第65神 白刄高等学校『雨降り飴』
すると、奥の方から聞き覚えのある声。
「あーー!蓮!であってるよな!?」
「島崎さん、合ってます!」
島崎さんとその横に白いふわふわの…そう、色さんや幻治郎さんを女の子にしたらこんな感じの…。
「パッと見わかんなかったけど合ってた〜」
「…大地、この人が蓮?」
「そう、あ、この人は守護者の赤歳色華、色さんの妹さんだよ」
「やっぱり!赤歳家遺伝子強くないですか!?」
「ふふ。よく言われる」
色さんとも幻治郎さんとも違う笑みを浮かべられて少しドキッとする。
「そうだ、飴買った?」
「無事買わせてもらいました。あとで3人で食べます」
「3人?おわ、お二人とも今日は人の姿なんですね」
島崎さんが火雷たちを見て驚いた後、笑う。
「うちの守護神も今日はマリアンヌさんのところに会いに人の姿になってるよ」
「夫婦だもんね」
色華さんの言葉に島崎さんが頷く。
「え!夫婦なんですか!?人間と神様で!?」
「異種恋愛譚にはよくある話だろ〜だからマリアンヌさん年齢だけで言えばひいひいひいおばあちゃんくらいだよ」
「わ、わぁ…」
うふふ、と笑うマリアンヌさんの笑みを思い出し、不思議な気持ちになった。
「黒刃の綿飴は食べた?」
「あ、俺は食べてないです。でも火雷は最初にもう食べたみたいで…」
「うん、美味しかったよ!その飴も早く食べたいなぁ…」
「火雷様って食いしん坊…?」
島崎さんの言葉に首を傾げる。
「いやー、そんなはずはないんですけど…」
「ここのところ七不思議やらでエネルギーを消費したからな。食べないと俺たちは疲れるんだ。もう少しお供えの量を増やしてくれてもいいぞ」
なるほど…そういうことでございましたか…。納得する。
「それは失礼しました…」
「その飴、上から降ってくる地域があってさ、落ちる滴は固形で固まったままなんだぜ」
「へえ…え、てことは落ちた飴を拾ってるんですか?」
「いやいや。ちゃんと外に籠を設置してそれを回収してんの」
「ああ、なるほど…」
「足で踏むと砕けて溶けるくらい柔らかいんだけど、その袋に入ってる限りは問題ないわけ」
袋を片手に持っている色華さんが袋から一つ取り出し笑う。
「飴の振る色で味が変わるの、これは赤だからりんごだね」
「ああ、前食べたのは海味だった…」
「たまーに、飴じゃなくて水を光が包んで振ってくることもあるんだよーそうなると籠に入れてあった飴はおじゃんだ…」
「ちなみに砕いた飴は、水になるよ。口に含むとちゃんと味になるんだけどね」
「外で砕くと水になるんだよ、不思議だろ〜」
「不思議だぁ〜!」
本当に不思議だ!思わず空に掲げて見てみる。
キラキラとした飴が太陽の光に反射してとても綺麗だ。
「エルフとか多いからそのせいかもなぁ」
「白刄はエルフが多いんですか?」
「そー、色んなのがいる。黒いのも白いのも、近所にエルフのお姉さんいるけど、本人曰く引きこもりエルフは多いわよ、働かなくても食べなくても生きていけるって言ってたな。金は払えって大家さんに怒られてた」
「エルフ……?」
「エルフエルフ、見た目は。中身は完全に引きこもりニートだけど」
島崎さんの話す体験談に、色華さんは半目になる。
「……神秘のイメージ崩れちゃうから、辞めてあげて大地」
「えっ、ああ!?ごめん!いや普通にかっこいいエルフのお兄さんとお姉さんいるよ!この前路上でギター弾いてたし!」
「大地のかっこいいの基準わかんないかも」
「ええ?色華わかんない?かっこよくない?路上ギター」
「うーん、あんまり」
「えーー?」
島崎さんと色華さんのコントじみたものを眺めつつ飴を口に入れてコロコロする。
え、なんか不思議な味だなこれ…何味だ。
「?これ何味ですか?食べたことない味…でも甘くて美味しい…」
「んー?何色?」
「黄色…」
「月見草の味!月見草はねえ、あっっまいのよ。月見草って実がつくんだよね丸い黄色の。匂いは蜂蜜っぽい甘さと花の香りがする。実物食べたことあるけどすげえあまい。」
「確かにすごい甘いです。なんか、なんだろ…似た味だと」
「私、月見草は桃の味に似てるって聞いたことあるよ」
「あーー、それかもです」
ふふ、と2人が笑う。なんかこの2人の空気美味しいな…。
島崎さんが、右奥を指さして笑った。
「次は赤雷の方に行ってあげてよ。雑貨が売ってるあるから、あっちの方には泉鞠と緑高も良さげなの売ってあったし。お土産にちょうどいいと思う。」
「わ、ありがとうございます!今各高校回ってるところなのでちょうどいい情報だ!お母さんになんかあげようかな」
「いいねえ、蓮のお母様いつも頑張ってるもんね」
「ネーミングセンスはいいが、お土産のセンスはどうだろうなぁ蓮」
「やめろよハードル上げるの〜」
何を買えば喜ぶかな、と考えながら、
俺はこういう時間を守りたいんだろうなと、ふと思った。
「明日のバトロワで絶対白刄には負けねえ!俺たち男子校!黒刃男子高等学校がかぁつ!!!!」
「やめなよ〜暑苦しいよ〜はじめ」
黒刃のテント前で、はじめと言われたアフロのような髪の男が腰に手を当てて白刄のテントに向かって指を刺す。
その横に座るふわふわの髪の男がやれやれというように座っている。
「舐めないでほしいねえ!俺たち白刄高等学園が明日は勝たせてもらうよ!ねえ伊予ちゃん!」
「俺に振るな、鳴海」
金髪のチャラそうな男が、ふんっと高圧的にはじめと呼ばれた男を見下ろし、すぐ近くにいる紫の長い髪の小柄な女性に話を降った。
小柄な女性はとてもクールな態度でしかも一人称が俺…呆れ顔を晒す。
「…なんか、キャラ濃いな」
「うちの生徒会長の鳴海さんと、その副会長の伊予先輩。幼馴染らしいよ」
「あっちは黒刃の生徒会長の幸村と二年生のはじめだね」
「仲悪いんだようちと黒刃」
島崎さんと色華さんの説明に、はえ〜と納得する。
まあ明日のバトロワで全てわかるだろ。
「そう言えば色華さんはなんでここに?」
「この飴を買いに来たの、お兄と梓と、家族の分をね」
「いつもありがとうございます!」
「ううん、この前は鯨の肉届いてびっくりしたでしょ?ごめんね」
「ああ…あれか…」
舞の練習中に突如上から降ってきた肉の塊を思い出す。
同じように思い出したらしい島崎さんが苦笑いを浮かべた。
「まあ、幻治郎さんだよねどうせ」
「うん、そう」
だよなぁー、と島崎さんは笑ったし、俺も笑った。
あんなことやるのはあの人しかいないだろう。
2人と別れて赤雷の方面に歩き出す。




