと、思ったんだ。
それは、色も同じだったようで複雑な顔をしていた。
俺たちはそんなほんの少しの嫌な気持ちを抱えたまま明日、明日会いに行こうと。
覚悟も決まらないまま、そう決断したのだった。




