第71神 まあいいか
そう言えば。と気になったことを2人の方を見る。
「ちなみに鷺沼と色は何回目の転生?」
「色は2回目だっけか」
「そー、前回と初回合わせると3回目だな」
「俺も3回目だな」
「ふーん、書き換えたのは正解だったなぁ、マガツヒも収まってないし」
バトロワの中継がそろそろ始まる。
その画面を眺めながら、俺たちは自分の学校を応援するでもなく、前世の話を続けた。
「マガツヒは一回幻治郎さんたちの代が完全消滅させたらしい」
「つよ…マガツヒって消滅できたんだ」
「俺たちも6000年前にしただろ」
そうなんだ。記憶はまだ曖昧なんだよ許せ。
「で、また復活したわけか」
「そうなるな」
わぁああ!とバトロワでの実況が流れる。
『おおーっと、ここで、信善寺の最強!梟谷だー!』
色と鷺沼が画面に目がいく。
「おあ、梟谷出てきた」
お茶を啜りつつ鷺沼に気になったことを聞く。
「バトロワって、ポイント制?」
「いや、今までポイント制にしてたらしいけど、説明すんのがめんどくさいから剥奪にしたらしい」
「途端に野蛮…」
色が納得したように飴を口に入れながら言葉を続ける。
「ああ、あの腕章取ったら勝ちルール?」
「そう、各学校の代表を4人選んで戦ってもらう。大将が持ってる腕章を取ったら勝ち」
「騎馬戦かよ」
「まあそっからルール取ったろうな絶対」
『白刄vs黒刃!因縁の戦いです!』
「間違いない」
「こりゃ因縁だわ、黒刃の顔怖いし」
「黒刃男子校だから共学が羨ましいんだろうな」
「共学に行けよ」
思わずツッコミを入れてしまうと色から「そりゃ言わないお約束よ」と返される。
そうかねぇ。と思いつつお茶を啜る。
ふと画面に映った真っ黒の小さな箱に目がいく。
「そういや今回の報酬、原初の龍の手だっけか」
ああ、と色が相槌を打つ。
「願いを叶えてくれる手ね」
「指の本数だけ叶えてくれるんだっけ?」
「違う違うそりゃ猿の手だ」
テンポのいい会話になんだか、ホッとしてしまう。
色と鷺沼は相変わらず楽しそうに嫌味を言いながらモニターを眺めている。
行き交う人たちもモニターを見て「ドーム行こう」と話し合っていてこの文化祭の盛り上がりを感じた。
────ふと、脳内の喧しい声が聞こえないことに気づく。
…あれ、今の『俺』どこいった…?
おーい。
………
…まあ、いいか。
「原初の龍って今時見ないけど、まさかこんなところで手だけでも見れるとはなぁ」
鷺沼の言葉に沈みそうになった思考が戻ってくる。
色がそれに対して返した。
「いやほんとにな。一体討伐されたって聞いてたけどそれがこの手とは思わんよ誰も」
「ああ、七体いるうちの一体討伐されたんだ」
原初の龍とは、七体──それぞれエレメンタルを司る龍だ。
火、水、土、風に加えて雷、闇、光。
各々が願いを叶える玉を一つ持っている。この玉に願いを叶えるときには代償が伴う。
願いと同じ価値のあるものを差し出さなければならない。
この世界で生まれた、産夢のような存在。
諸刃の剣なのだ。
「そ。最近ねマガツヒに感染して、討伐されたんだけど、手だけが行方不明だったんだよ。そしたらこれ。絶対闇オークションとかあるだろ」
「それで競り落としたって?とんでもない話だな」
「あくまで推測だぞ」
色との会話に、とんだ怖い話があったもんだな。と思う。
画面を見ていると、ふと、人とは違うものが見えた気がした。
「──なんだあれ」
「は?なんか見えた?」
「…悪魔っぽいもの」
「悪魔!?なんでこんなところに…」
「わかんないけど、今の『俺』は昔の俺より動体視力がめちゃくちゃいいから間違いないと思う」
「昔のハチスよりいいってどうなってんだよ」
「突っ込んだら話長くなると思うからやめとけ」
色と鷺沼の言葉は無視して、改めて画面を見るとカメラの角度によって、一瞬映った。
その姿は間違いなく悪魔の姿だった。
「悪魔が潜んでる」
俺の言葉に2人が警戒体制をとった。当然俺も立ちあがる。
「まずいぞこのバトロワ」




