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守護の記録  作者: ツギハギ
第一章 守護者編
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第7神 女子高生

夢をみる。

ある村の夢。たくさんの大人に囲まれて1人幸せそうに笑う子供。



これは夢だ。


この光景もよく見た。


大雨が降る中、大人たちは雷雨を止めてくださいと雨乞いをしていた。

子どもはそれを後ろから眺めていた。

  

俺は、()()()()


……何を?


オモイダセ


()を────


そこは、赤い海だった。

雨に濡れた地面を、赤が流れている。

誰かの叫び声がした気がした。

誰なんだ、お前は────





『蓮、起きろ』

「はぇ…?」

『朝だよ〜蓮〜』

「……朝」


光の入るカーテンから覗く太陽は眩しく自分たちを照りつける。

何かを、夢で見ていた気がするけど。


「…変な夢見た」

『お前はいつも変な夢見るな』

『今回も雷?』

「いや…うーん、あんま覚えてないけどあ、これ夢だとは思ったな」

『明晰夢か』

「明晰夢?」

『夢だと自覚する夢だよ。神居では予言や予兆で見ると言われてるね』

「へえ」

『小学校と中学校で神居について習わないのか?』


シャツを着てネクタイを締めながら、2人の問いに答える。


「あんま真面目に勉強してなかったんだよなー、水の超能力が発現してからはそっちが楽しすぎて家の中水浸しにして怒られてた時の記憶しかない」

『確かにやってたな』

『お母様怒ってたね』

「えへへ」


ギュッとネクタイを締めて2人に向き直る。神棚の前で浮かぶ2人はきょとんとした顔でこちらを見てきた。


「俺さ、人を守りたい」

『!』

「誰かを守れるような人になりたい。今は家族を守りたいんだ…。鷺沼さんみたいに」

『…守護者になりたいの?』

「なりたいわけじゃないけどさ、なんかかっこいいじゃん、あんな感じで守れる人。俺ずっと憧れててさー!」


キラキラした顔で昨日の鷺沼さんを思い出す。

本当にかっこよかった。

強くて、絶対に守るという意志であそこにいたあの人は、俺にとってのヒーローだった。


『…そう、憧れは捨てる必要はないから良いと思うよ』

『まあ、憧れてるくらいに留めておけ』

「なんだよー、もー、お前らが俺の守護神になるんだろー?良いじゃん〜」

『こんな欠陥品となるより、ちゃんとしたやつとなったほうがいいぞ』

「欠陥品って…!」


風伯の言葉にカチンときて、言い返そうとするが母の言葉に遮られる。


「れーん!早く起きていってきなさーい!」

「うぅ…ちゃんと、ちゃんと後で言うからな!」

『聞かんぞ俺は』


『私も聞かないよー。それよりこれ、私たち学校でウロウロしてると蓮が変な人になっちゃわないように、私たちの依代』


火雷が微笑みながら差し出してきたのは桃色の鈴と緑の鈴。


「…ん?この鈴、俺のお守りなんだけど」

『知ってる。だからそれにしたの、いつも肌身離さずつけてるでしょ?』


昔、母に言われて二つの鈴をつけるように持たされたこの鈴は学校に行く時だけじゃなくてどこに行くにしてもつけるように、スマホにぶら下がっている。


『この中に私たちが収まってるから、安心して』

「…神棚の簡易版?」

『面倒だからもうそれでいい。それより早く行かなくていいのか?』

「あ、いく!」


チリンチリンとなる鈴の音を聞きながら、スマホをポケットに突っ込む。ふと振り返れば2人の姿は消えていた。


『ふふ、聞こえる?』

『脳内に語りかけてるぞ』


ビクッと肩が揺れる。

頭の中に響く火雷の声と風伯の声が思っていたよりも近くに聞こえた。

そばに姿はないのに、脳内に聞こえる声がアンバランスで不思議な感覚を覚える。

神様ってすげ〜〜

『まあ、そりゃ一応超越者だからな』


脳内の声拾われるのきっっつ


『拾わないように遮断することもできるよ』


そうしてくれると嬉しい。

流石にプライバシーの侵害だと思う。


『わかったわかった』


やれやれと言った声で返事をする風伯に、いや当然だろ。

俺だって考えることあるんだからな!と言い返すも何も返ってこなくなりおそらく火雷の言っていた遮断された状態なんだと知る。


「…会話はどうしたらできるんだ?」


脳内じゃ無理なら一体…

『まあ口で言われたら聞こえるぞ』

『スマホを耳に当てるとそれっぽくなるんじゃない?』

「確かに!!」


学校に着くと、話題は昨日の十字路で亡くなった女子高生の話で持ちきりだった。


中にはその女子高生と仲の良かったらしい人も居て、涙を流している子や、登校しなかった人もいるらしい。

生きてる人だったんだな。と遅れて実感する。


そうだ、生きてたんだ、昨日まであの人は。


あんな姿に変わり果ててしまったが、生きてた。


昨日の姿を思い出し、「うっ…ぷ」。吐き気がする。


「…大丈夫?神無くん」


下駄箱で背中を曲げて吐き気を我慢する俺の背中にそっと触れる手があった。柊朝梨、同じクラスのマドンナ的存在の女の子。俺の好きな子。


「…ありがとう、柊さん」

「ううん、無理しないでね、保健室行く?」

「大丈夫、ありがとう…先に行ってていいよ」

「…そう?じゃあ、先に行ってるね」


微笑み去っていく彼女に、みんな目を奪われる。ほぅ、と見ていると火雷と風伯の声。


『お前、あの子が好きなんだな』

『かわいい子だね』


咄嗟にスマホを耳に当てて「いいだろ別に」と答えると、『悪いとは言ってない。苦労するだろうなとは思うがな』と返される。


「どういうことだよ」

『早く教室に行かなくていいのか』

「もー!お前ホンッットそういうとこ!」


思わず声を荒げてスマホをポケットにしまいながら靴を脱いで慌てて中履きに変えて教室に向かう。

教室でも女子高生の話題が広がっていた。


「みかん、おはよう」

「おはよー蓮くん。一馬知らない?トイレから戻ってこなくて」

「一馬?」


神谷一馬。黒髪に紫の目。

クールな王子様系と入学1日にして女子の間で話題になり、しかしこの目の前にいる蜜柑が彼女であると知れ渡った瞬間男子の間でも一瞬にして敵認定された男だった。


「…普通に長いだけじゃね?」

「でももう直ぐ授業が始まるし…一馬その辺はきっちりしてるからあり得ないよ」


確かに。一馬はクールな王子様なだけでなく根はしっかりと真面目な男なので時間などもきっちりしている。こんなところで破るような男ではない。


「じゃあ俺ちょっと探してくるよ」

「…私もさがす!」

「蜜柑は居てあげてよ、ほら男子トイレには入れないし」


蜜柑は心配そうな目をした後、小さく頷いた。

頷いたのを確認して外に出る。

いつも明るい廊下は今日に限ってなんだか薄暗い。

別に、太陽が出てないわけではないのだが。


『…居るな』


廊下の奥にあるトイレにぐったりと倒れている一馬がいた。

その横に頭が横に半分無く、人の形を保ちきれていない人の姿に、この学園の服を着た女の子が1人立っていた。



────全てを理解する。


アレは、昨日の十字路で亡くなった女子高生だ。

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